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声がする 大きくて怖い怒ってる声...だぁれ...? 2人の言い争う声に寝室で眠るユウは目を覚ました ぼんやり開けた目には見慣れた天井で、そこには光り輝く虹も手を握ってくれた男の子の姿もなかった ...あれ? 少しだけ首をよじるとぬいぐるみが頬に当たる ほわほわとした肌触りがなんだかすごくホッとした 夢...だったのかなぁ... 知らない男の子 自分の事をいい子だと手を握って頭を撫でてくれたのに なんだか少しがっかりしてしまった お名前聞けば良かったなぁ... ユウは思い出したかのように乾いた唇を動かした 「み...ぃ...くん」 ーーあれ? 自分の耳に届いた言葉は不完全な彼の名前 「み...?みぃ...くん」 もう一度繰り返してみる おかしいな 言えなくなっちゃった... "みつるくん" 夢の中の自分は確かに彼の名前を言えていたはずなのに あの子は大丈夫と言ってくれたのに ちゃんとお名前が言えなかったら分かってもらえない 夢と現実の差は大きくてひどくショックを受けた少年はジワリと目を潤ませた ーーそういえば、どうしてベッドにいるんだろう ユウは靄のかかる頭の中をゆっくり巡らせて思い返した 重い身体、ぬいぐるみ、寝室、ベット... バラバラに散らばったピースを頭の中で手繰り寄せるとなんとなく形が見えてくる そうだ...勝手にぬいぐるみを取ってベットに隠れてたんだっけ 「ぁっ...」 割れたガラスでめちゃくちゃにした自分を思い出すと奥歯がカチカチと鳴りだした そうだ...ここにいちゃだめなんだ また怒られちゃう 青ざめたユウはベットから出ようと痛む身体を奮い立たせた 「ぃ...」 無理やり身体を起こそうと腕に力を入れるとガクンとバランスを崩しその拍子にベットから転げ落ちた 傷んだ身体を勢いよく打ち付けたユウはあまりの痛みに目の前をチカチカさせる 「ぅう...」 どうしよう 起きなきゃ...でも動かない... 這うように悶えていると後ろでドアの開く音がした

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