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物音に気付いた2人は言い争いも途中で寝室に急いだ 「ユウ!!」 扉を開けるとベットの下に転がって起き上がれなくなったユウがいた とっさに駆け寄ろうとする彼を椎名が塞ぎ、ユウの元へ急ぐ 「ひゃぁ!!」 急に抱き上げられたユウは身体を強張らせて悲鳴をあげた 硬直したら身体は見るからに窶れて軽く、ガタガタ震えているのが腕に伝わってくる 一体どれだけ恐ろしい目に合っていたのだろう 「ユウくん、僕だよ」 「う...?」 「大丈夫?痛いとこない?」 椎名の姿をみたユウは驚いて丸い目をさらに大きく見開いた パチクリと瞬きを繰り返してはキョトンとする 「遅くなってごめんね、気づけなくてごめん」 目の前の事実が飲み込めないユウを椎名はぎゅっと抱きしめて背中を摩る せんせぇ...? なんで...? 椎名に抱きしめられながらわけもわからず顔を上げると肩越しに彼が立っているのが見えた 「ぁっ...」 目が合うとふいっと顔を背けられてまたもユウは傷ついてしまう もしかしたら彼は顔も見たくないのかもしれない... ユウは身を乗り出してミツルに向かって手を伸ばした ーーだけど言わなきゃいけないことがいっぱいあるの 「ダメだよ!寝てないとっ...」 「やっ...」 止める椎名の手を振り払うと支えのなくなっユウの身体がグラリと前に倒れこんだ 「ユウ!!」 倒れこむユウをとっさにミツルは抱きとめて崩れるように座りこんだ 「....」 思わず抱きとめてしまい、ミツルは自分でもその行動に戸惑ってしまった このまま弾かれるように自分を拒否して椎名に縋りついてしまったら... そう思うとなんと声をかけていいのか分からない 「ユウくん...」 椎名が背中をそっと撫でてから2人を引き離そうと肩を抱いた 「やっ...やぁっ...」 椎名の手を逃れるようにユウは彼に腕をぎゅうっと巻きつけた それは傷だらけの身体でどこにそんな力が残ってたのかと思うほど強くて苦しいぐらいに締め付ける 「ユウ...俺..「みぃくん」 彼の言葉を遮るようにユウが叫ぶ 「みぃ...くんっ...ぅう...」 次第にその声は涙声になりユウはミツルの胸に頭を擦り付けるように顔を埋めてくる どうしてーー? どうしてこんなに俺を求めてくれるんだろう 覚えたての拙い言葉を何度も繰り返す姿は愛しい半面哀れすぎて胸が痛くなる 「ユウ...」 ーーなんでそんなにまでして頑張るんだよ せっかく先生が来てくれたんだよ? その手を取って俺を突き放してくれたらいいのにーーー 「みぃ...」 「ユウ...俺...」 言いかけて彼は口を噤んだ 泣き出してしまいそうな自分を律するためだ 自分には泣く資格なんてない...本当は抱きしめる事も許されないのに 「みぃ...」 しきりに自分を呼ぶユウに対してたった一言返事をするしかできなかった 「なぁに?」 するとミツルの声を聞いたユウは驚いたように顔をあげた きょときょとしながら不思議な顔を浮かべている 「う...?みぃ...くん?」 「うん...なぁに?」 パチパチと瞬きしながらちょこんと首を傾げてまた繰り返す 「みぃくん...」 「なぁに?」 真っ赤な目元に人差し指で触れるとはっと何かに気が付いたようにユウの目は大きく見開く 「みぃく...ん」 「分かるよ?俺の事でしょう?」 なんで? なんで? ちゃんと言えていないのに なんでわかってくれるの? 顔を歪めて今にも泣き出してしまいそうなユウを堰き止めるようにグッと抱き寄せてミツルは言った 「ちゃんと分かるよ、ユウ」 耐えられずユウはポロリと大粒の涙を零して彼に縋る ずっと夢だった 彼の名前を呼んで優しく答えてもらう事 だけど、それは自分には到底難しくて叶わないと思っていた 爪を立てるほどに彼の背中に強く手を回したユウは引きつけを起こしながら全身でしがみついた そしてそれはごく自然な形でユウの口をついて出る 「っ...きっ...すきっ...」 勝手に流れて耳に戻ってきたのはたしかに自分の声で紡がれた「好き」の言葉 「みぃくん...すきぃぃ」 分かってくれる? 今までもこれからもずっとずっと好きなんだよ 彼はまるでユウの心の声まで聞こえるようにうなづいて肩に目元を押し付けた だんだんと肩を濡らしながら彼は何度も繰り返し答える 「俺も好き、ずっと好き」 泣き崩れて抱き合う2人を前に椎名はただ立ち尽くす事しかできなかった

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