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椎名が来たからなのか彼の暴力が終わったからなのかユウはほどなくして高熱を出し伏せっていた おそらく安心して、今までの疲れが一気に出たのだろう ひたすら高い熱に三日三晩とうなされていた 「...はぁ、参ったな、熱が下がらない」 「どうしよう...病院連れてかなきゃダメかな」 ミツルは不安げにいうものの現実問題、それは難しいだろう アザだらけの身体で病院へ行けば間違いなく警察に通報される もう二度と二人が会うことは許されなくなるだろう 椎名は迷っていた それまでは何とか2人が幸せに暮らせるようにと協力する気でいたけれど、戻って来て事情は変わった 変わり果てたユウの姿を見た時、ミツルの側にユウを置いておいてはたして本当にいいのだろうかと心が揺れる 寝ているユウの身体を調べた所、右の小指は折れ、爪も全部剥がされていた いくつもの新しいタバコを押し付けたような跡が赤く腫れていて、腹部にも青あざが目立つ おそらくこの分だと助骨にひびぐらいは入っているだろう とてもじゃないが直視できるような状態ではなく、ここまで好意を持つ相手にできるミツルに対しても少し恐ろしく感じた 警察に言うのは1番最後の手段だと思っていたけれど、そんな悠長な事を言っている場合ではないのではないのだろうか... ーーけれど、彼に対してのユウのあの振る舞い 普通なら怖がって近づかないだろう相手に自ら手を伸ばし求めていく 彼だけと共に過ごし、それを当たり前だと思うユウにとって自分が置かれている状態が本当の意味では理解できていない それでも人間には危険を回避する本能が備わっていて自分を傷つける相手をこれほどまでに慕うのは本来なら考えにくい 厄介な事は彼に悪気があってしているわけではないということだった ユウにもそれが分かっているのだろう だからどこまでも耐えることができるのだ 2人は純粋に惹かれあっていてそれを型に当てはめるように、引き離していい方向に進むのだろうか どのみち怪我が治るまでは動かす事はできない その間にどうすべきか考えなくてはならない 自分には荷が重すぎるような大きな問題に椎名は頭を抱えていた

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