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樹達を乗せた車はただ当てもなく進む
けれどそのスピードは遅く、まるで何かを探しているかのようだった
探しているのは何かではなく”誰か”
口に出さなくてもそれぞれの視線が目印の金髪を求めて辺りを彷徨う
「やっぱり...いるわけないか」
樹は窓ガラスをコンッ叩くと少なからず期待していた自分を笑った
この多くのビルが立ち並ぶ中マナトの相手を自力で探すのは難しい
せめて本人の姿でも確認できればと思ったのだが、やはりあの日のような偶然に二度めはないらしい
「樹さん、喉渇きません?ビルの裏にコンビニあったんで寄ってもいいっすか?」
結局やみくもに走らせても得られるものは特になく、次第に仲間の集中力も切れてきていた
言葉にせずとも車内の空気は”もう帰りたい”の一色だ
確かにどれだけ粘っても見つからないものは見つからない
なんとなくの勘だけを頼りに見つかるくらいなら初めから苦労などしないだろう
付き合わされた仲間が不満を漏らす前に樹はここで切り上げることにした
「つーか、もう昼過ぎてるし、なんか食いに行きません?」
「賛成!!俺も腹減った」
仲間たちの切り替えは早く、早々にこの場を離れようと車は徐々にスピードを上げていく
けれど樹だけはその輪に加わることもなく、目線は絶えず窓の外へ注がれていた
車が方向を変えようとした時、目的もなく眺めていた樹の視線の端に小さな公園が見えた
こんなオフィス街の近くに珍しいな...
何気なくそれを目線の中心にした時、ふいに映り込んだものに樹は目を見開く
「待った」
「そこで止めて」
今度はなんだと仲間たちは怪訝そうな顔で樹を見ているが彼は気にせず車を路肩に止めさせる
「すぐ戻ってくるからここで待ってて」
「え!?ちょっと樹さんっ....」
わけも言わず車を降りて行く樹に仲間たちはどうしたものかと顔を見合わせる
「お前ら絶対降りてくるなよ」
樹は彼らに釘を刺したあとすぐに小走りで車を離れていった
「見つけた」
"偶然"とはどうして欲している時には起きないのだろう
諦めた途端、こんな風に転がりこんでくるなんて...
樹は少しだけ息の上がった自分を落ち着かせるとこの現実を確かめるように一歩一歩踏みしめて近づいた
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