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**** 「ねこさんっ....おいでよぉっ」 ベンチの下に半分顔を潜らせたユウは猫に向かっておいでおいでと繰り返していた 「むぅ」 いくら呼んでも猫はツンとしたまま近寄ってはくれなくてユウは不満げに口を尖らせる 触りたいなぁ...こっちにきてくれないかなぁ.... どうしようかと考えては地べたに座り込むユウの後ろから急に声が聞こえた 「何してるの?」 驚いてその声に振り向くとそこには1人の青年が立っていた 不思議そうにしながらユウを見下ろしている だぁれ...? ぽかんとしながら見上げるユウはその姿になんだか妙な感覚を覚えた 知らない人のはずなのに...なんだか見覚えのある気がする ユウはまじまじと青年を見つめていると彼もその視線に気がついた 「俺の事覚えてる?前にマナトと一緒の時に会ったことあるんだけど」 「あっ....」 そう言われたユウはこの変な感覚の理由をやっと理解する事ができた たしかあれはマナトと外へ出かけたある日 大通りで目の前に止まった大きな車から知らない人が顔を出した あの後マナトはその車に乗ってどこかへ行ってしまった 「マナくんのおともだちだぁっ!!」 もともと他人に対しての警戒心が少ないユウはそれがマナトの友達と分かるとすぐに屈託無い笑顔を見せた 「こんなところで何してるの?ほら、泥だらけだよ」 彼はユウを立ち上がらせると泥で汚れたズボンを叩いてくれた 「あっ...あのねっ、ねこさんっ!!ねこさんいたのっ!!」 「猫?」 「あのねっ!ユウのねっ...そこの下にねっ」 ついつい興奮して猫の行方を話すユウに彼は少し困ったような顔で首を傾ける 「あ...あのっ...」 その顔でユウははっとして慌てて口を閉じた ユウには自分では上手に話しているつもりでもそれが他の人には伝わらないことがよくある それが何故なのかは分からないが今まで何度となく変な顔をされて悲しい思いをした事を思い出してしまった お話...しすぎちゃった.... けれどユウの話を聞いた彼はうんうんと頷くとベンチを覗き込んで 「あーあ、猫さんもういなくなっちゃったみたいだよ」 と、さも残念そうに肩を竦めた 「あ...」 彼のその態度にユウはホッとした いつものように気味が悪いような顔をされなかった事も、自分の話をきちんと聞いてくれた事もなんだか嬉しくなって、そのおかげで少なからず持っていた初対面の緊張感もあっという間に薄れてしまった 「ところで君は何て名前なの?」 おもむろに聞かれた質問にユウはなんの迷いもなく素直に答えた 「え...えっとえっとね、ユウだよっ!!」 「そっか、ユウくんだね。俺は樹っていうんだ。よろしくね」 彼はそう言うと優しそうに微笑んでみせた

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