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病院を出た涼介はその足でタクシーを拾った 昨日からユウを探し回っていたおかげで身体は汗だくだ さすがにこのままでは会社には向かえず、運転手には自宅を告げた 腕時計に目をやりながらシャワーと着替えの時間を頭の中で算段する 涼介は電話をかけようと胸ポケットから携帯を取り出した 聞こえてきた着信音は1フレーズ流れる間も無く聞き慣れた声へと変わる 「もしもし?!」 「あー、千春?俺だけど....」 電話に出る速さと少し掠れた声に彼女もまた寝ずに連絡を待っていた事がすぐに分かった 「あぁ、うん....ユウは大丈夫だよ....あぁ、俺は着替えたら向かうから少し遅れる...あぁ....それまでよろしく」 これで少しは余裕ができたと涼介は後部シートに深く腰を沈めた 身を任せるように目を閉じるとようやく気持ちが落ち着いていく気がした 「疲れたな....」 "疲れた"なんて言葉は嫌いだ 口にすれば途端に気持ちが弱くなり、言葉以上に疲れてしまう だからどんな時でも極力使わないようにしてきたはずなのにユウのあんな姿を見たら思わず口にせずにはいられなかった 「くそっ...」 なぜ、ユウなんだろう あいつがこんな目にあう理由はどこにある? ユウはただ、今を一生懸命生きているだけなのに... 車はあっという間にマンションまで到着し、涼介は支払いを済ませると足早に部屋へと向かった 帰る途中、マナトにも連絡を入れようと思ったものの、朝もまだ早くきっと寝ているだろうと止めておいた 涼介は静かに玄関を開け、寝ているマナトのために足音を立てないようにリビングへと向かう そしてドアを開けた瞬間、いるはずもないと思い込んでいたマナトの姿に驚いて声をあげてしまった 「うおっ!!ーーびっくりしたっ...」 リビングにはなぜか床にペタリと座り込んだマナトがいる 「起きてたのかっ!?そんなとこに座ってなにやってんだっ...」 涼介が声をかけるもマナトはなんの反応も示さない ただぼんやりと一点を見つめるマナトはまるで涼介が帰ってきた事にも呼ぶ声にも気づいていないように見えた 「おい、マナト?」 不審に思った涼介はぐっと肩を掴んで振り向かせようとするとその身体は想像以上にビクリと跳ね上がった 「マナト?」 あまりにも不自然すぎるその態度に涼介は思わず眉を寄せる 「お前...どうした?具合でも悪いのか?!」 するとゆっくりと見上げたマナトの顔は青を通り越して真っ白に生気を失っていた

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