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ーー送られてきた動画を見た時、血の気が引いていくような気がした
執拗に痛めつけまるでおもちゃみたいに弄び、それを笑い合う仲間達
そこに転がるのはユウなのに........
樹からの無言のメッセージの意味は考えなくてもすぐに分かった
言葉は要らない
これは仲間を裏切り、出し抜いた自分への罰だ
それが分かった時、マナトは膝から崩れ落ちその場に座り込んでしまった
どこを探しても見つからないわけだ
みんなが血眼になって探している間にユウは樹達に連れさられていたのだから
フラフラと迷子になって...なんてなにも知らなかったマナトは呑気にそう思っていた
全ては自分のせいなのに
ユウは自分の身代わりになっていたというのに
その残酷過ぎる真実は重すぎて、マナト一人では到底背負いきれるものではなかった
「涼介っ....」
マナトはすぐに涼介に連絡を取ろうと携帯を握りしめた
早く言わなきゃ...教えなくちゃ....
それよりもどうにもならないこの気持ちを受け止めて欲しかった
けれど携帯画面から涼介の番号を探し出したマナトの指は押す直前に動きを止めた
......すべてを知った時、みんなはどう思うんだろう
涼介は、先生は、ユウは.....
ユウはもう俺に笑いかけてはくれないかもしれない
自分のせいでこんな目にあった俺を許してくれるわけがない
そして心底嫌気がさしたのは身代わりになったユウよりもこんな時にまで身を守ろうとしている自分自身だった
きっともうここには居られない
せっかく...やっと居場所を見つけたのに
初めて失いたくない場所だと思ったのに.....
そうしているうちに朝を迎えたことも涼介が帰ってきたことにも気づくことができなかった
「おいっ!!どうした?何かあったのか!?」
涼介に揺さぶられたマナトはようやく現実に引き戻された
目の前には涼介の疲れ切った顔が心配そうに自分を覗き込んでいる
「お前ずっと起きてたのか?!悪かったな...連絡もしないで。ユウは見つかったからもう心配ない」
何も知らずにユウの様子を告げる彼の目をまともに見る事はできず、マナトは床の一点に視線を注いだ
「ちょっとケガしてるけど落ち着いたら見舞いに行ってやれよ。喜ぶぞ」
何気なくポンと頭に置かれた涼介の手は大きくて、ちっぽけな自分が余計に惨めになった
涼介は何も答えないマナトに不思議そうに首を傾ける
「本当どうしたの?お前」
「....っ」
細める眼差しが優しくて、気にかけてくれる言葉が嬉しくてもうこれからはこんな風に接してもらう事もできないのかと思うと胸がつかえた
本当に全部失くなってしまうの....?
知られてしまうのが怖い
突き放されるのが怖い
だけどーー
だけどもうこれ以上、涼介を失望させたくはなかった
「....行けないっ...」
マナトの小さく震える声に涼介は目の色を変える
「うん?」
意味を汲み取ろうとしてくれる涼介に嘘をつく事はできない
自分を守る為に知らないフリなんて
何もなかった事にして涼介の側にいることはできない
頭の中で自問自答を繰り返し、マナトは胸を押さえながら絞り出すように口にした
「全部俺のせいなんだっ...」
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