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高熱が続いて一週間ばかり過ぎるとユウもようやく回復の兆しを見せ始めた
朦朧としていた意識もはっきりとして、何か話しかけたりすると反応したり笑ったりすることもできるようになった
ピピッと電子音が鳴りユウの脇に挟んだ体温計を取り出すと37.3°
微熱ではあるがそれまでの体温の高さに比べると回復したと言っていいだろう
「ユウくん?どうかなぁ...ちょっとよく見せてね?」
椎名はユウの首元を触ったりしながら体調を確認すると顔色も良くなり心なしかスッキリしている
「うん!大丈夫そうだね」
「ホント?!あぁ...良かった...良かったね?ユウ」
椎名の言葉にミツルはユウに飛びつくようにしてホッと胸を撫で下ろした
「だけど油断は禁物だからね?ぶり返したら困るから」
椎名の忠告に素直に彼は返事をする
「うん、分かった、ね?ユウ」
ミツルに目で訴えられるとユウはコクコクと頷いて嬉しそうに目を細めた
二人はまるでこれまでのことが嘘のように寄り添い、今まで以上にべったりとくっついて離れない
特にユウのミツルへの依存心はとりわけ強くなっているようでしなだれかかるように全身を預けている
ーーーーまいったな......
椎名は不安を覚えながらも二人を見守っていた
ケガが治るまではどのみち連れていくことはできないが、このままでは二人を引き離すことは並大抵のことではなさそうだ
「具合が良くなったから何か食べようか......作ってくるから待ってて?」
ミツルはひとしきりユウを抱きしめた後、食事の支度をしようと立ち上がる
さっきまで溢れそうな笑顔を見せていたユウは彼が離れていくのが分かると途端に瞳を泳がせて腕に体を巻きつけた
「う...うぅ...」
「大丈夫だよ?すぐ戻るから」
イヤイヤと首を振るユウに対して彼は宥めるように言いながらもその顔は嬉しそうだ
「ちょっとだけ...ね?先生がいてくれるから」
「ユウくん、絵本読んであげようか?ユウくんが気に入りそうなのを持って来たんだよ?」
宥めすかして何とか彼から引き剥がすとムスッと唇を尖らせて不満げだ
「そんな顔しないのっ!すぐ戻るから待ててね」
頬にチュッと軽くキスをしたミツルは急ぎ足で寝室を出て行った
名残惜しそうなユウのために椎名は彼が戻るまでの間に絵本を読んであげようとリビングに置いた荷物を取りに向かう
ユウに読ませようと思ったのはあのペンギンの絵本だ
リビングに置いたバックから大判の絵本を取り出すとすぐさまユウのもとに戻る
ベットに起き上がった状態で心細そうにしているユウの目の前に椎名は絵本を掲げて見せた
「じゃーんっ!!ユウくん、これ見てごらん?」
「ぅ...?」
おそらく絵本すら与えられてなかっただろう
それを見たユウの不安げな瞳が椎名を見上げた
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