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「あーん」 「んぅぅっ」 彼がレンゲの掬ったものを口に入れたとたんユウは顔をゆがめた 「熱い?冷ましたつもりだったんだけど...」 心配そうに伺うミツルに向かってユウが小さな唇から赤い舌をチロチロと覗かせた 「あ...そうだったね、ごめん」 そこに見えるのは丸く残るやけどの痕 彼が煙草を押し付けたところがまだ完治せずに痛みがあって食べ辛そうに顔を歪めている 病み上がりのユウのために作ったのは野菜を煮込んだスープだったのだがそれでもまだ舌に触れると痛いらしい 「うーん...どうしようかなぁ」 少し考え込んだ彼はレンゲのスープを掬うとおもむろに自分の口に運んだ 土鍋の中身を食べたそうにしているユウの顎を人差し指でクイっと自分へ向かせて唇を合わせた そのまま含んだスープを口移しでユウの内に流し込んでみる チュルっと水音がして強制的に送り込まれた生暖かい液体がユウの喉を流れていく コクンと音がするのを確認するとミツルはそっと唇を離して微笑んだ 「どぅ?痛い?」 至近距離で彼の吐息が顔にかかるとユウはうっとりするように目を潤ませた 「どうする?もっと食べる?」 ゆうの手は自然に彼の服を引っ張り、突き出した舌を上下させる 「よかった...じゃあもう一回ね?」 強請られるその顔がかわいくて彼は嬉しそうに繰り返し口移しで流し込んでいた 「はぁ...」 唇が離れるたびに熱い息を漏らすユウについつい彼の舌が身勝手な動きを見せる それは食べさせるためではなく愛を確かめ合う行為 ぎこちなく動くユウの舌を彼の舌が容赦なく追いかける 「こら、2人とも。イチャイチャするよりちゃんと食事を摂りなさい。」 「あ...」 「う...?」 急な椎名の声に自分達が2人きりじゃない事を思い出した 「油断は禁物だっていったでしょ?!」 椎名に引き離されるように身体を離した 溶け合っていた舌が行き場をなくしてそれぞれ引っ込める 「ユウくんもっ!ちゃんと食べないと治らないよ?」 「う...?」 目を釣り上げる椎名を見上げてユウは狼狽え目を泳がせる ミツルはユウを抱き寄せておでこをコツンとつけると「怒られちゃったね」と片目をつぶった

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