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「大丈夫だよ、ただの過呼吸だから」 「過呼吸...?ただのって...すごい苦しそうだったのに」 脱衣所で息も絶え絶え倒れこんだユウを椎名は抱え上げてリビングのソファに連れて行った さすがは医者でその対応は早くおろおろする彼をよそに適切な処置を施していた といってもそれは明らかに精神的な不安からくるもので椎名は苦しそうに胸の前で拳を握り全身をこわばらせているユウをさすりながらゆっくりと呼吸を繰り返ように促していた 「大丈夫だよ、うん、そう...ゆっくりね...」 椎名の繰り返す言葉に真っ青だったユウの顔色が徐々に血色を取り戻し握っていた拳がゆっくりと開いていく そんまま椎名の肩にコテンと頭を寄せてホッとするような顔を浮かべていた 「ちょっと疲れちゃったかな?無理にしなくていいからね」 抱き寄せられて背中をトントンと叩かれるとその中でユウはあっという間に眠りに落ちてしまった くてっと椎名にもたれかかるように寝てしまったユウをミツルは遠巻きに見ているしかなかった 「....ユウどっか悪いの?」 ミツルは恐る恐る椎名に口を開いた 喉が渇いてうまく声が出ない だって初めてだった...こんな風に苦しそうに倒れるなんて今までなかった もがくように掴まれて爪を立てられた腕にはくっきりと跡が残っている 「こういうのっていろんな理由があるからね....でもユウくんの場合、明らかにストレスだね」 「ストレス?」 「相当無理してたんじゃないかな」 椎名にそういわれてもイマイチ彼はピンと来ない だって風呂に入れようと思っていただけだし、入ってもいない もちろん殴ったりもしてないし、無理強いなんてしてない シャボン玉やってあげるって言ったらすごく嬉しそうに笑っていたのに.... 「俺、何もしてない」 不満げに漏らすミツルに椎名は呆れたようなため息をついた 「ミツルくんさぁ、どれだけ今回のことでユウくんが傷ついたか分かってる?」 「....分かってる、分かってるから....もうしないって」 言い訳のように言いかけたミツルの言葉をさえぎるように椎名は厳しい口調で言った 「謝って、ユウくんが笑ってくれたらそれで終わり?全部無かったことになる?元通りになるって本気で思っているの?」 「.....」 「この際だから言わせてもらうけど...君はもう少し自分がしたことの重大さを理解したほうがいいよ」 椎名に言われた彼は返す言葉が見つからず、悔しそうに唇を噛むしかできなかった 「ユウくんが君のすることに耐えていたのは君を好きな気持ちもあるけど、それ以上に君がユウくんを好きな気持ちが伝わっていたからだよ?辛くても、君の気持ちが自分に向いていると思っているから耐えることができたんだ」 「....それは...」 「だけど君はユウくんに何をした?いつものように殴るだけじゃなくてもっと手酷く傷つけた。たった一人で耐え続けたユウくんは思ったんじゃないかな、もう許してもらえないんじゃないかって。不安でたまらなかったろうね。本当は愛されていないのかもって。信じていた気持ちを君は裏切ったんだよ」 ”裏切った” その言葉がミツルの心を大きく抉っていった 自分の気持ちをユウが疑うようになるなんて... 足元から崩れていくような気がして眩暈がする 「とにかくユウくんに症状が出た以上、今まで同じというわけにはいかないんだよ」 今までのようにはいかないとはどういう意味だろう... やっぱり先生はユウをどこかへ連れて行ってしまうのだろうか...

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