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「先生、ユウね、俺といると頑張っちゃうんだよね」
「え...?」
「俺といるといつも頑張ってできないことまでしようとするんだよ」
ミツルは遠い目をしながらぽつりぽつりと話し始めた
ユウはいつも一生懸命に俺の望む事をしようとする
”ごめんなさい”も俺の名前もすべてはひどい仕打ちで追い詰めて必死になって思わず飛び出したようなものだ
言葉の分からない相手には普通なら時間をかけて教えてやるものなのに、俺は殴って、ひどい言葉でなじって無理やり言わせた
痛いも怖いも、認めず許したのは俺を好きということだけ
好きなものを全部取り上げてそれを耐えろといい聞かせてきた
いい子のユウはそれをずっと俺のために泣きごとも言わず我慢して頑張ってきたんだ
「....だからユウのこと休ませてあげたくて」
「ミツルくん...」
彼は寝ているユウの瞼にそっと唇を寄せると微笑みながら囁いた
「頑張りすぎたから...ちょっとお休みしようね?ユウ」
すると寝ていたはずのユウの顔がふっと笑ったように見えた
それにつられるように微笑む彼を見て椎名は彼がどれだけの思いでその決断をしたのかを悟った
「そうか...もう決めたんだね?」
「うん」
ミツルのその目に曇りはなく、椎名はその気持ちを汲んで了承することを決めた
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