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第1話
少し冷たい空気に、小気味好く響く三度の音。
「はい、どうぞ」
部屋の住人の返事を聞き、秋月一路(あきづき いちろ)はその重そうな扉を開けた。
眩しいすぎる部屋に目を細めつつ中へ入る。
大きな窓の前にある机と椅子の一式が2セット。
その片方に座る少年が、秋月の方を振り向く。
秋月はその美しさに一瞬息を飲んだ。
しかし、彼の放つ雰囲気は同年代、いやそれよりも幾分か幼いものであった。
秋月は彼のテリトリーに足を踏み入れた。
「初めまして。俺の名前は、秋月一路。よろしくお願いします」
秋月は自己紹介とともに、椅子に座る美少年に手を出した。
美少年は、少し困惑気味に秋月を見上げ、秋月の顔を確認して視線を落とし、差し出された手を見た。
「……」
反応のない美少年に、手を引っ込めようとした秋月だったが、いきなり立ち上がった彼にその手を取られた。
「壬生司」
壬生は、少し驚いている秋月を気にする事なく続けた。
「壬生司です。秋月君は高等部からここですよね。分からない事があれば言って下さい。あとで、寮内も案内します」
そして、秋月の手を再度握り直し、
「ルームメイト、よろしくお願いします」
と柔らかく微笑んだ。
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