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第4話

秋月が入学したのは、全寮制の進学校であった。 幼稚舎から高校までのエスカレーター。 大学と大学院がないのは、殆どの生徒が海外に進学するからだ。 地位と財力のある家の者しか入学を許可されない。 入学と同時に寄宿舎での生活が始まる。 例外はあるものの、基本的には、幼稚舎・初等部は8人部屋、中等部は4人部屋、高等部は2人部屋が割り当てられる。 幼少期より、集団行動からマナーや社会ルールを叩き込まれる。学業もまた然り。 余程の事がない限り、エリートのレールを外れることはない。 このような一部のモノ達によって、社会的ヒエラルキーの上層部は作られていく。 ただ、ごく僅かだが、そのヒエラルキーに加わる一般人がいる。 中・高の2回だけ行われる、学園への入学を許可する試験をパスした者達だ。 その試験は、地位も財力も持たない者の為に開かれる門扉。 より素晴らしい人材を得るためか、若しくは奨学金という名の金持ちの施しか。 どちらにせよ、その門扉をくぐった者は、一切の免除を受ける。 そして、その免除は社会に出るまで続く。 どんなに他者を上回るものを持っていようとも、金がなければそれは一生埋もれたままで終わる。 学術に優れた者、芸術に秀でて者、技術に際立つ者。 天賦の才は何でもいい。 彼等の救済措置がこの学校の特別入試。 別名『ドミナートルテスト』。 それに合格した者は、晴れて成功への道に、一歩踏み入れることが出来る。 勿論入学後も、一定の厳しい条件を満たさなければ、すぐに退学となる。 そんな彼らには、一般生徒には与えられないバッジと、外出時はケープを付けることが義務付けられている。 十字の形をしたバッジの中央にはコウモリ。 そのコウモリを表すかのような漆黒のケープ。 それが、彼ら"エクステリオル( 外 部 生)"の目印となる。

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