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第10話
「で、さっきの質問だけど、壬生のお坊ちゃまとはどうゆう関係?」
何故自分の名前を知っているのか気になった秋月だったが、ドアに貼られた座席表の事を思い出し、ひとり納得した。
「どういう関係って、ルームメイトだけど」
失礼な奴と思いつつも、視線だけを送るクラスメイトよりマシかと思い、土師の質問に答えた。
「マジか!お前が、噂のルームメイトだったんだ」
土師は少し驚いた顔をした。
「”噂”って?」
秋月は、初対面の割に馴れ馴れしい土師に、この学園に似つかわしくない雰囲気を感じ、逆に親近感を持った。
「あぁ~噂ってのは、『あの”彫刻の女神 ”が、隣りに男を連れて、極上の笑みで寮内を歩いていた』っていうのが広まって、で、その”隣りを歩いていた男”ってのが、『”彫刻の女神 ”のルームメイトじゃないか』っていう噂」
「はぁ~?なんだそれ?」
確かに、壬生には寮内を案内してもらったが、何故その事が噂になるのか、秋月には全く分からなかった。
「大体、”彫刻の女神 ”って何だ?」
「あぁ、秋月はエクステリオル だから知らないのか」
土師は思い出したかのように答えた。
「”彫刻の女神 ”は、壬生司の別名。彫刻のように完璧な顔を持ち、彫刻のように表情を変えないから”彫刻の女神 ”。って言っても、本人はそう呼ばれてることを知らないだろうけど」
「女神 って…、司は男だろ?」
「えっ、お前、壬生のお坊ちゃまを名前呼びしてんの!?」
土師の思った以上の驚きとそれに比例した声量に戸惑いつつも、それ以上に、土師のひと言を聴いたクラスメイト達のより強くなった視線に、秋月は臆した。
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