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第14話

秋月と壬生に対する視線は、1週間も経つとだいぶ落ち着いた。 ただ、クラスメイトの対応は、やはり遠巻きに見るのみ。 土師を除き、秋月に声をかける者はいなかった。 「土師」 「久我(こが)チャン」 出入り口付近で教室内を見回す生徒に、土師が此処だという言うに手を挙げた。 「土師、机の上に生物学の教科書忘れてたぞ。今日、生物学あるんだろ」 「Oh Thank you!」 土師に教科書を渡した生徒は、秋月の方を向くとジッと凝視した。 「…お、おはよう」 1週間前のクラスメイトの反応を思い出しつつも、一応朝の挨拶をした秋月。 「おはよう」 まさか返答するとは思わなかった秋月は、目を見開いた。 「久我(こが)チャン、コイツが"秋"」 「知ってる」 「…そりゃそうか。秋月、こちらの方は、"久我 義智(こがよしとも)"クン」 「は、はじめまして」 「はじめまして」 土師に紹介され、秋月が頭をさげると、やはり反応を見せた久我。 ただ、頭はさげず凝視したまま。 「えーっと…」 怪訝に思いつつも、声をかけようとした秋月だが、 「じゃ、ティーチングが始まるから戻る」 「ああ」 久我は、秋月を観察し終わったのか、土師に声をかけて出て行った。 「なぁ、久我ってどんな奴」 秋月は、久我が出ていたドアに目をやり、久我を知る土師に尋ねた。 「んー、功利主義者?」 少し首をひねらせ、考えた風に言う土師。 「すっげー凝視されたんだけど」 「自分の目で見て、秋月と関わりを持つことが、自分の益になるかどうか考えてたんじゃねーかなー」 「確かに、値踏みをするような視線だったな」 秋月は、先程の久我の視線を思い出す。 「考えてくれる余地があるなら、まぁいいか」 「秋月はポジティブだね~」 呑気な秋月の言葉に、呆れた声で返す土師。 ただ、秋月の中では、久我は秋月(自分)自分(久我)の益になると思ったと、確信していた。

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