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第15話

毎年、入学の1週間後に行われる体力測定。 今日がその日にあたり、"エクステリオル( 外 部 生)"含め、1年は全員、体操着で外に出ていた。 「じゃー、Eから50mのタイム取るぞー!」 爽やかな春の空に、それと不釣り合いな体育教師の声が響く。 「あー、体力測定めんどいなー」 「オマエの場合、何しても面倒くさいだろ」 「よく分かってらっしゃる」 準備体操を終え、次々と走るクラスメイトを見ながら、ダルそうに背伸びをする土師。 「次、秋月、田代、長谷川」 「オマエの雄姿、しっかり見といてやるよ」 秋月は、やはりダルそうに手を振って送り出した土師に、フッと笑いレーンへ向かった。 「はい、位置について…、よーい…」 ――パーン!―― 懐かしい競技ピストルの音に、秋月は心が踊った。 ――カチ、…カチ、カチ―― 「1コース6.82、3コース7.45、2コース7.61」 着順に、記録者がタイムを読み上げた。 「秋月、オマエ、速っ!!」 秋月の俊足に、驚いたのは土師だけではなかった。 話題の人物の思わぬ走りに、クラスメイトは勿論、他のクラスの生徒達も、土師と同様に驚いていた。 「まぁ、本業は水だけど」 秋月は、少し呼吸を整えて、ニヤリと答える。 「え、何、水泳やってんの?!」 「幼稚園からここ入るまでな」 「通りで、日本人の割にいい身体してると思ったわ」 土師は、秋月の身体をべたべたと触りだした。 「何、変な触り方してんだよ」 「胸筋フェチなんで」 「水泳だから、そんな胸筋ついてねーだろ」 特に胸を入念に触る土師に、流石に鬱陶しいと思い腕を上げて払った秋月。 「いや、オマエの胸筋は俺好みでバランスがいい」 「……オイ、揉むな」 それでもなお、胸を触り、しまいには揉みだした土師。 「土師、何やってる!早く来い!」 スタート地点から、体育教師の声が飛んできた。 「ほら、呼んでるぞ。俺の胸揉んでないで、とっとと行け」 「Yes Sir!」 秋月の言葉に、土師は、パッと離れ敬礼をしてスタート地点へ向かった。 「ったく」 秋月は呆れつつも、学園に馴染めない自分の事を構う彼なりの行動に、心の中で感謝した。

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