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第16話

「お前、運動系のエクステリオル( 外 部 生)じゃなかったよな」 「ああ」 「天は二物も三物も与えるな」 1500mの持久走を残し、それ以外の種目を終えた秋月と土師は、トラックの内側でだべっていた。 どの種目も、平均を大幅に上回る秋月の記録に、土師は驚きを通り越してひねくれていた。 「そう言うお前も、手を抜かなかったら、もっといい記録出せれるんじゃないのか」 アラブの血も流れている土師は、体格に恵まれていた。 動きもそう悪くない土師は、明らかに手を抜いていた。 「一緒だよ。力を入れようが入れまいが、変わんねー。だから、テキトーにするんだよ」 土師は、肩をすくめごちるように言った。 「それより、壬生のお坊ちゃまがコッチ見てるぞ」 くいっと顎で指した土師の動きの先に、こちらを見ている壬生がいた。 「あ!」 それに気付いた秋月は、満面の笑みで大きく手を振る。 壬生は驚いたものの、はにかみながら小さく手を振り返した。 「全く、お前はずげーな」 そのやり取りに土師は、感心したように言った。 「何が?」 秋月は、壬生を見たまま、土師に尋ねた。 「あの"彫刻の女神(ヴィーナス)"が、今じゃ"生ける女神(ヴィーナス)"だぜ」 「ネーミングセンスゼロだな。もう少し考えた方がいい」 「そこかよ」 壬生の順番がきたことを教えるように、人差し指でちょいちょいとジェスチャーをしながら会話を続ける秋月。 「お前もそうだけど、俺にとって司はここでの数少ない友人のひとりなんだ。だから、周りは気にしないことにした」 秋月は、土師の"すげーな"に解答した。 「俺も友人のひとりにしてくれてんのな」 「ああ。お前が何と言おうと、俺の中では友人だ」 壬生が走り終わったのを見届けて、土師の方を向いて言った秋月。 そんな爽やかな秋月の顔に、 「はぁ、三物どころじゃねーな」 と、やはりごちる土師だった。

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