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第20話

何とも言えない沈黙が流れる中、 「…フッ。…は、ハハハ!」 突然、笑い出した秋月。 「一路?」 どうしたのかと思い声をかける壬生に、秋月は満面の笑みで、 「そんなことか」 と言っておもむろに立ち上がり、制服を脱ぎはじめた。 「い、一路??」 訳が分からない壬生は、ただただ、制服を脱ぐ秋月を見るだけ。 ブレザーを脱ぎ、ネクタイをほどき、シャツのボタンを外し、最後のアンダーシャツを脱ぎ捨て、ついに上半身裸になった秋月。 「い、いちっ!」 思わずビックリして両手で口を押さえ、先ほど以上に真っ赤になる壬生。 「ハイ、どうぞ!」 今度は壬生が真っ赤な顔のままポカーンとしている。 「触りたかったんだろ?俺の筋肉?」 悪戯な笑みで、両手を広げる秋月。 「俺的には、やっぱり背筋なんだけど。司も胸筋派?」 すこし身体を捻り、背中を見せながら話しかける秋月に対し、いまだ固まったままの壬生。 「触んないの?俺の筋肉」 そう言って壬生に近づいた秋月は、彼の手を取り、自分の腹に当てる。 「とりあえず、腹筋はどう?」 秋月の温かい肌と優しい声に、硬直がとけた壬生は、 「え、あ、えーーーっ!」 秋月に手を取られたまま、飛び上がった。 「ってか、司はどうなんだよ」 そんな壬生を気にすることなく、すでに部屋着に着替えていた壬生の服を捲り、彼の腹を触る秋月。 「ひゃ!」 「司、腹筋ないね。しかも、ちょー色白!」 「ちょ…、い、一路!」 むにむにと腹を触られパニックに陥る壬生を見て、ケラケラ笑う秋月。 「そ、それなら、私も、触る!」 半ばやけくそになった壬生は、秋月に取られていない手も彼の腹筋に当てて、しっかりと触った……次の瞬間、 「わ、す、凄い…」 鍛え上げられた秋月の身体に感嘆した。 「同じ男なのに、私の身体と全く違う…」 そのまま、先ほどの驚きや躊躇いが噓のように、秋月の身体をべたべたと遠慮なく触る壬生であった。 「"スキンシップ"は、ご満足いただけましたか?」 「わぁ…」や「はぁ…」と言いながら触り続ける壬生に、そろそろいいかなと思い声をかけた秋月。 「あ、ご、ごめんなさい!触りすぎだね!」 我に返った壬生は、秋月の身体からパッと両手を離した。 「また、言ってくれればいつでも"スキンシップ"させてあげますから」 うやうやしく頭をさげていう秋月に、 「ほ、本当?!」 壬生は、目を輝かせて嬉しそうに聞き返した。 「え、まさか司も、筋肉フェチ?」 「え、あ、だ、だって…」 秋月に茶化されるように言われ、壬生はしどろもどろ。 それがまた秋月の笑い誘うのだが、流石にイジりすぎかと思った秋月は、 「それより、司はもっと筋肉つけた方がいいよ。さっき触ったとき全然なくて、逆にびっくりしたわ」 そう言って、雑に脱いだ制服をハンガーにかけた。 「今度一緒にジムで鍛えるか?」 「うん!」 ジムに行くのがそんなに嬉しいのかと不思議に思いながらも、壬生の無邪気な笑顔に秋月も温かく笑い、 「じゃあ、俺上半身裸だから、先にシャワー使うな」 シャワールームへ向かった。

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