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第22話
屈託のない笑顔で、当たり前のように差し出された手。
一瞬、何が起こったのか分からなかった。
ただ、その手を握れば、何かが変わる思った。
彼が引っ込めようとした手を、慌てて掴んだ。
あの手の感触は、いつでも鮮明に思い出すことができる。
彼が最初にくれた笑顔と共に。
初めてできた友人。
一生できることはないと思っていた。
同級生たちを見て憧れた、あの笑いあう光景が、自分もできるのだ。
その歓喜に、心の中でワルツを踊った。
が、実際はどうだろう。
確かに、憧れの光景を現在進行形で体験できている。
自分は。
一方、彼は"壬生司 "といることで、周囲から一目置かれている。
悪い意味で。
ただ、だからと言って、彼と距離を取ることはできない。
知ってしまったから。
ほんの十数日で、彼は多くのことを与えてくれた。
些細なことで笑ってしまうということも、些細なことで行き違うということも。
単調だった自分の世界が、今は多様で複雑な世界に、不協和音でさえ輝いて聴こえる世界に変わったのだ。
もう、単調なあの世界には戻りたはくない!
そう思うと、彼と離れることなんて不可能だった。
小さな罪悪感を抱えつつも、友人 と憧れの時間を過ごした。
そんな中で、ひとりだけ違う人物がいた。
―― 土師義登 ――
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