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第23話
移動教室のとき。
秋月が気になって、彼のクラスを横目で覗いた。
そこには、自分が憧れていたあの光景があった。
ただ違うのは、彼と笑いあっているのが、自分ではなく土師であったということ。
それから、彼のクラスへ行くと、隣には必ずと言っていいほど土師がいた。
自分には秋月 しかいないのに、彼には自分以外の土師 がいる!
そして、今日の体力測定。
楽しそうにじゃれ合う二人が目に入った。
もし、自分が彼の隣にいなければ、彼は土師だけでなく、もっと多くの友人を作り、青春を謳歌するのではないだろうか。
いや、そうに違いない。
何故なら、皆、彼に魅了されていたからだ。
彼の記録に驚いて目が変わったのではない。
彼のハツラツとした眩しい笑顔に惹きつけられたのだ。
自分と同じように。
それでも、現在のところは、彼と友人関係でいるのは土師と自分だけ。
にもかかわらず、土師と自分には天と地ほどの差がある。
だから、彼に言ったのだ。
土師のように貴方と仲良くなりたいと。
もっと触れ合いたいと。
すると、どうだろうか。
何と、彼自らどうぞと自分の身体を差し出し、そのうえ彼の方から触れてきたではないか。
彼の身体は素晴らしかった。
自分とは全く違う、均整の取れた体躯。
高校生であることを考えると、まだまだ伸びしろのある体付き。
直に触れた彼の小麦色の肌は、しっとりと熱を持っていた。
そして、彼が声をかけるまで、我を忘れて触り続けた。
彼のもう一人の友人、土師のように。
今、思い返すと、何と失礼なことをしてしまったのだろうかと思う。
ただ、そんな失礼な行為にも、彼は笑っていた。
あんな失礼な行為も、友人であれば許されるのだろうか。
もし、先ほど考えたように、彼に土師と自分以外の友人ができたら。
彼は、あのスキンシップを他の友人ともするのだろうか。
そう思うと、何とも言いようのないモノが身体を浸蝕していく。
土師と仲良くしている彼を見たときもそうだ。
どうすればいいのか、全く分からない。
彼が触れた腹部を撫でる。
彼の手は身体と違いひんやりと冷たかった。
ただ、彼の触れた場所は、熱を帯びていて、それは自分の身体に、"何とも言えないモノ"のように浸蝕していった。
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