25 / 32

第24話

「秋月、放課後予定はあるか」 朝の眩しい日差しが降り注ぐ教室にて。 秋月が土師といつものやり取りをしていると、突然久我が現れた。 「え、俺?」 秋月が自分を指差すと、久我は無表情で頷いた。 「特にはないけど…」 「じゃ、放課後少し付き合ってくれないか」 秋月は妙なお誘いに、 「別にいいけど…もしかして、校舎裏に呼び出されて、ボコられるやつ!?」 と冗談半分でそう言うと、無表情だった久我が、より一層冷めた目で秋月を見た。 「ゴメンナサイ、冗談デス」 「授業が終わったら迎えにくる。教室で待っていてくれ」 「…ハイ」 思わず了承した秋月を見て、久我は"コレで自分の仕事は終わった"とでもいうように、さっさと教室を出ていった。 「壬生のお坊っちゃまもだけど、なかなかの強者な久我チャンに冗談言うとか。お前、怖いものなしだな」 秋月は"久我は強者なのか?"と思いつつ、それよりも久我のお誘いが気になった。 「それにしても、何の用だろう?」 「行けばわかる」 さも知ってる風な口ぶりの土師。 「お前、何か知ってんの?」 秋月は、"また何かあるのか?"とジロリと横目で土師を見た。 「土師、もう学園の取説作ってくれ」 ハハっと笑った後、コホンとわざとらしい咳払いをした土師は、"それじゃあ"と話し始めた。 「"セナクル"」 「セナクル?」 「高貴な方々が集う部屋の名前。たぶん、放課後お前が行くとこ」 秋月は、ひとまず黙って土師の話を聞くことにした。 「この学園には、壬生家以外の"別格なお家柄"のご子息と、彼らにお声掛けしてもらった人間で構成されたグループがあります。そんな高貴な方々は、放課後集まって様々なことを語らいます。昨今の世界情勢だったり、哲学についてだったり。はたまた、絵画の品評まで。今時の男子高校生が話す内容ではないのは確かです」 身振り手振りを交えて話す土師。 「そのグループが集まる部屋が、別館2階の一番端の教室、通称"セナクル"。彼らからお呼びがかかったということは……、グループ参加の要請かと思われます。昨日の体力測定で、秋月クンに目をつけたのでしょう。ちなみに、秋月クンの成績に関しては、合格の時点で、彼らには筒抜けです。何故なら、高貴なグループと学園側はつーつーかーかーですから」 丁寧な土師の喋りは、明らか彼らを小馬鹿にしたようだった。 「でも、セナクルって"最後の晩餐"だよな?」 「Of course」 「じゃあ、裏切り者が出たってことだよな?」 疑問に思った事をそのまま口にした秋月に対し、土師は無言のまま少し考えて、 「"壬生基"」 と答えた。

ともだちにシェアしよう!