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第25話
「裏切り者 は、壬生のお坊っちゃまの兄、"壬生基"。基様は、司坊っちゃまが入学してから、グループに参加しなくなった。極度のブラコンで、司坊っちゃまに付きっきりだから参加しなくなったと言われてるが…、裏では司坊っちゃまが襲われそうになったことにグループ内の人物が関係してたからだ、と言われてる」
いつもの口調に戻った土師。
「本当に訳わかんねー話なんだよ。何故、"壬生基"がグループを抜けたのか。ブラコンなら一緒に参加すればいいだけの話だ。だってそうだろ?小さいとはいえ、司坊っちゃまも"壬生家"の人間なんだから。なのに、大きくなった司坊っちゃまは、今もグループに参加していない。大体、司坊っちゃまが襲われそうになったのは、中等部のときだ。早々に基様が抜けたのは、そもそもおかしい」
捲したてるように、なおも続ける。
「それに、"裏切り者"って表現も、しっくりこない。仮に、司坊っちゃまが襲われそうになったことが原因だったとして、裏切られたのは基様の方だ。別に仲良しグループってわけじゃない。あのグループは"家"で繋がってる。基様も司坊っちゃまが入学するまでは、普通に参加してたって聞くし。よっぽどのことがない限り、抜けるとかありえない。だから、司坊っちゃまが関わってるってのも、あながち嘘じゃないかもしれない…。そう考えると、やっぱり"裏切り者"は、変だ…」
最終的に、土師は秋月に説明すると言うよりも、自問自答するようだった。
「"壬生基"が抜けた後は、特に何もなかったのか?」
「ああ、特には。所詮、子ども達のグループ内での話。生徒の間で話題になっただけで、喧嘩やイジメがあったわけじゃない。問題がなければ、学園側も一切関与しない。誰だって揉め事は勘弁だ。それが、"別格なお家柄"だったら尚更だな。まぁー、彼らが家を継いだ時は、何か一悶着ありそうだけど」
土師の答えに、"ふーん"と言いながら数回頷いた秋月。
「ちなみに、"神"はいたりすんの?」
「"神 "というより、"皇帝 "だな」
「皇帝 か…」
「行けば分かる」
分かったような分からないような、そんな秋月は、変なもんに目を付けられたなぁと、深いため息をついた。
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