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第28話
秋月は差し出された右手をジッと見る。
秋月は直感で思った。
この手はとってはいけない。
「相手が手を出しているのに、挨拶もできないのか」
出窓に腰掛けていた生徒が、苛立ちを露わに秋月に突っかかった。
「これだから、一般市民は…」
「宗太郎 」
九条が、すこし低めの声で秋月に突っかかった生徒の名を呼んだ。
「す、すみません…」
宗太郎と呼ばれた生徒は、ハッと表情を変え、すぐに引き下がった。
秋月は、この明らさまな力関係に内心笑った。
「秋月君、気にしないでくれ」
「いえ」
「とりあえず、座ろうか」
「…はい」
九条に促され、秋月は部屋の真ん中に配置されていた応接セットのソファに座った。
他方九条は、テーブル越しに秋月と対峙するように座った。
「君の噂は耳にしていたよ」
「俺の"噂"ですか?」
「そう。司さんが懇意にしていると」
秋月は、自分以外にも壬生のことを、さん付けではあるが、"司"と呼ぶ人物に初めて出くわし、少し驚いた。
「懇意というか…。大切な友人ですから、仲良くするのは当たり前かと」
「"大切な友人"ねぇ……」
ニコニコしていた目が一瞬だけ変わった。
雰囲気と同じ、威圧感のある目に。
「まあいいか。本題の入ろう」
すぐに先ほどの仮面のような笑顔に戻った九条。
「今日、君をココに呼んだ理由は…分かってるかな?」
「なんとなくですが。"グループ"への参加を許可された、と理解しています」
「その通り。是非、君にはこのグループに参加して欲しい」
「ですが、とても歓迎されているようには思えないんですが」
そう言って、辺りを見回す秋月。
この部屋に入って感じるのは、敵意剝き出しであった宗太郎と同様、秋月を快く思わないものばかり。
そして、一番は……。
「そうだね。私の一存で君を呼んだからね。まだ、彼等の理解を得られていないのが実情だよ」
そう言った九条が、この中の誰よりも自分に敵意を持っている、と秋月は感じていた。
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