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に
皆瀬 由紀路は俺の幼馴染。俺ん家の隣で「succulent サキュレント」って名の花屋をやってる。ちょっとしたマニアに人気のある店のようだ。因みに俺こと藤崎 誉は、その隣で地域密着型の酒屋を(親父が)やっている。藤崎の次男で普通の男子大学生だ。
「succulent サキュレント」とは多肉植物。表向きは……花屋なんだけど。
店先に並ぶ、ルリタマアザミ、ヒメヒマワリ、色とりどりのスターチス、夏のイメージの強い「モカラ」というランの仲間に、夏限定で出回る「クルクマ」というタイの国花。
お陰様で花にはちーと詳しくなりましたが!何か?
こんな自分がキモい! 皆あいつの……由紀路のせいだ!
そして店の奥に花よりも何倍もあるスペースにひしめき合う多肉植物……グロい! キモい! 全然綺麗じゃない!!
これの…何がいいんだ!
「……んだよこれ、石みたいなの」
「おい、デリケートなんだから触んな」
いたのかよ!
テロテロのシャツに、黒縁眼鏡と高校ん時のジャージ。色素の薄い長めの髪は無造作に束ねていた。
「……大学とのギャップがあり過ぎだろ」
「何?」
「なんもねーわ! つーかいるならおまえが店番しろよ! なんで俺を呼び出すんだ!」
「俺は花には興味がない。誉の方が詳しいし…俺は嫁達の世話で忙しい」
「ふざけんな! 俺だって忙しいわ!」
「今日、おまえんとこ定休日だろ」
「うるせぇ、俺だって店以外にやることあるつーの!」
「じゃ、姉貴の手料理付きでどうだ?」
「うっ……まぁ、し仕方ねぇな。やってやろうじゃねーの」
その言葉に弱いの知ってて! くっそ…俺ってやつはチョロ過ぎ!
「なぁ、陽茉里さんは?」
「ほら食え」
「だ~か~ら! 陽茉里さんは?」
「いない」
「はぁ?! 騙したな!」
「……誰がいるって言った? 食わないのか?」
「食うよ!」
実は由紀路も料理が上手いのだ。俺の好みをドンピシャに作ってくるのがまた腹立たしい。
イケメンで料理上手とか死ね!
くっそ! このハンバーグ超うめぇ!
「ふんっ! まあまあだな」
「……まだあるぞ」
「しっ仕方ねぇな食ってやるよ。寄越せ!」
今……由紀路がどんな顔をしてるとか見ないように、俺は目の前のハンバーグを大いに食べた。
その顔(陽茉里似)で笑うとか、今日の無茶振り許してしまいそうになるじゃねぇか……
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