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第2話
「うぅ」
「起きられましたか?」
目の前には、無表情な青年がいた。その顔をぼんやり見ていると、相手が俺の前で手を振る。
「あっ、起きてます、ちょっとその輪っかと羽が珍しくて」
そう、目の前の青年には天使の輪や羽があるのだ。ずっと眺めていてもそれが俺の妄想ではなく現実だと目から脳に伝わってくる。
「我々はこの世界を神様から頼まれている使い、天使です。初めまして、この度三日ほど街の説明等をさせていただく事になりましたルートと申します」
「あ、どうも、秋谷恭華あきやきょうがです」
「秋谷さんですね、一応この世界では恭華秋谷となります」
「分かりました、それでえっと此処は?」
チラリと辺りを見てから、優し気な顔をした目の前の天使に聞く。なにせまるで保健室か病院のベッドに寝ているようなのだ。カーテンが掛っているので俺の世界はこの薄い青髪天使とベッドだけだ。しかも俺が着ている服がブレザー制服なのも意味が分からない。
「此処は病院です。一応私が貴方を担ぎこんだという事になっています。貴方の身の上は両親が死んでしまい、一時的に天使に預けられている子共です。年齢は十五歳になっています、今は三月です、来月からは高校に通って頂く事になります」
「高校があるんですか?」
「そのあたりは神様から聞いていないのですね。ちゃんとありますよ、小学校、中学校、高校。大学もありますが、大学に行く方は少ないですね、商人や研究者が主です。因みに高校までは税金免除となりますので、従属者になる事はありません。勿論任意でもダメです。ただし、高校からは主人になる事は出来ます。ですのでお金を稼ぐ事が許されているのですが……そのあたりは審査があります。因みに秋谷さんはその資格を持っていますので合格となります」
転生特権か……。そう言えば俺容姿も変わったんだよな?
「すいません、鏡とかありませんか?」
「鏡ですか? これでいいですか?」
一度カーテンから外に出て、百均で売っていそうな大きさの鏡を持ってきてくれた。
鏡の中にいたのは、黒髪黒目の……可愛い顔した少年だった。
「あれー……」
「どうかしましたか?」
「あ、いえ、神様が俺のなりたい容姿が分かったと言われていたので、もっとイケメンになっているかと思ったのですが」
「……少々お待ちください、聞いてみます」
天使はスマホを取り出して、どうやらチャットアプリをしているようだ。
……神とのやり取り気軽過ぎないか!
「あぁ成る程、どうやら貴方が使っていたゲームのアバターが可愛い子だったらしいので、そう言った者になりたいのかと思ったそうです」
「いやアバターは別ですから、そんな理由じゃないよ俺は……」
だがそう言えば自分のなりたい容姿でゲームのアバター作ってる人もいたなーと、遠い目をしているのが鏡を見なくても分かる。
……なってしまったのは仕方ない。前世のぱっとしない自分よりはまだましだろうよ。
無理矢理自分を納得させて改めて天使に向き直る。
「三日間よろしくお願いします」
「えぇ此方こそ。それでは早速移動しましょうか」
俺もそれに頷きベッドから降りる。
視線が低い。俺が高校の頃ってこんなもんだったか? それとも身長も少しチマクなってしまったのだろうか。……後者な気がするな。
カーテンが開かれる。その先に開かれた窓があった。
どうやら俺がいた部屋は三階だったらしく、そこからの景色はなんといえばいいのだろうか、酷く雑多だった。
ビルや家があり、遠くにスタジアムのような物も見える。確かに俺の知る外観と似ていた。
天使について行き、退院手続きを済ませて天使の車に乗る。
車とかもあるんだな……まぁ技術が同じくらいなら有っても当たり前か。
「先ずは寮に案内します。もし寮生活が嫌であれば稼いでマンションを借りてください。その辺のアパートならば寮の方がいいですよ」
「そう言えば、学費とかは」
「高校までは無料になります。そこでしっかりとスキルとこの世界のシステムを理解する事。そして社会人になる前にスキルのレベル上げを行います」
「成る程」
そりゃそうだよな。いきなりぽんと外に放り出されるわけでもないか。それにしても全部無料とは太っ腹というか。まぁ受験勉強する人も少なそうだから、俺が通った高校よりはもっと平和そうだけどな。
「此処が高校」
車で連れてこられたのは、中々綺麗な高校だった。この高校は大学を目指さない人が行く高校の一つらしい。その中でもまだ進路を絞っていない人が通う場所。武力一本でいくと決めたら、武力の専門高校があるらしい。
寮も綺麗なアパートと言った感じで、俺は二階の一番奥の部屋だった。この建物は三階建てだけれども、他にも寮が多く建っており、家から通えない人は近くの寮に引っ越すのだとか。勿論同じような高校は他に幾つもあるとの事。街一つといってもこうやって実際に降り立つとかなり広く感じるから、さもありなんってとこか。
食事に関して寮生は学校内のレストランで取れるらしい。お菓子等はお小遣いでやりくりするか、自分で稼ぐしかない。
車から見える街並みは本当に俺がいた場所と同じような感じだ。だけれども、何故看板も日本語? と思った質問を投げかけてみると、神様は俺がいた世界の未来で神になって時間から切り離された存在らしい。よくわからんがそうらしい。分かった事は未来の日本人が神に成ったという事だ。
だが同じなのは街並みだけだ。そこを歩く人に俺は興奮を通り越して感動していた。
特に動物が二足歩行したような獣人は一発で分かるし、尻尾と耳が生えている人も、赤信号で止まっている時に見ると内心で感嘆の声が漏れるほどだ。
エルフは人と似ているのでよくわからないが、耳が尖っているらしい。
ドワーフは低身長でずんぐりした感じだが、髭は生えていたりいなかったりなので、その辺はフリーとのこと。
次にやって来たのは携帯ショップ。どうやら俺のスマホを買ってくれるらしい。有難い!
孤児のスマホは天使が高校卒業までは払ってくれるので、お言葉に甘えて買っていただきました! 設定なんかは殆ど一緒だったので戸惑う事は無かった。
……逆に同じ過ぎて戸惑ったくらいだ。
連絡用にSNSをダウンロードしてルートさんの連絡先を入れた。一応ルートさんが保護者的な扱いになっているらしいが、神様から三日面倒みれば大丈夫といわれたらしい。
まぁ自由に色々とやってみたい俺としては有難い申し出と言えるけどな。
その後は街を色々と回って食事をして、今日はルートさんの家に泊まらせてもらう事になった。ルートさんは適当にお酒を飲んで寝てしまったので、スマホでネットサーフィンをしてみる。
その結果、確かに神様の言っていたように様々な競技でお金が得られる事がわかった。それと、カジノなんかも結構あるみたいだ。娯楽の小説やアニメなんかも放映されているようなので、俺としてもどんなアニメがあるのか色々と漁ってみたい。
流石にアニメ等も一緒という事もなかったので、名作とお勧めされている物を見て過ごすのも悪くないかもしれないな。
ベッドに入り今日の事を思い返す。
自分でも驚くほどにこの世界での希望を抱いていて……それでいて日本への郷愁や哀愁家族や友人を思う思考が出てこない。
もしこれが本来の俺であるならば薄情であるの一言で片が付くのだが、脳を弄られて調整されたのだとしたら……。
いや、考えても仕方ない事だ。さっさと寝よう。
翌日も昨日案内してもらっていない要所要所を案内してもらい、最終日は家具含む日用品を買って貰って俺の部屋に送ってもらった。
「あぁ最後に忠告です」
「はい?」
「この世界ではまぁなんというか、貴方から見れば性的に緩い方の比率が多いですから気を付けてください。性別種族全部超えてですからね」
「……成る程分かりました。色々とありがとうございました」
「いえこれも仕事なので、それではお気を付けて」
それだけ言ってルートさんは行ってしまった。
それにしてもこの世界そんな事になってるのか。まぁ俺も別にどっちも行けるし問題は無いか?
実際そのあたりはあんまり考えた事無いんだよなぁ。
可愛いもんは可愛いし、カッコいいもんはカッコいいしなんだよな。まぁその時になったら考えればいっか。
それよりもこれだよな。
俺の手のひらに収まるカード。そこに魔力を流すと俺のステータスが現れる。だが映し出されたステータスは他の人には見えないらしい。そして、これを持っている事が市民である証なんだとか。従属者のカードは色が違うらしい。俺のは白で、従属者は黒。
名前:恭華 秋谷
職業:高校生
スキル:『天秤は傾き続けるLv-』『盾魔法Lv1』『経験値獲得上昇Lv1』
従属者:0
簡易的だが、個人的に分かりやすくて好きだ。
スキルのレベルは10が最大。一番最初の『-』と言うのはレベルが無い物で、神様から直接貰った強力な物という事らしい。
折角だからスキルを発動させてみると、俺の首に傾いている天秤の絵が掘られている茶色のネックレスが現れた。これが発動状態という事か。
盾魔法はルートさんに魔力の使い方を教えてもらうために使ったけど……自分が思ったように半透明な盾が生まれるってのは、魔法使っているって感じでテンションが上がる。
まだ維持も全然できてないけどな。
最後の経験値は、他のスキルを使うと自動的に発動するらしいので、暇なときは盾魔法をどんどん使っていよう。
さてそれじゃあ寝るか。明日からはなんと高校生活が始まるのだ。いきなり 過ぎて言葉も出なかったがそう言う事らしい。教科書は学校で配られるので、俺が用意するのは筆記用具と制服だけ。ブレザーで赤いネクタイ。それが俺の行く学校の制服だ。
それじゃあネットサーフィンしてから寝るか。
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