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第3話

 うーねむ。  あれから色々なアプリを試していたらちょっと夜更かしてしまった。仕方ないとは言え、まぁ今日は早めに寝るとするか。  学校は此処から近い。徒歩五分ほどだ。坂があるわけでもないので車に気を付けて登校するだけだ。  まだまばらだが俺と同じ制服を着ている人達と一緒に学校に到着。  そのまま学校に併設しているレストランで学生証とコインを使って好きな料理を選んで食券を渡す。朝食定食(和)というのがあったのでそれにしたわけだが、成る程朝食定食って感じだ。白米味噌汁ノリ魚だし巻き卵。和! である。他にも色々と朝食があったので、今後の楽しみだ。味もかなり美味しい。流石スキルを持っている人が造っただけあるという事か?  朝食を食べてからまたスマホを弄り、時間になったので新入生の集合場所へと向かう。  手書きの看板の案内に従って行けば体育館が現れた。  中に入る前に手続きを済ませて、造花をポケットに突っ込まれる。そのまま中に入り前から順番に座っていくようなので、それに従い席に着く。  二階は椅子が備え付けられているようで、講堂のようにもなるのだろう。  流石に此処で襲って来る人もいないだろうと、少し眠る事にした。  ――誰かのマイクを通した音で起き、ぼーっとしながら辺りを眺めると、既に満員御礼先輩から保護者の皆さんも集まって、マイクテストが行われている所だった。  さて、こんな集会は久しぶりだ。一応社会人になり立てだった前世の俺からしてみれば酷く懐かしい。  だがやはり辺りにいる人間以外が気になってしまうのは仕方ない事だろう。  様々な種族がいるので、挨拶そっちのけで色々と見ていたのだが、それも限界がありつまらない話を幾何か聞き、生徒代表の話を適当に流して入学式が終了。  それぞれの教室に移動する。   俺も事前に伝えられていた教室に入ると、好きに座って良いようだったので窓側の後ろの方に座る。一番後ろは既に取られてしまっていたので仕方ない。 「隣いいか?」  別に許可なんていらないだろうに、律儀だなと苦笑いしながら話掛けてきた彼に返す。 「勿論」 「初めまして、俺はコウセイだ、よろしく」 「初めまして、キョウガです」  それにしても、目の前に獣人がいるというのはなんというか不思議が気分だ。しかも普通に話しているというのも。彼はなんだ犬? っぽい形の耳をしている白い毛並みの獣人だ。 「高校は家から少し遠いからあんまり知り合いいないんだ、良かったら仲良くしてくれ」 「こちらこそ、俺も知り合いいないから」 「そっか、ふぅ安心した、やっぱ知らない奴等ばっかだとボッチになるかもって思ってな」 「分かる分かる」  一人でいるのが苦でないならば別だけれども、そうじゃないならやっぱりこうやって話せる人って貴重だよな。 「はぁー安心したら腹減って来た」 「朝食べてこなかったの?」 「いや?」 「……そう」  どうやら彼は細身だがかなり食べるようだ。もしくは間食を沢山する派か。 「ん?」  生徒が続々と入って来る中で、絶対に生徒じゃないだろうという人が一人入って来た。  その人は前を歩く学生に付き従っているようで、服装はアニメで見た執事服に似ていた。 「チッ」  舌打ちが聞こえて思わず振り向く。  それまでずっと外を眺めていた一番後ろの席を獲得した彼の目と合う。 「なんだよ」 「あ、いや、初めまして」 「どーも」 「初めまして」  微妙な空気に居た堪れなかったのか、コウセイ君が割って入ってくれる。 「そっちもどーも」 「俺はコウセイ、よろしく」 「俺はキョウガ」 「シリルだ、悪いな気分を害して」 「いや、ちょっと驚いただけだから」 「……知り合いか?」  聞いちゃうのかコウセイ君! ずいぶんと勇気があるな。  実際シリル君の眉間に少し皺が寄った。 「悪い、ただ近づかない方がいいなら教えてほしかっただけなんだ」  成る程、今後の為ってやつか。確かにそれなら知っていた方がいいかも。 「……見ての通りの成金野郎だ。中学の時も金で引っ掻き回してた」 「成る程、参考になった、ありがとうな!」  見ての通りって事は、あれは従属者って事か? 「親が金持ちなのか?」 「そうらしい。あの執事服も親に買って貰ったんだろ」  それもありなのか。  従属者の数は力だ、あれで自分は従属者を持っているから強いと周囲にアピールしているって事か。俺もなんとなく分かって来た、あんまり近づかないでおこう。 「彼には従属者を養えるスキルがあるのか?」 「知らない、だがあったらひけらかすだろうな」  そうか、従属者を従えたら税金は自分持ちになる。でも結局それも親が払うだろう。だが収入と従属者とのバランスが合わなかったら天使の介入が入るらしいし、高校出たら自分で頑張らないとってことだよな。  でも遺産を引き継げるなら……いや、その時もかなり税金がかかるってルートさんが言ってたな。 「相続税を払っても生きていけるくらいの金持ちなんだ」 「ふん、どうだか。本物の金持ちは金持ちの行くトコにいってんだろうよ」 「あぁお坊ちゃま校ってやつか、それなら……」  コウセイ君が一瞬哀れみを含んだ目で金持ちを見て直ぐに逸らす。  とにかくアイツに関わるのはよして置こう。フラグじゃなくてね。 「はい皆さん席についてー」  前の扉から入ってきた人が一声かけると、先ほどまで煩かった教室がだんだんと落ち着く。そう言えばシリル君は耳が尖っていたけどエルフなのかね? 髪の色は金髪だったけど、アニメ色の髪の毛見過ぎて落ち着いて見えるからあんまり気にしならなかったけど。  話した感じちょっとぶっきらぼうな話し方だったけれども、ちゃんと受け答えしてくれたし、彼とも友人になれるといいよな。  教科書は明日から授業の初めに順次配布するらしい。  お昼前に終わったホームルーム、これからは自由時間だ。恒例の自己紹介のターンも難なくやり過ごして、ちょっと懐かしみながら過ごした午前。 「キョウガー、学食いかね?」 「いいよ、シリル君は?」 「パス」  彼は自分の荷物を持って教室から出て行った。  二人で向かったレストラン。朝よりも人がいるが中々の広さがあるので座れないなんて事は無い。  コインを入れてオムライスの食券を買って食べる。  コウセイも寮住まいなので同じくコインで買っていたが、腹が満たされないのか更に実費でお代わりをしていた。 「よく食べるよね、細いのに」 「獣人だからな」 「……」  本当に? という目線でじっと見つめると、目を逸らすコウセイ君。素直に大食いだと言えばいいのに、恥ずかしいお年頃なのかもしれない。 「はぁごちそうさま。さて俺は寮に戻るかな」 「以外、遊びに行くかと思ってたけど」 「あー、ほんとは遊びに行きたいんだけどな、今日は親と寮の部屋で待ち合わせしてんだよ。初めての一人暮らしだからな」 「成る程ね、それじゃあ早くいかないと」 「おう、じゃな、また明日」  お互いに手を振って別れる。  さて、それじゃあ俺はカジノに行くかな。『天秤は傾き続ける』のスキルも検証しないとだしね。名前が長いから天秤でいいか。  先ずは近くの服屋でパーカーを買って被る。パーカー被ってる人なんてこの街じゃあ目立たないはず。……だってもっと色々凄い服装の人もいるからな。  スマホでカジノまでの道のりを調べて、一番近くのカジノから二つ離れたカジノへと向かう。別に合法なのだが、なんとなく気後れしてしまうのは、まだ日本の感覚が残っているからだろう。  電車に揺られ、注目を浴びる事も無くカジノへと到着した。  カジノは派手な外装で、目の前にある落ち着いた外装の建物と対比になっている。  目の前の建物は競技遊戯場と書かれており、調べてみるとカジノで行っている物や将棋囲碁麻雀等賭けるのではなく、それぞれ決まったルールで勝負を行うのだとか。基本的に勝ったらポイントが与えられ、そのポイントが最も多い人が優勝らしい。  お金は優勝賞金の他にも順位順に出るらしいが、必ず規定回数戦わないといけないらしいので、時間がある人でないとできない。  しかもちゃんとした大会になると、かなりの時間を拘束されるらしい。  ……高校生の俺にはちと敷居が高いので、カジノへレッツゴー。  カジノの入り口はかなり豪華だが、ソファーに座る人の表情が天と地ほどの差がある。負けた人は沈んでいるし、勝った人は上機嫌だ。  そんな中受付へと進む。 「ようこそいらっしゃいました、カジノは初めてですか?」 「はい」 「では市民カードのご提示をお願いします」  俺はカードを呼び出すように手のひらへ集中する。するとカードがすっと現れた。  これを初めてやった時はかなりびっくりしたもんだ。正直理論は全く分からないが便利だって言うのは分かっているから使うけどさ。  カードを天使の受付さんに渡すと、何かの器械の上に乗せてパソコンを見る。 「ありがとうございました。それでは此方のカードをどうぞ」  俺のカードと、新たにカジノのカードを貰う。このカードも魔力を流すと体内収納が出来るらしい。試してみると本当に出来た。便利だけど何枚でも収納できるのだろうか。 「カジノへはあちらの扉からカードを翳して入ってください。チップへの変換も中の器械で出来る様になっています」 「分かりました、ありがとうございます」  一礼して辞去。  入り口は豪華な電車の改札のようになっており、カードを翳すと扉が開き中へと入れるようになった。  入って直ぐにかなり色々な音が混ざって聞こえてきた。それに圧倒されてしばし硬直するが、直ぐに動き出す。入り口で留まってたら他の人の迷惑だろう。  一応何があってもいいように天秤は使用した。服の内側にネックレスが現れた感触が地肌を通して伝わる。    チップへの交換場所は直ぐに見つかった。   市民カードとカジノカードを別々に所定の位置へとセットして、市民カードからカジノカードへお金をチップに変えて移動させる。  この世界基本的に電子マネーだ。勿論現金もあるけれども、持っている人は少ない。   特にこの市民カードは忘れるという事が無いのでいつでも安心だ。お財布忘れた! お財布落した! なんて悲劇が起らない。  チップに変えてからルールが書かれている場所と、館内案内図を見る。  うーん、先ずはスロットからだろうか。  スロットの場所には、かじりついてやっている人が多数、感情もなく押している人が多数。俺も今から彼らの仲間入りするわけだけどな!

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