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第12話
エロ注意回です。
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事件収束後、キョウガ達は平和に過ごしていたが、ところ変わればその余波はまだ続いていた。
「師範! そんなの無理ですよ!」
「そうじゃろうな、じゃがな、こればっかりはワシの想定が甘かっただけじゃ」
夜も更けた頃、小さな道場で二人の男性が言い争いをしていた。いや、若い方の男が壮年の男性に噛みついていた。
「借りてた金を返さなくてもいいって言う約束だったじゃないですか!」
「そうじゃな。どちらかというと、ワシと関係を持っておきたいという内容じゃった。してその通り今日まで一度たりとも返せと言われた事は無い」
「ならッ!」
「仕方るまい、牢の中に入った奴に証言させたところで、今は全てアレの子共に引き継がれておる。もう少し返済を待って貰えば問題ないのじゃがな、まさか直ぐに返せと言って来るとは思わなんだわ」
金を貸した男の事は多少なりとも知っていた。友人かと問えば否定するだろうが、どのような性格であったかを問われれば応える事が出来る程度の仲。
始まりは壮年の男性が彼の従属者に成る事を断った事からだった。断られた男性はさも当たり前のような顔をしながら、それならばとお金を貸して関係を持ちたいと言って来た。
当初壮年の男性には金が必要だった。ダンジョンの一線を退く決意をした男性は、歳を重ねるにつれて抱いていた自分の道場を持つという夢をみていたのだ。
それには金が必要であり、返さなくてもいいというのだから借りてしまおうと安易に考えていたのだ。勿論何時返済を迫られるか分からないので、当初は借りた分に色を付けて貯蓄していたのだが、全く返せと言ってこない事や逆に返済しようとすると止められることから、いつからかすっぽりと頭から抜け出してしまっていた。
(まさかあ奴が捕まるとはな。危機管理は一級だと思っておったが、歳を経て錆び付いたか。若しくは何かしらの罠に嵌まったか。それはワシには分からんが、返済しろという事実だけが残った。あの時無理にでも返して置けば……夢想しても詮無き事じゃ)
「三日待ってくれるという話じゃ、有難いではないか」
「そんな! 三日では到底どうにかなる金額ではないですよ!」
「そうでも無かろう、ダンジョンならばの」
「ですが! 戻って来られなくなる可能性だってあるのですよ! 師匠の事ですから『茨の道』を行くつもりでしょう! そんなのダメです!」
「すまんのぉ、この道場は一旦おまえさんに預ける」
「話をッ」
言い募ろうとして、殺気が飛ばされる。それだけで青年は動けなくなってしまう。
(一か月もあればどうせあの息子も捕まるじゃろうからな、なんとかそれまで堪えておれよ)
壮年の男性が時間を引き延ばしたかったのは、そんな確信があるからだった。
捕まった男とは違い、安全な道を進もうとする子供。一番上の今年22歳になった青年と壮年の男性は幾度か会った事がある。
その男と話した壮年の感想は、これはだめだろうなという物だった。
簡単に言えば天使達の掲げる世界を全く分かっていない。青年の構想はただただ安定志向、進化も後退も勝負もない、それではダメなのだ。何かに挑み続け、上を見続けなければならない。特に大きな影響力がある人物は。
従属者の数も少ない、所謂一般と言われている人ならばそれでも許されるだろう。しかし大衆の目指すべき者が腑抜けていれば……法を破った瞬間監視している天使に即座に逮捕されるだろう。それに、あの青年は父親と考えの違いで殆ど多勢を指揮した事も無ければ大金を持ったことなどもない。それがいきなりその双方を手に入れればどうなるか。
(少しの油断が命取り、一つの小さな違反が命取り。どう考えても浮かれている奴は直ぐに捕まるじゃろう。だがそれも一月もあればの話じゃ、流石に三日は無理じゃろう)
だからこそ金を稼ぎあわよくば三日で返済し、稼げなかったとしても本気で稼いでいるポーズを見せようとしているのだ。
「では行って来るぞ」
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「――正直頑張って抵抗して行こうと思っていたんだ。だって格好いいだろう? 惚れたのなんだの言ったって半分以上揶揄ってると思ったし、もしかしたら俺に取り入って……なんて思ってたのはきっと俺が昔の事を引きずってたからだったんだ。そこを取り払ってみたらさ、もう最高! 朝も優しく紅茶だしてくれて甲斐甲斐しくお世話してくれるし、いつも護衛にってついて来てくれるし優しいと思わないか? まだ見てないけど更に力は強いというし、包容力もあるし……」
「おーいまだ終わらねぇのか採寸! 俺の耳が腐っちまう前に頼むぜおい!」
「アルガ、それはどうして腐ってしまうんだ?」
「あっ? 水アメ突っ込まれ続けりゃ腐るだろうが」
「仮にも主人なんだけどな」
「うるせぇ、自分から好きにしろって言ったんだろうがよ。んでそこまで言うならよ、結局どこまで行ったんだよ? え?」
「あーそれがさ、あれからなんというか、お互いちょっとタイミングが見つからなくて、朝のチューくらいしかしてないんだよ」
「初心過ぎるだろ! お前だってやったことくらいあんだろう? やり方知らないわけじゃないだろうが!」
「……」
「……」
「……」
「え、ねぇのか」
「……」
仕方ないだろう。だってセフレ作ってやろうとまでは思った事もない。こっちに来てからも浮ついてたからな。性に回す気力も無かったし。
「おう、採寸終わったぜ。って何だこの空気」
「おいおいアンドルよぉ、お前も奥手だなぁ」
「何の話ししてたんだ!」
「それによぉ、コイツした事ねぇらしいぞ。さっさとしねぇと他の誰かに初めて貰われちまうかもなぁダハハハハ!」
「……」
「それじゃさっさと帰りな!」
タクシーの中は気まずい雰囲気が漂っていた。
マンションに戻って来て、俺達はリビングに向かい合って座った。
「……した事、なかったんだな」
「まぁ、うん」
しばしの沈黙が流れて、アンドルがふぅと息を吐く。
「オレはな、前も言ったがどちらかというと求められる方だった。だが俺はそれが鬱陶しかった。どいつもこいつもな。だからキョウガに同じことをしないように、キョウガが求めてくれたら応えるつもりだったんだぜ。だがそれじゃあいけなかったんだな。ちゃんとオレがリードしないとな」
「いや、俺ももっと」
「いやオレの甲斐性無しが悪い! キョウガさえよければ、今晩オレとしてくれ」
「こちらこそ」
勢いに呑まれて変は返答になってしまったが、アンドルは嬉しそうに笑ってくれた。
「それじゃあ今から買い物してくるぜ! キョウガは待っててくれ」
……素早く出て行ってしまった。
俺はスマホを取り出してこの世界での男同士のセックスについて調べ始める。同じなら色々と準備が必要だ。
だが検索して出てきた結果は驚くべきものだった。確かに俺に準備はいらない。なんでも綺麗にする薬があるらしい。本来はダンジョン内での活動制限を減らす為に開発されたものだが、今では性行為にも使える大変便利でお買い得な薬らしい。
連続使用は一週間までなら安全らしく、一週間連続して使った後は三日開ければ再使用可能とのこと。便利なモノがあるな。
時刻は午後五時、先にお風呂でも入っているかな。
お風呂から出ると、ビニール袋をテーブルの上に置き、そわそわしながら座っているアンドルがいた。なんだかおかしくて少し笑ってしまったが、アンドルは気にすることなく買って来たものを見せてくれた。
やはり例の薬とあとはローションと張形なんて物まであった。
「あれゴムは?」
「ゴム?」
え? まぁ妊娠しないからいらないと言えばいらないだろうけど。そう言えば性病とかそのあたりを調べるのを忘れてた。
「性病とか、あと普通は妊娠抑制の為に?」
「へぇ、キョウガの世界にはそんなものがあるのか。というか性病ってなんだ?」
「え? まさかゴムが無い? 性病っていうのは、セックスで移る病気で放置するとかなり危険な」
「そんなものは知らないぜ? ゴムも性病もな」
「えっ、じゃあ男女間もそうだけど、中級市民の男同士になったらどうやって妊娠しないようにしてるんだ?」
「欲しいと思ったら孕むだろう?」
「え?」
「セックスした後三日間、孕みたいという考えが変わらなければ出来るぜ?」
ナニソレ。
見た目同じ人だけれども、どうやら中身は一緒じゃないようだな。成る程、それならばゴムもいらないか。少しでも孕みたくないと思ったら出来ないなら、別に道具を使って出来ないようにする必要もないしな。
「それじゃあ俺も風呂行って来るぜ」
「あぁうん」
ちょっと抜けた返事になってしまった。
足早にお風呂にいったアンドルを見送ってから、俺は薬を手に取る。
箱を開けて中の使用法を等をざっと見てから、カプセルの薬一定を水で飲みこむ。一日二錠朝夕に呑めばいいらしい。効果は三十分後から現れるとの事。
特に体の異常もないままだが、本当に効いているのだろうか?
少し不安になってきたところでアンドルが出てきたので聞いてみたら、「体に違和感あったらヤバいぜ?」との事だったのでこれで大丈夫らしい。
「えっと、それじゃあ俺の部屋行くか? それともキョウガの部屋にするか?」
「じゃあアンドルの部屋に行こうかな」
そう答えると、アンドルがひょいと俺を抱き上げて自室に向かい始めた。流石に驚いたけれども、直ぐにアンドルに抱き着いて運ばれた。
……モフモフしていた。
アンドルの部屋はまだ殺風景だ。ちゃんとお給料的な物もあげないとな、なんてことを思っていると、背中にふんわりとした感覚が当たる。どうやら布団に着陸したようだ。
アンドルはバスローブを脱いで俺の隣に寝転がった。俺もバスローブを脱いでそのあたりに放る。
アンドルの腕が背中に回り、ぐっと引き寄せられる。
しばし見つめ合った後、どちらからともなくキスをしてそれが深い物へと変わっていく。
アンドルの手が俺の体を撫でまわし、俺もアンドルを強く抱きしめる。表面は毛でフカフカしているが、少し強く抱き着くと筋肉が硬い。
いつの間にか押し倒された恰好になっており、俺達は必死になってお互いに舌を絡ませ合った。
「キョウガ」
蕩ける様に甘く名前を呼ばれて、かっと体中が熱くなるような感覚に陥る。
ぼんやりとした頭で、腰が持ち上げられる感覚だけを味わう。
「ッ!」
冷たい物が俺の入り口になった場所へ押し付けられ、そしてぬぷりとアンドルの指が中に入って来た。
「キツイか? 痛かったら直ぐに言えよ」
その状態でしばらく待機していたが、不意に俺の勃起しているものをアンドルが緩く扱き始めた。そして二本目の指が侵入してくる。
アンドルを見ると、アンドルも少し緊張しているような強張った顔をしていた。
「アンドル?」
「い、いま名前を呼ばないでくれ! 我慢が出来なくなるぜ」
どうやら直ぐにでも入れたいのを我慢してちゃんと慣らしてくれているようだ。アンドルの顔から視線を下に写すと、以前見た朝勃ちよりもさらに太く膨張しているモノがひくりと揺れているのが見えた。
あれが中に入るのかと思うと、興奮と不安で体が火照っていく。
気が付いたら指が四本俺の中から抜けて行った。
「これでいいだろ。キョウガ、大丈夫か?」
「大丈夫」
「それじゃあ入れるからな」
熱い物が押し付けられて、ぐっと力が加わり俺の中に侵入してくる。指とは全く違う感覚。熱くて太くて俺の中を押し広げて奥へ奥へ進んでくる。
「ぐぅ……」
「大丈夫か?」
「へい、き」
「……全部入ったぜ」
その声と共に、アンドルが覆いかぶさって来る。興奮した顔で俺を見るアンドルに、思考が全て快楽に埋め尽くされる。
俺もアンドルの首に腕を回して、抱き寄せる様に力を入れる。
「悪い、もうちょっとこのまま慣らそうと思ったんだが、もう無理だ!」
ゆっくりと抜けていき、そして一気に奥を突かれる。
「んあぁあっ」
「ッ、キョウガ、キョウガ」
アツイ吐息が俺に当たり、アンドルが先ほどよりも更に興奮していると分かると、俺も興奮してくる。奥を突かれて、激しく抱かれて、心と体に充足感が満ち溢れていく。
「あっ、い、いくっ」
アンドルにしがみついて、触ってもいないのに射精してしまう。気持ちよくて何も考えられずに、ただ快楽のままに。
アンドルはイッて息が絶え絶えな俺を見て、にやりと笑った。その顔が性的にお俺に刺さる。格好良くてエロイ。少し整ったはずの息がまた荒いで行く。
「んぐぅあ、あっ、んあぁぁああ」
抱きしめられて、更に激しくアンドルが腰を揺らす。
胸も弄られて、腰が砕けるようなじんわりとした気持ちよさが襲う。
「胸感じるんだな、締まるぜ」
言われている意味は理解できても、それを処理できない。だが俺の体は素直にアンドルのモノを離さないようにきつく締める。
「そんなに求められたら……出すぜ! 中に全部!」
「お、おれも、またぁ、いっ、ひぃ、ぐぅう」
腰が跳ねて中に熱い精液が出される。俺もまた吐精してしまう。
「キョウガ、もっとお前を抱きたい」
俺の中に感じる熱いモノは、収まる気配が無い。それどころか軽く俺の奥をとんとんと突いている。
「俺も、もっとしたい」
自分でも蕩けた顔をしている自覚がある。
俺がアンドルを見つめながらそう言うと、アンドルは少しだけ引き攣る様に口角を上げた。
「ッ、ぶない。持ってかれるところだったぜ。おう、じゃあ行くぜ?」
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