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第18話
翌日、朝一で初の顔合わせを行う。
契約所の一室で、彼らと向かい合った。パーティーは男女含む人達で、Aランクガチャで引いたのはすらりとした男性だった。
想定していたよりも俺が若かったからか驚いている人もいたけれでも、それよりも先ず見極めようという視線の方が多かったように思う。一応これでも主人なんだけどな。
道中はずらずら引き連れて歩いていたけれども、俺でさえ偶に見かける光景なので街に溶け込んだ。
何事もなく俺が借りたマンションまでついて、今日から此処に住んでもらう事と、まだ家具等もないので、これから自由に買って来てもらう事を話した。
彼等の従属者カードにお金を入れて、それでスマホを買う事もお願いする。パーティーに入っていないAランクの一人も戦闘系という事で、基本はダンジョンに潜ってもらおう。
最後に色々と注意事項? のような事を話して、武具を整えるならばここに行って欲しいと地図を渡す。勿論アルガの工房だ。アルガには昨日のうちに連絡してある。腕がなると返信が来たので大丈夫だろう。
「それでは解散」
とだけ言って俺はマンションに帰って来た。
まだ午前中だが、なんだかどっと疲れてしまった。
「……キョウガ、俺もダンジョンに行った方がよくないか?」
「あーそう言えば、んーでもいいや。アンドルは俺の護衛な」
「分かったぜ」
「あっ、ま、いッ」
「あんなかわいい事言われたら我慢できないぜ?」
耳元にアンドルの吐息がかかり、じんわりと体がこそばゆいような、だがもっと求めているように感じてしまう。
アンドルのモノが俺を求めるたびに体が重なる音と、粘液とローションが混ざり合う音が耳に届く。一番大きいのは俺の嬌声だ。アンドルに求められるのが嬉しいと、気持ちがいいと、声が出てしまう。
そんな俺を嬉しそうに愛おしそうに見つめてくる目が、更に俺を幸せにしてくれる。
「ふっ、っ」
「あっ、ぐぅ、うっあぁ」
アンドルの動きが早くなる。激しく突かれてもう俺の体が自分の物でないような、どうにかなってしまっている。
「いくぞッ」
「ぁっ、くぅぁぁあっ」
中に熱いモノが放出されて、ぱたりと俺の上にアンドルが覆いかぶさって来る。
「はぁ、キョウガ、大好きだぜ」
「俺も、アンドル。ん」
行為が終わった後も、二人でお互いを感じる様にキスや愛撫でを繰り返す。
漸く落ち着いて来て、二人でベッドから降りてシャワーに入る。
「複雑な気分だぜ」
「何が?」
「キョウガを独り占めにしてる嬉しさと罪悪感がな……」
「罪悪感?」
独り占めされてというのは分かるが、一体何に罪悪感があるというのか。
「あぁキョウガはこっちのそう言う常識はないんだったな。簡単に言えば、強い奴は多くを侍らせてこそって事だぜ。俺はキョウガの強さを知っている、ソイツも含めて俺はお前が好きだ。だがその強さが俺一人に収まっているのが、どうにも納得がいかないし、独り占めしているのが悪い事のように感じてしまう。此処に生きる奴等はおんなじことを思うと思うぜ。今回独り占めにならなくなる寂しさと、新たに侍らすヤツが出来て安堵もしたんだがな」
「それが、所謂多勢の思考って事か。うーん、俺がいたところとは違うからなんとも言えないな。だが好きになった人は好きな人がいようと囲い込めって事?」
「そう言う事だぜ」
「うーん、それこそちょっと罪悪感がな。だがまぁそういう物なら郷に入っては郷に従え、もしいい人が現れたら一緒に住むよ、アンドルみたいに」
「キョウガはまたそうやってッ!」
「んっ」
「おす、あれ少し元気ない? そりゃそうだよな。なんたってもうすぐテストだもんな」
「おはよう。まぁテストとは関係ないんだけど、色々とな。でもそういやテストがあるんだった」
「そうなんだよ! テスト! もうあと2週間もすればテスト! 俺は勉強はあんまりなんだよ」
「んー、俺もテスト勉強始めるか」
「おは、テストの話か?」
「おす、あと2週間で魔のテストだよ。シリルはなんかやってるか?」
「いや? 授業は受けてる」
「おはようシリル。もしかしてシリルって結構勉強できる?」
「テストで困った事は無い」
「マジか……羨ましいなぁ。シリル、勉強教えてくれ! そしたらお勧めの食べ放題に案内するから」
「な、なんだよ急に。別にいいけど」
「じゃあ俺もお邪魔しようかな」
折角なら3人で勉強会ってのも乙だよな。
それにしてもシリル、大学行きたいって言ってるだけあって記憶力とかもいいんだな。俺が学校に通ってる時も、授業をちゃんと受けてるからテスト勉強はしないって人いたしな。それでいい点数取るからな、集中力と理解力が高いんだろうな。あと要領か。俺には真似できない。少しでもつまらなく感じると思考が取っ散らかるからなぁ。
「お邪魔しますー」
「おう」
放課後、3人でコウセイの部屋へとやって来た。
コウセイの部屋は俺のいた寮とは別だけれども、造りは同じだった。やはり3人で入ると少し狭く感じてしまう。
コウセイの部屋は色々な物が雑多に積まれており、机は炬燵をそのまま布団を取って流用しているようだ。
買って来たお菓子や飲み物を広げながら、コウセイの苦手だという教科から始める。
教えているのはシリルだが、俺も分かる程度で補佐をしている。シリルはなんというか割と淡々と教えているので、要点は分かりやすい。だが偶に過程をすっとばしているときがあるので、そこを俺がフォローしている。
勿論俺の勉強にもなるので有難い。
マンションに帰って来ると同時に、俺のスマホが震えた。電話のようで、アルガからだった。
「もしもし」
『おう、俺だ。例の新入り達全員分発注受けたぜ。これの費用はどうするよ』
「うーん来月の頭に払うだと足りないか?」
『いや、足りる。なら来月の頭に纏めて請求な』
「それでよろしく」
『おう! 例の新武器開発も良い感じで進んでるからよ、明日あたり一回アンドルをこっちへ回してくれや』
「了解、その時幾らか持って行って貰うか」
『そいつぁ助かる、それじゃあ待ってるぞー』
彼等もちゃんと動いてくれているようで安心した。今後の休みにもう一回会ってスマホの連絡先をちゃんと抑えておかないとな。
そう言えば納税とテストは被ってるのか。うーんテスト終わったら納税でいいよな。
取り合えずテストだテスト!
それから毎日一度コウセイの家によってテスト勉強に励んだ。
シリルは自分の事もしたいからと3日に一度くらいで付き合ってくれた。確かに彼は本来ならテスト勉強なんてしなくてもいいのだものな。彼にとっては完全に俺達に付き合ってくれている時間だ。食べ放題の傲りはコウセイと割り勘だな。
二人の時は、コウセイも道場の話をポツポツしてくれる。
やっぱりあの姿はあんまり知られたくないようで、シリルが居るときは言わないようにしているようだ。
まぁ自我が無くなって暴走するなんて知ったら怖がる人もいるだろうしな。
そんなこんなでテストが始まった。
クラス内は1週間前から浮足立ったような懐かしい緊張感が漂っていた。やはりどの世界でもテストはこう言った雰囲気になるな。
因みに午後の選択授業のテストは既に終わっている。俺の場合は先生に盾の強度と継続時間を最初から比べて上がった事で合格を貰った。他の人は難航している所もあったようだ。
だがコウセイもシリルも問題なかったようだ。シリルは研究のレポートを書いて終わりだったらしい。コウセイは勿論バトルだな。
テストは正直そこまで難しくは無かった。高校一年生の初めてのテストだ、そこまで高い難易度ではないだろう。応用というか、よく聞いていないと分からない問題が幾つか出たが、そのくらいだった。他はちゃんと勉強して忘れていなければ解ける問題だ。
テストが終わり、コウセイは寝かせてくれと帰って行った。どうやら徹夜したらしい。
俺も昔徹夜しようと思ったけど、結局最後まで起き続けられた試しが無かった。だから徹夜はしないようになったが、コウセイは体力もありそうだし、あの様子だと貫徹したのか。
シリルもふらりと帰っていったので、アンドルと待ち合わせてベイトンと約束していたレストランに入る。
細身の緑の髪を探すと、直ぐに見つけた。
「お待たせ」
「いや、待ってないです」
彼はAランクが含まれているガチャで出た人だ。そしてマンションのリーダーのような役割をしてもらっている。今はどちらのパーティーからリーダーを出しても禍根が残る可能性があるので、両者ともに関係ない彼にやってもらっている。
今日はダンジョン内で稼いだ金額の受け渡しだ。一応御主人カードを読み取れば従属者がいくら稼いだか視れるので金額は分かっている。だが税金を払う前は何かあると怖いので一応俺のカードに入れて置く事にして、このまま納税して、来月の分も含めて彼に渡し、彼から皆に配分して貰う予定だ。
目の前でまた大金が消えた。
だが今回は前回よりも残った……がやはりかなり持っていかれた。
その場でベイトンに来月分を渡す。
「それじゃあ俺は帰ります」
一礼して去って行くベイトン。全然心を開いてくれないと思っていたが、どうやらあれが彼の通常運営らしい。まぁそれでも開いてるとは言えないだろう。でもまぁこれくらいの付き合いでいいのかなと思っている俺がいる。
「さて、じゃあ帰ろうかアンドル」
「おう」
「あっ、でも今日はテスト終わったからお疲れケーキでも買っていくか」
「今日までだったか、お疲れキョウガ」
「ありがとう」
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