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第24話

「此処が天空会場」  辺りは白を基調とした幻想的な雰囲気の場所だった。  本当にまるで雲の上にいるような、そんな錯覚さえ覚える。  三人で端まで歩いて行くとダンジョンのように壁が存在し、そこから奥へは行けなくなっていた。奥には何があるわけでもないが、途切れている場所から下を覗けるのではという好奇心からの行動だ。  その後、選手の控室へと案内され、控室というか豪華な客室に座って待つことになった。  しばらくするとイッケイさんもやって来たので、最後の確認を行う。 「よし、それじゃあ行くか!」  アナウンスと共に会場へと乗り込む。  会場は広々としたカジノ場だが、普通のカジノ場とは違い必要な台数しかない事で更に会場が広く見えた。  しかも会場の上には観客と思しき人達がびっしりと詰めていて圧倒される。  視線の端に何かが横切ったので追ってみると、どうやらカメラのようだ。中央の天上から垂れ下がるディスプレイにドローンのようなカメラが撮った映像が流れている。  全ての選手が揃い天空杯の幕が上がった。  選手は全部で十二組。ポーカーやブラックジャック等は四人三組に分かれて五回の勝負となる。五回終了したらまた組み分け、全三回戦行う。組み方は最後以外はランダム、最後は二回の勝ち数が高い順となる。  開会式が終了し、最初の競技が開始される。最初はブラックジャックなので俺の出番だ。  全員が席に着くと一人一人司会の男性が紹介していく。  俺の紹介は、今月中級入りした期待の新人はどんな戦いをしてくれるのだろうか的な紹介でさらっと終った。だがやはり去年の優勝者や準優勝者の紹介には気合の入り方が違った。  一応敵になるわけなので紹介は聞いていたけれども……結局はやってみないと分からないよな。  さてさて、漸く開始だ!  天秤はちゃんと発動している。イッケイさんの時もブラックジャックが来なかったし、今回はどうなる事か……と思ったらブラックジャックだった。  ……あれ? 同卓には準優勝さんも座ってるし、もっと苦戦すると思ったのだけれども。  結局五回ともブラックジャックで締めた。組ずつで順番に戦うので、他の選手は見になっている、つまり司会は付きっ切りになっている。なので大番狂わせだなんだと騒いでいるけど……流石天秤凶悪。  次戦も同じくさらっと勝ったけれども、俺の心情と視界のヒートアップ具合の乖離が激しい。  三回戦目、今年で三連覇がかかっているらしい方と初同卓。俺を睨むのは止めて欲しい。  手札は合計19だった。おぉ、やっぱり天秤に食い込んでくる人もいるよな。もう一枚要求して21になる。相手も21だった。イッケイさんよりも強いみたいだ。  その後も二人で21をひき合うがブラックジャックは無い。  俺も熱くなってきて、最後の五回目はブラックジャック来い! とペンダントを握りながら念じたらブラックジャックが来てくれた!  さっきよりも興奮しながら手配を開ける、ブラックジャックは俺一人のようでこの回は俺がトップだ!   巨大なスクリーンには、順位に応じたポイントが加算される。勿論最後の競技でポイント何倍! というシステムは無い。ぶっちぎればぶっちぎれる。  イッケイさんの元に戻ると、よくやったと背中を叩かれるが、腕が細いしそんなに力もないのか全然痛くなかった。……本人は思いっきり叩いているみたいだけど。  次戦スタンダードポーカー、イッケイさんの出番だ。  ポーカーは強いと豪語していただけあって、悠々と上位卓に座り最後は前回優勝グループの人と接戦しながら勝ってくれた!  次はバカラなのでイッケイさんが帰ってくることはないけれども、手を振ってくれたので振り返す。  バカラ戦では何とか上位卓に食い込んだイッケイさんだったけれども、最後は前回の優勝と準優勝のグループが1位2位を奪い3位だった。  帰ってきたイッケイさんが少ししょんぼりしていたけれども、此処からは全部トップしかとらないから大丈夫ですよ! と励ましておいた。  因みに、此処までカードは強いイッケイさんだけど、スロットとルーレットは毎回12位とか11位らしい。成る程それは6位にもなってしまうか。  俺がスロットに登場すると司会も沸き立つ。どうやらさっき見せたブラックジャックが印象的だったようだ。  スロットは規定回数しか回せられないようになっており、それぞれれ五枚のメダルを貰う。それを一番増やせた人物の勝ちである。因みに回数は20回となるが、最短5回で終わってしまう。  だが俺にそんな事はない! 単独で挑むならまだしも、今はイッケイさんの勝ちたいという気持ちを乗せられている。ずるだろうとチートだろうとこのルールに抵触なんてするはずもない!  俺はいつもよりも気合をいれてスロットに挑む。スロットはいつも通り2種類用意されており好きな方でプレイできるらしい。勿論俺は運の方だ。  気合を入れたからか77777が連続で出る。その異様な光景に司会の人も驚きを通り越して「いやいやいやえぇ?」とマイクに乗せてしまっていた。まぁやっぱり消えない罪悪感はあるけれども、今は出来るだけ心から追い出して勝つことに集中しよう。  その後係の天使さんにメダルが回収され、合計メダル枚数がディスプレイに映りながら発表される。下から発表されて行き、最後の二人がドラムロール終了と共に表示される。  一番上の名前は自分だった。  うん、やっぱり凶悪だけど今は喜ぼう!  此処で一度休憩となり客室のような控室に戻る。  イッケイさんはかなり興奮しており、例年だと此処で大きくポイントを落として最後まで結局と言う事らしい。  軽食の後試合再開。  再開後最初の競技はテキサスホールデムポーカー。イッケイさんの最後の競技だ。  此処でもイッケイさんが奮闘してしかし2位だった。でもポイント状況的にはなんの問題もない。次に俺が勝てば、優勝だ。  イッケイさんに後は頼むと送り出されて。  最後の競技ルーレットに挑む。  ルーレットは、なんと自分で投げ入れる事も出来るらしい。勿論ディーラーに入れて貰う事も出来る。しかしスキルがあれば狙った場所に入れる事も可能だ。  ルールは、先ず十二回行い一人一回投げ入れるチャンスが与えられる。順番は今現在の順位順で、投げ入れる者が一番最初に賭ける事が出来る。それ以降は順位の下の者から賭けていく。  なので俺の順番以外は俺が最後の方になるという事だ。  だが俺が賭けた場所に入る事もしばしば、たぶん投げ入れるスキルを俺の運が上回ったのだろう。  一周してチップの合計が多い上位六名による二週目、此処でも俺以外の順番で俺に入る事もある。それを司会が奴は化け物か的な事を言っていたので失敬なと思いながらも、まぁ普通はないよなとディーラーの方に投げ入れを頼む。  三週目、今度は上位三名の戦い。  そして最終回。残ったのは前回優勝グループだ、やはり強い。ルーレットでも此処までノーミス。最後もミスが無かった。だがそれは俺も同じ。どちらかが失敗するまでではなく、これまでルーレットで稼いだチップ数で争われるため、最後に俺が外さずきっちりと押さえて1位を確定させた。  その瞬間脱兎のごとく走り寄って来たイッケイさんが俺に抱き着いてくる。  俺も嬉しくて抱きつき返し、興奮しながら壇上に上がる。  その後はかなり大変だった。  インタビューが多数にセレモニーの参加、結局帰ったのは翌朝になってからだった。

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