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第4話

-薮蛇苺の伏龍- 「やつは、来ないだろうの」  ぐずぐずに鼻を鳴らす僕に、あの変な人が話しかけてきた。いつもより声が低い。庭園の四阿は、僕の逃げ場になっていた。別に誰かを待っていたわけじゃない。 「またなんか、言われたんか」  僕は答えなかった。この人に教えることなんて何もない。 「そうか」  何も言ってないのに、この人は勝手に納得した。 「学園の華も、そう華々しくはないか」 「勝手に選ばれた、だけですから…」  僕は宇佐木さんに叩かれた頬を摩る。確かに僕がいけなかった。あそこで飛び出すべきじゃなかった。でも。コタローサンとかいう変な人に摩る手を取られて、顔を覗き込まれる。 「殴られたんか」 「…殴られてません」  殴るとはまた違った。嘘じゃないつもりだ。変な人は怖い顔をしていて、似合わなかった。 「どうして僕に構うんです」 「ボキは少年に、構ってるか」 「構ってますよ。構いまくりじゃないですか」  自覚ないのかな、この人。 「お前さんの話を聞いたんだの」 「どうせ碌でもない悪口でしょう」 「正解」  変な人は遠慮もない。 「それで?僕がいかに小生意気で育ちの悪い貧民の高等部入りか見に来たと?」 「それも正解」  本当に遠慮がない。 「実際単身で絡みにきたのはあなただけです。みんな複数人で来るから…」 「少年は、えらいのぅ」  ぐしぐしと髪を掻き乱される。変な人は欠伸をして背を向けた。 「どうして少年に構うかと、訊いたな」 「はい」 「昔の友人と似とる。顔はそうでもないがの」  変な人は中途半端に振り向きそう言って、また欠伸の続きをして庭園を去っていく。縛った髪とか後ろ姿を見送る形になっていた。不思議な人だと思う。あれは…あれは、慰めていたのか。分かりづらい。溜息を吐く。  やめたいな、プリザード。やめられるなら、今すぐやめる。いや、もう少し、もう少しとなんだかんだ続けてしまいそうだ。僕はそういうところがある。戻りたくないな。空気が変だから。みんな落ち着かない。宇佐木さんが丑沢先輩に喧嘩売ったから?僕が仲裁しようとしたから?だってあそこで誰かが止めなきゃ、乱闘になってたかも知れないし…乱闘にさせておけばよかったの?さすがに乱闘は…  コタローサンが世話しているオレンジと白のセパレートみたいな野良猫がやってくる。僕は食べる物、何も持ってないのに。 「…こんにちは」  疲れた様子で鈴峰先輩は四阿へやって来た。まるでランニングでもしてきたかのように両腕を後ろにつき、息をする。眼鏡が直っている。 「こんにちは、鈴峰先輩。眼鏡直ったんですね」 「あ~、巽くん見てた?恥ずかしいな。これ替えの。少し度が落ちてるからあまり遠くは見えないんだ」  見てたんだ?え?見てたどころじゃないんだけどな。 「鈴峰先輩、僕のこと、知らない?」 「あれ…、あ、そうか、巽くんはプリンアラモードなんだよね」  鈴峰先輩は表情を強張らせる。プリンアラモード?とは。 「ごめん、用事思い出して…」 「待ってください!」  鈴峰先輩の手を握ってしまう。 「好きです」  鈴峰先輩は立ち止まった。行かないで。言葉と気持ちが逆転する。 「好きです。他のプリザードが何を言っても、僕は」 「うん…」  鈴峰先輩は去って行ってしまう。プリザードの総巡回の前に立ちはだかったこと、悔いているのかな。もうここには来てくれないかも知れないな。 「先輩がプリザードが怖いなら、僕はプリザード、辞めたって…」  辞められなかったじゃないか。野良猫が寄ってくる。頭を撫でた。チャイムが鳴る。行かない。プリザードの優等生に、もう収まってなくていい。 -Ave MariYa-  スミちゃんを窓から見下ろす。嵐丸を追えば、もっと早くスミちゃんに会えていたなんて。身体がカッとした。怒りだ。俺はスミちゃんを追う。庭園を出て行った方角的に体育館裏かゴミ捨て場前の軒下。運動部の1年が部室から溢れて雨の日に着替えに使ってる。屋内プールができたせいで使われなくなった屋外プールの壁に寄りかかって、蹲る人。スミちゃんだ。そもそもこの時間にこの辺り人来ないし。 「スミちゃん。やっと見つけた」  膝を抱いている。スミちゃんは俺を見上げた。見知った顔より少し引き締まっても昔の面影は残っている。 「なんで泣いてるの」  スミちゃんは泣いていた。綺麗だと思った。スミちゃんは俺を見ても何も言わない。どうして。 「スミちゃん」  スミちゃんはまた顔を埋めてしまう。俺はスミちゃんの腕を掴んで立ち上がらせる。抗議の声も無視して口付けた。思い出してよ、ファーストキスの相手なんだから。 「なっ…あっ、ふ…ん…」  壁に押し付けて腕の自由を奪った。眼鏡が邪魔。替えあったんだ。隙だらけの唇に舌を挿し込んだ。逃げる舌を巻き込む。くちゅ…と音がする。 「…っ、はぁっ…んンっ」  スミちゃんは抵抗する。その抵抗が許せない。無理矢理手を繋いで指を絡める。会えると思ってなかった。でも会えたら、スミちゃんは俺のこと、どうでもいいみたいだった。そんなの許されると思ってる? 「はぁっ…ぁ…、ふ…」  唇を放すと唾液が繋がって、ぷつりと切れた。スミちゃんは肩で息をする。 「来て」  スミちゃんを引っ張る。よろけているのも構わず、使われない生徒会館の薄暗い中に連れ込んだ。トイレがセンサーで明るくなった。黒い壁で出来ているからそれでも暗く感じる。個室に放り込んで、出口を阻む。 「…君は…その、プリ…」 「プリザードの、宇佐木鞠也。覚えてる?あんたのファーストキスの相手で、あんたが初恋のしがない男」  顎を掴み、上を向かせたままにする。いつの間にからスミちゃんより背が高くなっていた。 「…その、名前は覚えてるんだけど…」  目が泳いでいた。名前だけは覚えられてることに喜んでいいの?俺には結構色濃い思い出なのに? 「俺のこと、忘れちゃったんだ?残念…」  スミちゃんの肩を掴む。俺はまともに結んじゃいないネクタイをポケットから出して、スミちゃんに見せる。スミちゃんはそれを見るだけ。よかったと思う。こういうこと、慣れてないの? 「手、出して?」  戸惑いながら両手を差し出したスミちゃんに心配になる。天然ボケなところは変わらないな。俺は両手をネクタイで縛り上げた。 「え?」 「この流れでさ、縛られるって思わない?」  スミちゃんは俺を見た。いい気味だよ、俺のこと忘れちゃったんだから。 「オレが、プリンアラモードの邪魔したから?」  プリンアラモード?え?訊き返す前に不安げに濡れた瞳が泳ぐ。 「あんな奴等関係ない。スミちゃんが俺のコト忘れるからだろ」  ネクタイを解いて、ブレザーのボタンを外す。シャツのボタンも外すと痩せた腹が出てくる。手の甲で撫でた。縛られた腕を振られ、俺は避けてしまった。その隙を突いて逃げられる。 「スミちゃん…!」 -Tigar and CDD- 「暇そうね」 「うるさいわい」  テニスコートを眺めながら武道館の裏入口の階段に座っていると、あの女が声を掛けてきた。暇なのはどっちか。 「あのカレシと何かあったんだ?」 「何もないわ。あったとしたら誰のせいだと思うておる?」  芽依は知らんと肩を竦める。気楽でいいの。 「今日は何もしないの?」 「息しとる」  せっかく人目につかないところを探したというにこの女がいてはどうにもならない。立ち上がって次の宛てを探す。 「どこ行くの?」 「お前さんのいないとこだの」 「ダメ」 「お前さんはプリンアラモードの側(がわ)だの。じゃあボキの敵なんだの」  追おうとしてくる芽依に手を振る。ついて来られたら敵わん。他に静かで1人になれるところ。生徒会館の屋根か、植物園か、それか屋内プールの裏は…人おるな。水着が見えるとか見えないとかで。仕方なく体育準備室裏の軒下にした。部員の多いサッカー部とかラクロス部とかがよく着替えている。とにかく人がいないところ…と思ったところで前方から走ってきた人とぶつかった。走り方が個性的で、なんだか服装がとにかく乱れていたのは分かった。ボキの胸に飛び込み、戸惑う。 「なんぞ」 「……、虎太郎さん…?」  げぇ、と思った。この声は、今最も会いたくない人物の声。ボキもだが、とにかくこやつは裏校舎の北側で行動する。日当たりが悪く、人通りも少ない北側で。それを忘れていた。だがそんなことよりも、震えている。声が。身体が。 「何…して…」  ボキの胸から剥がれていくそやつの腕は縛られていた。ボキは息を飲む。ネクタイが解け、ブレザーとシャツはボタンが外されて肌が晒されている。涙に濡れた瞳がもう一度ボキの胸に飛び込んでくる。 「虎太郎さん…」 「え、ちょ、どうなってるんですの」  いじめられているのか。だが本人に直接そんなこと聞けるはずもなく。シャツのボタンを閉め、ブレザーのボタンも留める。ネクタイの結び方は自分からでないとよく分からない。背を抱いて、再び武道館裏口に向かう。芽依はどうせいない。 「どうなってんですの」  ボキは装うことを忘れた。 「…プリンアラモードに、実は幼馴染の子がいて…色々あって、少し負い目があって…」  階段に座って、ボキは縛られたネクタイを解きにかかる。2年のプリンアラモードといえば、あの黒髪美形だ。少しシベリアンハスキーっぽい。 「そいつに縛られたん?」  トモダチは頷く。 「ほうか…ほうか…」  項垂れるトモダチを見ていると、ふと顔が上げられた。泣き腫らした目がボキを見つめ、それから接吻された。目を見開いて、瞬きを忘れた。触れて離れていく。 「虎太郎さん…好き…」  え? 「虎太郎さんのことが、」  また近付いてきた唇に身を引いてしまった。 「な、に言って…んです?」  唇を拒んだからか、トモダチは顔を伏せた。ボキもよく話が分かっていない。どういうことだ?あの少年はトモダチが好きで、実は幼馴染だったプリンアラモードのやさぐれもトモダチは好きで、そのトモダチは、ボキが好き。一度に入ってきた相関図に目が回る。どうなっとる。 「キスされて…どうしても、虎太郎さんとキスしたかった」  歯がカチカチ鳴る。かなり想いが深い。友達として好き、人間的に好き、そういうことじゃないのん? 「あ、い、い、正気か」 「正気じゃなくてもいい…」  ボキはどうしたらいいのか分からない。トモダチのことは、嫌いじゃない。嫌いじゃない。ただ怖い。怖い。逃げたい。 「そ、うか。あり…がとう」  ボキは頭が真っ白になって気の利いたことは言えなかった。ボキはトモダチに好かれるような人間でないことを伝えねば、分からせねばならない。だが怖い。口にすることが。忘れていたはず…否、思い出さないようにしていたはず。 「いや、もう、会わないでおかんか。会わないで、おこう」  嫌でも脳裏に過ってしまう。どういう顔を向けていいか分からんでいる。好意を打ち明けてきた人にする態度でないことは百も承知だった。遺書を読んだ日を思い出してしまう。やめろやめろと思って、記憶は細部を辿ろうとする。 「虎太郎さん…」 「すまんが、すまん…」  2年のネクタイを手に持ってきてしまった。あの少年に渡せばいいか。投げやりになる。 「いた」  芽依に呼ばれ、頭が一気に冷える。芽依は、中学受験の時に寝込んで、高等部入りだ。それまでは、ボキと同じ中学校にいた。弟がプリンアラモードだから、ほぼ同じ容姿をした芽依も高等部入りを思わせない。 「なん」 「あっら?不機嫌ね」 「しっし。弟んとこ行っとれ」  芽依は弟と同じように見透かした目をするから苦手じゃ。 「あなたのカレシがヤバそうだから伝えにきたのに?」 「それならもう大丈夫だの。…カレシでないわ!」  調子を乱される。どういうつもりか理解しかねるがボキのこの感じが"刺さる"らしい。 「はぁ~、厄介ね。鞠也くんだもん。あれだけモテて、お気に入りは彼か。日陰で生きたいコタちゃんには皮肉なものね」 「…知らん。関係ない。そうだ、これをその宇佐木何某(なにがし)に返しておいてくれんかの」  芽依の阿呆は受け取ろうともせずボキを冷やかした目で見おった。 「自分で返しなさい!それからカレシのこともケリつけたら」 「カレシでないと言うておる」 「なんで」 「お前さんと話しておると疲れるわい。弟もか」 「縫斗くん関係無し」 「綺麗なもんは汚れを目立たせる。ほら、ボキ、手、汚れてるしの」 「…まぁ、踏み込めない事情ってやつね」  芽依は知っている。ボキが不本意に、人を殺したこと。くだらないと言いたそうな蔑んだ大きな目に時折救われた気分になる。違う方向へ歩いていく。高等部入りでありながらプリザードに弟を持ち日向を生きる芽依。いいんでないか。だがボキは人目に触れたくない。人と関わりたくない。鈴峰澄晴と出会ってしまったことは間違いだったか。 -伊我利比女命(いがりひめのみこと)-  多分来ないなと思った嵐丸ちゃんを探しに行くつもりで、不機嫌MAXの宇佐木ちゃんににあって、ああこれは…なんて思ってたらとんだ拾いもの。プリザードの邪魔をした不届者で、芽依さんからおもちゃを奪った無礼者。近くの水泳部の部室に引っ張り込んだ。何がなんだか分からないって顔でひどく怯えた目を向けてくる。つまらなそうな男だなぁ。泣いた跡がある。 「あ、の…」  ボクは俯こうとした顔を乱暴に掴んで親指を頬に刺す。呼んでおいて目を逸らすなんてね。放すと、立っていられないみたいで蹲ってしまった。 「何?プリザードと2人きりなんだからもうちょっと喜んでよ」  威圧的に壁でも蹴ってみる?そんな下品なこと出来ないな。 「ねぇ、君とこの前キスしてた人」  盗っ人くんはボクを見上げた。信じられないって顔してる。かわいいカオも出来るんだな。 「あれ、ボクの大事な姉のおもちゃだから、勝手に奪らないでくれる?」 「こ、虎太郎さんは、おもちゃじゃ、ない…」  ふぅん?なかなかいたぶり甲斐ありそうだな。ボクに刃向かうんだ。バカなのかな。 「ふぅん。じゃあ、ボクの大事な姉の好い人だから近寄って誑かさないでくれる?」  盗っ人くんはボクを濡れた目で睨む。これはこれで面白いのでは? 「たぶら…かす…」 「そうだよね?姉を知ってるあの人が、君みたいなつまらない人に誑かされるはすがないか…?と、すれば…上手いの?」 「え?」  ま、地味だけどそこそこかわいいしいいんでないの。立ち上がらせて、ブレザーのボタンを外し、垂れ下がったネクタイを肩に掛ける。 「な、に…」 「優しく抱いてもらってた?許せないな。ボクはね、ボクとボクの姉が唾つけたものを横から持っていかれるのがとても気に入らないんだよ」 「な、…やめ…っ」  盗っ人くんはボクの手を掴もうとする。気安いな。頬を叩けばショックだったみたいで動かなくなってしまった。晒された胸を掌や手の甲で撫でた後、引っ掛かる小さな実を指で押したり、撫でてみたりした。芽依さんのお人形盗ったくらいの男喰いの彼にはボクの技量はどう映る?抜き打ち検査みたい。 「、ふ…」  胸の粒を指の腹で捏ねていると盗っ人くんは身を縮ませて浅く息を漏らす。そのまま両手で2点を刺激する。女性みたいに上手くいくのかな。不安はあるが見せはしない。 「あ、…あっ…」  もどかしそうで、手がまたボクの腕に触れようとして下ろされる。ビンタそんな痛かったかな。下ろされた手は盗っ人くんの口に持っていかれた。まぁ、声なんてどうでもいいけど。 「…んンっ」  芯を持ってきて、小さなそこを揉んでいると盗っ人くんの身体がバランスを崩す。 「勃起しちゃった?」  盗っ人くんの股間を掴みながら支える。身を固くして、肩が触れ合う。中途半端に固い感触が面白い。他人の触るのは初めてで、布越しに揉みしだく。段々とスラックスが形を変えていく。男子ってこんな面白いもの股にぶら下げていたのかと驚いてしまうよ。そんなの品性欠くからやるとしたらこの盗っ人くんだけだ。人のおもちゃ取るんだからいいでしょ。これから暫くは盗っ人の股間で遊ぼう。 「や…めて…ぁっ、だめ、やだ…っ」  ボクの手を押さえて、必死に剥がそうとする。面白いな。でもどうするの? 「ねぇ、ここでマスターベーションして」  盗っ人くんの抵抗に構わずボクはスラックスの上から形を辿る。盗っ人くんは首を振る。ボクはベルトのバックルを外し、ファスナーも下ろさせた。抵抗するから力づくになって、水泳部の部室の塩素の匂いで頭が冷えるけれど、身体が熱くなる。スラックスの上からトランクスも掴んで引き下げる。跳ねて出てくる陰茎。面白いな。女の子とは全然勝手が違う。幼児みたいに盗っ人の陰茎で遊ぶ。 「あ、…はぁ…んん…やめ…」 「分かった」  ボクはあっさりやめた。浅い呼吸をしながら陰茎がぴくぴく跳ねる。水から上げられた魚みたいだ。 「…は、ぁ…ッ」 「マスターベーションして?するまでこのままだよ?」  先端だけを指で押したり撫で回したりして遊ぶ。このまま射精したら面白いな。 「だ…め…っ、や…」  手が震えている。股間に伸びようとして、結局そこに触れる前に力無く腿の横に落ちていく。 「なんで?自分で擦ったら気持ちいいのに」  ボクは屈んでじっと桃色に腫れた先端部を凝視した。 「でき…ない……」 「ふぅん?」  盗っ人くんの小さな口に指を入れる。齧られてしまうかな?ピアノの先生に怒られるな。少しさらさらした唾液が指に絡みついて、ボクは盗っ人くんの身体を回す。男同士にセックスという概念があるのは知っているけど、ただ身体を愛し合うだけではないよね?そんなのセックスではないよ。それなら繋がる部分はひとつしかないわけで。鶏姦だね。抵抗される前に唾液がついた指を臀部の中心へ突き入れる。 「はぁ…っ!ぁうぅ…ッ」  芽依さんのお人形と遊ぶ時はどっちなの?キスしてた感じだと、この盗っ人が抱かれる側っぽかったけど? 「あっ…ああ、ぅう、やぁ…」  きつい。人差し指と中指との2本を入れたつもりが人差し指は弾かれてしまった。 「ぁ…ぁう、ぅぐ…くっ…」  第二関節直前まで入って、強く締められる。中は湿っていて柔らかかった。 「ぬ、いて…ぁっ、…抜い…て…あ、っあ、っあぁ、」  浅い呼吸を繰り返し、壁に頭をつけて掠れた声を上げた。 「どんな感じ?気持ちいい?」 「きも、ち悪い……苦し…ぃ」 「ふぅん」  唯一入った中指で周りの感触を確かめながらひくひく動く隙を見て第二関節も埋め込んでいく。 「ぁぁあァ!やだぁ…ぁっ、くぅ…ッ」 「ほら、頑張って?おとなしくマスターベーションしてれば良かったのに」  盗っ人の肩に顎を乗せ、指を回しながら根元まで入れることを試みる。 「ぁ…ぃや、ァ、あぅ…」 「やめてほしい?」  浅い呼吸をしながらこくこく頷く。 「じゃあ、マスターベーションする?」  頭を振る。ボクは粘膜を押す。 「あぅ!あ、あ、ぁあ!や、る…、やる、から…っ、ぁ」 「うん、そうだね、分かった。やって?」  勢いよく盗っ人くんの体内から指を抜く。身体を正面に回して乱暴に壁に押さえた。躊躇いがちに大分萎えてしまった陰茎に手を伸ばす。手を掛けただけで動こうとしない。良くない傾向だ。 「やっぱりお尻の中いじられたかった?」  腸液で濡れた指を見せる。盗っ人くんはゆるゆると陰茎を握り込んだ手を動かし始める。 「っ…、ふ…ぅう…」 「うんうん、頑張って?プリザードの前でおちんちん擦って?」  少しだけ手伝う気になって、自分のを握っている手の上からボクの手を重ねて動かす。 「あっ、ぁっ、ンっんぁ…」  ボクが手を離したことに気付かず、赤い顔で陰茎を扱く。浅ましくて情けない姿。あのお人形には芽依さんよりこっちの方が似合ってるけど、芽依さんがあのお人形がいいっていうなら仕方ないよ。 「ぁっ、ああ、んぅ、んん…」  もう達しそうでボクは先端を塞ぐ。 「ねぇ、ボクはプリザードの前でイッちゃう泥棒猫ですって言って」  もう性欲にまみれた目がボクを切なく見つめた。許さないよ。 「そん…なっ…ぁ、もぉ…」 「言える?言えない?つらいなぁ、このままは」  諦めが浮かんで、盗っ人くんの口が動く。いいなその顔。 「オレは…っ、プリン…モード…前で、イッちゃう泥棒猫で…す…」  何か違ったけど良しとした。盗っ人くんは精液を出しながら気持ち良さそうに鳴いた。

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