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第10話 三回目

 三回目のセックスも、三國の部屋。  飯をあの魚の美味い店で済ませて、あとは帰るだけ。仕事後で、疲れてて、早く帰って休みたいはずなのに、やたらとのんびり歩く三國はまるで待っているようで、ゾクゾクした。  ゾクゾクしたから、したくなった。 「あっ、はぁ……」 「っ」  ベッドの上で寝転がる三國の上に跨っていた俺は腰をくねらせて、イッた後も中で脈打つペニスに、ゴム越しだろうと感じて、身震いしてしまう。 「何? 今日、すごいね。騎乗位、好きなんだ?」  元気に、まだ物足りなそうに硬いままのペニスを軸にして、少しだけ揺らして、その強度を味わってた。 「知、らな」 「好き、だろ。こんなにビンビンにしてんだから」 「っ」  背中を反らせて、後ろへ手を伸ばし、繋がった部分を指先でなぞってから、まだまだからっぽにはなっていない袋を揉んだ。その刺激に中にいる三國のペニスが暴れるぞとビクつく。 「あっン」  それがすごく気持ち良くて、自分で腰を動かして、好きなところを好きに突いて感じてしまおうと思った。前立腺も奥も、全部、三國のペニスに撫でられたくて。 「あっ、ン、すげ、これ、イきそっ」 「っ、ン」  腰振りを激しくすると、三國が息をつめて力を込める。 「エッロ……」  思わずそんなことを呟くほど、そのしかめっ面にたまらなくそそられた。あんな真面目そうな男が。 「ンっ、ん、カリ首、とこ、で前立腺擦って? ぁ、あああっン」  こんなスケベなペニスで、俺の中を貪ってるなんて。  ほら、こんなに髪を乱してる。っていうか、俺が今、手で前髪を崩した。 「エロいのは、貴方、でしょっ」 「ちょっ、ン、あぁぁぁっ」  男の俺を抱きかかえながら、運動なんて苦手そうに見せかけておいて、案外逞しいんだ。その立派な腹筋だけで起き上がって、中で暴れてたペニスが内側の別の場所を舐めるように抉じ開ける。頭の芯が痺れるような快感に天井へ向けて溜め息を零して喘ぐと、三國が何にもない俺の胸に乱れた呼吸のまま顔を埋める。 「騎乗位が好きかどうかなんてわからない」  きつい腕の力は息苦しいのに、気持ちイイなんて。 「でも、貴方が上で気持ち良さそうにしてるの、すごく、その」 「興奮した?」  クスクス笑いながら、甘やかす聖母のように、そのシチサンの見る影もない髪をすいて、頭を抱きかかえた。 「ン、バカ、乳首、舐めるな」  ぐちゃぐちゃにしたくなった。 「尖がってる」 「ぁ、だって、さっき散々いじる、からっ……敏感にっ」  抱かれたがりな身体は三國のくれるキスに悦んでる。もっとして欲しいと、舐めてとねだるように乳首を勃たせて、太いペニスを咥え込んだ尻がキュッと力を入れる。中で感じる大きさが熱さが、俺の好みだから。腰が勝手に揺れる。 「キス、したい、です」 「ン」  うなじを引き寄せながら下から覗き込むようにキスをされた。舌先でノックされ開けてといわれれ素直に口を開く。唇から差し込まれる濡れたベロにしゃぶりつくと、下唇を噛まれた。それが気持ち良くてたまらない。 「三國って、初っ端から、キス、上手いよな」 「……ぇ?」  童貞の割にはすごいキスをする。卑猥でやらしくて、立っていられなくなる刺激的なキスを。キス好きだけど、こんなふうに蕩けてたまらないようなのはしたことがない。 「キスだけは、誰かとしてた? って、ちょわっ」  グラリと世界が回転したのかと思った。 「俺のキス、好きですか?」 「な、っン……んんっ、ン、くっ、ふぁっ」  抱きかかえられながら今度は俺が寝転がらされた。そして覆い被さられ、三國の向こうに煌々と光る照明を眩しいと思うまもなく、まだ体内にいた三國のペニスが奥をクンと突付いた。 「俺のキス、好き?」 「あ……ン、好き」  だから、もっとって、その頭を抱えて引き寄せ、また口を開く。 「もう、一回、いいですか?」 「ぇ? ぁ、ン、んんんんんっ……ンくっ、んっ」  舌が入ってきて、ペニスはもっと奥まで突き立てられた。 「中、きつい」 「ン、だって、イったばっかっなのに、ちょ、おっきく」 「……です」  懐にしまいこまれるような錯覚に胸の辺りがくすぐったい。 「ぇ?」 「キス初めてです」  だって、すげぇあんな腰砕けになるようなの。 「やらしい動画でたくさん見たから、それでも覚えたのかも」 「あ、ンっ」  あ、そういうのズルい。 「キスも、貴方が、初めてだ」 「ぁ、イっ、ぁあっ、イくっ」  そんなしかめっ面で、俺の中に激しく擦りつけながら、乱れた呼吸ごと食らうようにキスするなんて、この唇とキスを味わったことがあるのは俺だけしかいない、と告白をここでするなんて、こんな気持ちが良すぎセックスなんて。 「あ、あああああああっ」  なんか、ズルいだろ。 「帰るんですか?」 「もちろん。っつうか、タクシー来てるし」 「……じゃあ、タクシーまで」 「いいって! この時間にアパートから男が男にエスコートされてタクシーで別宅へ、なんて、意味深すぎる」  自分でタクシーを呼んだくせに、引き止めたそうな顔とかしやがって。って、呼ばせたのは、俺だけれど。 「納期、三日」 「あ」 「だろ?」  今にも「泊まっていけばいいのに」とまた駄々っ子みたいなことを言いそうだから、先回りでうちに帰らないといけない理由を告げると、そうだったと口をあんぐり開けた。さっき、騎乗位セックスをした男と同じとは思えない、ちょっと間抜けな顔がおかしくて。そんなアホ面にクスクス笑いながら靴を履く。クラリとよろめいた俺を支えようと腰を抱く腕の強さとかさ。 「サンキュー」 「……あ、あのっ、ちょっと、待ってっ!」  まだ、中にお前のペニスがあるような感じがして、すぐにでも、奥が疼き出しそう。 「あの、これ、俺の番号!」 「……」 「携帯番号」  初回は偶然、二回目以降は職場が同じだったから、なんか、セックスした。この男のうちにこうして二回ほど上がりこんではいるけれど、連絡先なんて、知らなかった。 「本当は貴方のを教えてもらいたいけど、タクシー待たせてるし。だから、その、連絡、してください」 「……」 「時間が空いてる時とか、あれば、連絡、欲しいです」  真っ赤な顔をしてた。 「おやすみなさい。その、気をつけて」  はにかんでた。  気をつけてってさ、俺がよろけるほど腰砕けなのはお前のせいじゃんか。そう言いたかったけど、なんかそれじゃ、また何か三國が言い返してきそうで、帰れそうにないから。それこそ本当にタクシーを待たせてるから、その番号だけが書かれた紙を突っ返すこともできず、握り締めたまま自宅へと向かった。

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