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第20話 甘い繋がり、けれど、苦くて

 ドライブ? したことあるよ。あれは、高校卒業してすぐ、そん時付き合ってたリーマンと海まで行った。  水族館は、別の奴。大学生の男で、付き合って、それはけっこう長かったっけ。十ヶ月くらいは付き合ってた。一年はもたなかったけど。  でも、海月の水槽に囲まれたレストランで晩酌、っていうのはしたことないな。 「ンっ、はぁっ、ン、ぁ、んっ」  夜景の見える風呂場で青姦並にオープンなセックスもしたことない。  あれ、向かいのビルから見えたかな。そこまでの近さじゃないから、見えないか。 「ぁ、ン、乳首、好きっ」 「誉、さんっ」 「真紀も、これ、好き? 騎乗位、あンっ」  クンと、少し深めに突き上げられて、孔の口が気持ち良さそうに咥え込んだペニスの根元を締め付ける。真紀の腹のところに置いた手、その割れた腹筋をカリカリと爪で引っ掻くと、俺の中で真紀が反応してくれる。 「ど、だろ。好き、なのかな。わからない」 「好き、だろ、こんなビクビクしてる」 「それはっ、貴方の色っぽい姿がっ」 「スケベ」  からかってそう答えたら、ムスッとしながら、俺の胸にある、散々いじって舐めて敏感な性感帯に仕立てた乳首を摘んだ。 「あ、ン、それ、イイ」  興奮する? 俺のこの姿に興奮してる? 視線を感じながら、乳首へのごちそうをしっかり堪能する。その指に喘ぐと、俺の中で真紀が気持ち良さそうにデカくなるの、嬉しいんだ。 「ン、真紀」  好きって、言いたい。 「あ、それ、す……ン、すご、いいっ」  気持ちイイの好き、とか、そこいじられるの、好き、とか、そんな感じにごまかしながら、言ったら。 「誉さん」  きっと、止まらなくなるだろうな。好き好き連呼しそうな自分に驚く。けど、確信してる。きっとたくさん言いたくなる。  半分はお前のせいだからな。 「真紀、ン、これは? どう?」  半分は、こんな恋人同士でするようなデートをしたりするから。好きって気持ちが暴れるんだ。 「ちょ、誉、さんっ」 「いっぱい詰まってる」  後ろに手を伸ばして、繋がってるとこを触って、いきり立つペニスを撫でて、そのまま袋のところを揉んだ。  眼鏡を外した真紀が表情を歪ませると、こめかみの傷も一緒になって歪んだ。 「な、触っていい?」 「?」 「それ」  傷、気に入ってるんだ。なんか、好きだ。 「…………」 「ダメなら」 「触って」 「っ!」  答えに戸惑ってたのはそっちなのに、遠慮しようとした途端にその手を引っ張られて、こめまみに持っていかれる。俺はよろめいて、懐に抱き締められた。すぐそこに真紀の顔がある超至近距離。この男が裸眼でもちゃんと見える、クリアなエリアに連れてこられて、慌てた。 「ま、真紀っ、これっ」  これはダメなんた。 「ぁ、待って、ぁ、あっ」  これは見えるから。 「誉、さん」 「んん、あぁぁっ」  俺がどんな顔して真紀とセックスしてるか全部見えるからダメなんだ。 「あ、あっ」  なのに、腕の力は弱まるどころか、強くなって、奥めがけて突いてくるペニスが強くて、逃げ出せない。 「真紀っ」  気持ち良くて、ダメ。ずちゅぐちゅと派手な音を立てて、大股広げて跨った俺は腕に拘束されながら身体の奥までいっぱいに攻められる。 「あ、っンっ、真紀っ、真紀っ」 「誉さん」  細い腰も華奢な肩もしていない俺が、なんで、こんな逃げられないんだ。 「あ、ン、イくっ、イくっ」 「……」  なんでこんなバカ力なんだよ。なんで、真紀の腕の中ってこんなに気持ちイイんだよ。 「ン、んんんんんんん」  びゅくりと弾けたのがわかった。イきながら、深く舌の上もキスで激しく攻められて、身体の奥がきゅぅぅんと切なげに訴える。 「ン……」 「好き、ですよ」  この男の腕の中にずっといたいとか、思ってしまう。 「え?」 「好きです。貴方、とするこのセックス」  知ってる。俺も好き。 「気持ち良くて、とても好きです」  俺もすげぇ好き、この腕もその傷も、全部、独り占めした気分になれるセックスが好き。セフレの俺に貴重な休日丸ごと使って費やすお手本みたいなデートみたいなこれも、スパークリングワインの口移しも、それがどんだけ切なくさせるのか知りもしないでやる、お前のことが、好き。 「ン、んっ……」  自分から舌を差し出した。舐められてまさぐられて、唾液が滴る。まだ繋がってる俺の内側が、射精直後の余韻を使って、硬いままのペニスをきつくしっかりともてなした。 「ん、む……ン、真紀、ぁ」  口を開けて、また齧り付くように角度を変えて深いキスをしながら、孔の口を締めて腰を揺らす。 「ん……まだ、真紀、イってない」 「……」 「して? 奥」  くちゅりと蜜の混ざる音がしたのは俺が吐き出したもので濡れて汚れた真紀の肌だ。 「あっ、ン」  熱に浮かされたみたいな顔をして、カッコいいくせに薄っすら口まで開けて、そんなに気持ちイイ? 「ぁ、真紀、そこ」  俺の中、気持ちイイ? 俺のやらしい姿、興奮する? 「それ、もっと塗って」  吐き出したばかりの白濁を尖った乳首に塗って、摘めないからと爪先でカリカリ引っ掛かれる。きわどい快感に甘えた声を上げて、腰を使ってみせた。  もっと? 「やぁっ……ン、これ、すご」  もっと、やらしいほうが良い? 「真紀ぃ……あン」  もっと、エロいほうが、好き? 「真紀」  何も言わず、ただ俺を見つめていた真紀が腰を掴んだ。その指先が尻に食い込むのが気持ちイイ。  もっとして。  そう思って、その手に手を重ねながら、自分からも腰を揺らして中でビクつくペニスを扱く。やらしくなるように。真紀がたまらなくなるほど興奮するように。見せつけるようにエロく喘いで。 「んっ、そこ、もっと、ズンズンして欲しっ、ぁ、ああああっ」  ねだったところまでペニスを突き立てられて、尻の肉を大きな掌できつく鷲掴みにされて、広げられて激しく突かれた。深く大胆に奥まで、何度も。  おかしくなる。 「あっ……や、なにっ?」  奥、何、これ。 「誉さん」 「あ、やだ、真紀、待って、これっ、ダメだっ」  自分の腰を掴む大きな手に手を重ねるんじゃなくてしがみつくように力を込めて、頭を振った。 「やだ、これ、知らないっ」  ダメなとこな気がする。これは抉じ開けちゃヤバイ場所な気がする。 「あ、あ、っ、待っ」 「ダメ、誉さん」 「っ!」  逃がさないって、雄の顔をしてた。奥歯に力を込めて、険しい表情で、力強く俺の中を掻き乱して、突いて、貫いて。 「誉……」 「!」  知らない熱。 「ぁ、あぁぁぁぁぁっ」  弾けたのは白じゃなくて、透明で、こんなに痺れるほどの快感なんて知らない。こんなの味わったことない。いつもと違う快楽。こんな切ない気持ちを、俺は、知らない。 「あっ…………真紀」  頭の中が真っ白になって、そして、味わったことのないセックスに知らないうちに涙が零れた。

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