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第29話 この舌に濡れて

「あっ、いやぁっ……っン、ぁ、ンっ、あっ、はぁっ」  首筋にキスされながら、爪で乳首をカリカリと引っ掛かれて、たまらず身悶えた。崩れ落ちそうなくらいに気持ち良くて、真紀の首にしがみつきながら、下半身を密着させる。 「ン、ぁ、真紀の」 「っ」 「……硬い」  掌で撫でると、すぐそこで端正な顔を歪ませてる。何かを堪えるように噛み締めた唇を猫みたいに舐めて、熱い吐息を唇で感じながら、その硬くなった股間を揉むと、小さく息を詰めて、堪えてる顔をして。 「誉、さ……」 「待って、壁、寄りかかって」 「ほま……っ!」  その場にしゃがみ込んだ。濃い紺色をしたスラックスの前が盛り上がってた。それがとてつもなくエロくて、興奮する。見上げれば眼鏡越しに少し焦った真紀がこっちを見つめてる。目線を合わせたまま、そのスラックスの前を丁寧に開いて、テントを張ってるてっぺんにキスをする。  ただのキスなのに、真紀が腰を揺らすから、もっと興奮してくる。  下着を下ろして飛び出したペニスにまた、今度は直にキスをした。 「……ガチガチ」  言いながら竿に手を添えて、根元にリップ音付きの口付けをする。ちりつく毛すら、なんか、愛しいなんて。 「あ、誉さんっ」 「ン、真紀のこれ、硬くて、熱い」 「っ」  そのまま竿にも唇で触れて、くびれを舌先でくすぐって、先端に戻ってまたキスをした。欲しそうに見つめてる真紀を見上げながら、大きく口を開いて、それを咥えて。 「あ……」  痛そうなくらいに張り詰めたそれが口の中で暴れた。ビクンって跳ねて、口の中で気持ち良さそうにまた大きくなるから、それをしゃぶる。先端に吸い付いてから、鈴口を舌先で割り開くと、真紀の味がした。 「誉っ、さんっ」 「ン、んっ……ン」  口を離して、腹筋にキスをしながら、竿を握って扱いてあげる。手の中でビクビク跳ねることに煽られて、もっと大胆に舌を絡めて、先を吸った。やらしくて卑猥な音を立てながら、丁寧に、好きな男のペニスを口に頬張る。  真紀に、俺の口の中でも気持ち良くなって欲しいから。全部を舐めて、キスをして、ローションなんていらないくらいに唾液でびしょ濡れにしている間、真紀が気持ち良さそうにうっとりした顔をしてた。  気持ち良い? 俺は、すごく、気持ち良い。何これ、フェラしてるのは俺なのに。なんで俺がこんなに気持ち良いんだ。 「っン」  俺の髪に指を差し込んで撫でる、ただそれだけでも快感だった。愛撫する舌に感じる度に指先が力を込めて俺の髪をぐちゃぐちゃにする。真紀の指に髪をまさぐられたくて、舌でもっと丁寧にペニスを愛撫してあげる。 「っ、誉っ」 「いいよ。口の中、で、イって」 「っ、はっ……ぁっ!」 「!」  まだ、だと思ったのに。喉奥まで真紀のを咥えようと思った瞬間、そこでビュクリと弾けた。 「ご、ごめっ、なんかっ、す、ごくて……我慢」 「ンっ……ん……」  余韻まで気持ち良さそうに口の中でビクンと跳ねる真紀のペニスをもっとしっかりしゃぶって、残りも飲み干す。見上げれば、フェラに呼吸を乱す真紀のシチサンが崩れてしまっていた。  少し長めの前髪が、俯いて、俺を睨むように見つめる真紀の目元を隠す。  きっと、本人は知らないんだろうな。そんで、他の誰も、真紀のこの色気を知らない。だって、この男と寝たのは俺だけだから。 「誉、さ……」  俺の男。  俺の好きな男のペニスだから、先端まで、フェラを名残惜しんで丁寧に溜めてしゃぶって、最後、吸って綺麗にしてから口を離した。 「ン……気持ち良かった?」 「……」 「真紀? って、ちょっ、おいっ」  引き寄せられて、ロッカーの扉に背中を押し付けられた。 「あン」  怪我している右手に気をつけながら抱き締められて、首筋のキスにまた喘ぐ。 「ン、乳首、ぁ、気持ちイイ」  抓られるのも好きな乳首を齧られて、また甘い声で啼いて、シチサンをもっと乱してしまおうと、その頭を撫でた。  前ジッパーを一番下まで下げられて、真紀のと同じようにテントを張ったそれを下着の上から撫でられながら、乳首も可愛がられてイっちゃいそう。悦がると、前かがみになった真紀が歯で敏感になった乳首の先端を齧った。 「やぁっぁぁっ……ン、ぁ、真っ、ちょ、真紀」  乳首にも腹にもキスをされて、その快感に崩れ落ちそうな俺は肩にしがみつく。 「ま、真紀!」  そこより下はダメだ、そう左手に力を込めた。 「真紀っ」 「……」  さっきと同じ射抜くように見つめる瞳に、今度は見上げられて、身体がカァっと火照った。 「しなくていいって」 「なんで?」  フェラ、お前はしなくていいよ。そういうの、したことないだろ? させなかった。だって、それって男のペニスを口に咥えるってことなんだ。なぁ、それの意味わかってる?  けど、生真面目なお前は、俺が「奉仕」をするのなら、自分も、って考えてやりかねない。だから、ずっとフェラしなかった。  男のモノなんてって、口にした瞬間、嫌悪が膨れるかもしれない。  それに、セフレ相手でも律儀にしようとするお前のことを、セフレ以上の感情をもてあます俺は、されたら、ダメになるから。これ以上好きになるのは苦しいのに、きっと止められなくなる。  もっと好きになって、溢れて、零れるから。 「フェラチオ、くらい知ってます。言ったでしょう? そういう風俗の店にも行ったことあるし、やらしい動画もたくさん見た」 「っ、俺はっ、いいっ、からっ」 「誉さん、さっき言った」  それを握り締められて、小さく声が零れた。痛いくらいに張り詰めた、俺のペニスを真紀の掌が握って。 「俺のこと汚してって」 「ン、真紀、ダメ、汚い、から」 「貴方に」 「あっ、ダメ」 「ぐちゃぐちゃにされたいんだ」  真紀の綺麗な唇がペニスの先端に触れる。あの舌に舐められて。 「っンン!」  この唇の咥えられて、その口の中で濡らされて。 「あっ、ンっ……ダメっ、真紀」 「……」 「あ、あああああ」  鈴口のところを舌で割り開かれて、先端を吸われて、切ない声を上げると、口から離された唾液濡れのペニスを手で扱かれる。ぬちゅくちゅと音を立てて大きな掌に可愛がられながら、乳首までまた濡らされて、クラクラする。  熱くて、気持ち良くて、喘ぎながら、真紀の舌に犯されてる。  ダメ、なのに。  スラックスでこんな床に膝立ちなんてしたら、汚れる。 「あっ、ン、真紀っ、ダメっ」  着替えてないから、ツナギのままだから。そのツナギがフェラに身悶える俺の肩を滑り落ちて、乱れていく。 「口、離せって、ダメ、もっ、ぁっ!」  汚しちまうのに。 「あ、ああっ、ン、イくっ、イっ、ダメっ、真紀っ」 「……」 「あっ、あっ、ンっ……」  真紀のフェラ、俺が今、したのまんまだった。 「あ、ン、バカっ、口」  それ飲むのまで同じにしたりして。 「言ったでしょ? 貴方にぐちゃぐちゃに汚されるの、たまらない」 「あっン」  真紀がしてくれたフェラは俺が教えた。 「あっ……ぁ、真紀っ」  性感帯を可愛がってくれる指先は俺が悦ぶ意地悪のやり方を知っている。 「ン、早く、真紀の、これ」 「……」  シチサンをぐちゃぐちゃにした時の表情がたまらないんだ。  この男をこんなにセクシーにしたのは俺。この男をこんなふうにしてもいいのは、俺だけ。だって――。 「早く、俺のことも、ぐちゃぐちゃに、して……」  真紀は俺の男なんだから。

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