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第35話 最高のおあずけ
明日、休みなんだって。
「手、痛みますか?」
「……全然」
俺らは感謝祭の仕切り役を頑張ったから、明日、休みだろ?
「湯冷めしてないですか?」
「……ヘーキ」
明日、休みだから、うちに来たんだろ?
「ドライヤー熱くないですか?」
「……大丈夫」
風呂上り、お互いにボディソープの良い香りをさせてる。
「誉さんの髪って、柔らかくて気持ち良い。ずっと触ってたい」
傷のことを心配してくれた真紀に全部任せていた俺は、洗ってもらうだけじゃなくて、髪をこうして指で梳きながら乾かしてもらっていた。
「じゃあ、ずっと触ってればいいだろ」
ベッドの上に座った俺と、その後ろに陣取って髪を乾かしてくれている真紀。風呂上りで上気した肌、同じボディソープの香りを漂わせて、しかも、酔っ払いで、理性はあんまりない。そんで、俺らは恋人同士だ。
まだ、乾ききってない髪なんてどうでもいい。手を掴んで、俺の胸のところに当てた。
「しない、のか?」
「……」
「……真紀」
セックス、しねぇの?
「触って」
その手を今度は自分の股間まで連れ込んだ。
「……ン」
「っ」
真紀が後ろで息を飲んだのがわかって、余計に掌に押し付けながら、甘ったるく鼻にかかった声を出して、背中を全部預けた。
「ン、真紀っ」
ほら、背中越しでもわかるくらい、真紀の身体が熱っぽい。したい、だろ? 真紀だって。
「ほ、まれ、さんっ、髪、濡れてる、から」
「へ、き、だって」
「風邪引きます。明日、病院、でしょ? そのテープ、張り替えあるんじゃっ」
あるよ。けど、平日なんだ。そこまで混んでないだろうし、夕方に行って張り替えてもらったって、朝一だって、明日は明日だろ? なら、いいじゃん。明日の心配を今からする必要ないだろ。
「そ、れに、今日は一日お祭で疲れて」
身体火照ってるくせに、興奮して、声が掠れてるくせに、それでも、理性を保とうと無駄な努力をする真紀に焦れて振り返った。
「誉っ!」
「……」
押し倒して、そのまま真紀の股間あたりに陣取って座り込む。
「っ、ん、硬くなってる」
「っ」
「したい? なぁ、しないの?」
当たってるけど? ここ、ちょうどケツのところに、お前のがすごいゴリゴリしてんじゃん。
「真紀?」
「っ、し、しませんっ」
「は、あぁぁ? ちょ、なっ!」
こんなにしたいって、身体が教えてるのに、何言ってんだって、イラっとして、真紀の上で暴れてやろうと思った。襲い掛かろうと思ったのに、そんな俺をいとも簡単に抱き締めて、体勢を入れ替え組み敷いた。
一瞬で天地がひっくり返って、真紀が俺をじっと見下ろしてる。ビシッと、ガチガチに固めていたシチサンは今日一日あっちこっちと忙しく動き回っても崩れなかった。けど、今、風呂上りの真紀の髪はサラッサラだ。
その髪を俺が崩したいのに。
「……今夜は、しません。昨日、たくさんしたし、一日お祭で誉さんが頑張ってた。そんな連日したら、その」
なんだよ。付き合いたてで、脱童貞したばっかのお前のほうが絶対にしたがりそうなのに、俺だけかよ。
したいのに。
お前は、したくないのかよ。
なんか、バカみたいだろ。俺は夢中になって、浮かれて、けど、お前はそんなことをするためにうちに来たんじゃない? 本当に怪我をしてる俺の世話だけするつもりなのかよ
「その……貴方の身体が壊れそう」
「……」
「毎晩なんて、したら、誉さんの身体、砕けそうで」
「……は、はぁぁぁぁぁ?」
「だから、今夜はしません」
「ちょ」
何言ってんだ。こいつ、本気で心配した顔して、何ほざいてんだ。どう見たってセックスで壊れそうなほど華奢な身体してないだろ。ふ、太ってはいないけど、細いわけでも、すらりとしてるわけでもない。そんな俺のことを、なんて顔して見てんだ。
「ちょっ」
「したいけど、我慢します」
「し、したいならっ」
「我慢します!」
「お、おいっ、ぁっ……ぁン」
切なげに、大事な宝物みたいになんて触れなくていいっつうの。壊れないし、男だし、むしろ、そのほうが切ないっつうの。俺は、その気満々だったのに。
「っ、誉、さんっ」
「ぁ、ちょっ、ンっ……」
「俺のも触って」
下着をズリ下ろされて、跳ねるように飛び出したお互いのペニスを握り締める。
「っ、誉っ」
ガチガチじゃん。服越しに、ケツんとこで確かめた時よりもずっと硬くて熱くて、そそり立った真紀のペニスを左手でぎこちなく握った。
「っ、ほまれ」
苦しそうに俺の名前を呼んで、右利きの俺の拙い手つきにも気持ちイイって顔をしてる。
「あっン、真紀っ、俺の」
「硬くなってる」
そりゃ、そうだよ。お前とセックスしたかったんだから。
「あっあぁっン、そこ、カリんとこ、もっと擦って、真紀も、ここ、気持ちイイ、だろ?」
言いながら、先端を爪で優しく引っ掻きながら、指のワッカできつく扱いた。真紀の手がそれを真似して、俺のペニスを同じように愛撫する。
「あっ、はぁっン、それ、好きっ、真紀」
大きく足を開いて、ペニスを真紀の掌に擦りつけて。
「ん、ぁン、キス、欲し……ン、んんっ」
薄く開いた唇に差し込まれる舌を待ってた。しゃぶりついて、何度も扱いて、やらしい音を立てながら、唇をびしょ濡れにするほど激しいキスを貪り合う。手も先走りでびしょ濡れだ。
「あっ、ン、真紀」
荒い呼吸を繰り返す唇をぺろりと舐めてから、噛み付く。
「明日は? ダメ」
「っ」
あーあ、俺があのビシッとシチサンを崩したかったのに。楽しみにしてたのに。そのつもりで、風呂入ったのに。
「あ、したは、します」
「ぁ、ン、そこ、強く、してっ、ぁ、それ、イきそっ」
壊れないっつうの。
「真紀の手、気持ちイイ、好き」
「きょ、は、我慢してるんだから、あまり、煽らない、でっ」
「ぁ、あっ、ン、イくっ、真紀っ、イくっ」
煽ってるのはお前だろ。お預けなんて、恋愛慣れした男みたいなこと、天然ぶちかましてやりやがって。けど――。
「っ、誉、さん」
「あ、あ、あ、イくっ、ン、んんんんっ」
けど、本当に愛しいってわかる優しい手で、俺を抱き締めながら、優しいキスをされて、これはこれで、最高に気持ちイイから、甘んじてそのお預けプレイを堪能するのもいいかなって、思った。
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