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第45話 おうちに帰るまでが

 帰りたくないなぁ――なんて。  子どもみたいだ。遠足の終わり、おうちに着くまでが遠足ですって言われたっけ。そんな遠足のおうち直前、「バイバイ」っていう時みたいに、少し寂しい。大好きな友だちと一緒に暮してたら、毎日すごく楽しいのに。毎日が遠足みたいになれるのに、そんなことを思ったことがあった。その寂しさに目が覚めた。 「……」  恋人同士になって、好きと言えることに喜んでたのに、もう足りない。もっと触れたい、もっと一緒にいたい。週一だったのが、週二になって、週三になって、もっと、もっともっと。  嵌って、夢中になればなるほど、どっかで――。 「……あまり、触らないで」 「真紀? ごめん、起こした?」  真紀のこめかみに刻まれた傷跡を眺めて、頬をそっと撫でてた。寝ているとばかり思ってたし、昨日は夜更かしだったから、まだ眠っていると思った。触れても、ぴくりともしなかったから、眠ってるんだと。 「今、起きた……おはよう」 「!」  もぞりと起き上がり、身体を重ねる。浴衣を着てはいるけれど、そんなもの寝ている間に着崩れてる。 「んっ」  脚の間に、脚を入れられ、素肌が擦れ合うだけでも、声が上がる。 「あっ」  そこから、股間をわざと押し付けられて、もう硬くなってるそれに、今度はもっとしっかり甘い声が零れた。 「誉さん」 「ぁ、ン」 「しちゃ、ダメ?」 「んんんっ」  耳にキスしながら、股間をぐりぐりしながら、そんなこと訊くなよ。まるで、セックスみたいに、腰を動かして、突く真似までして。 「ン……ダメ、なわけない。あ、ン」 「誉……」 「んんっ」  キスしながら、下着を脱がされただけで、身体が欲しがる。奥の、昨日溢れるくらいに注がれて、真紀が染み込んだそこが、きゅん、って締め付けて、またいっぱいに満たされるのを待ってる。 「あ、ン、真紀っ、このまま、いいよ。挿れて」 「平気?」 「ん」  昨日みたいに激しいセックスじゃない。欲しくて欲しくて、喉奥を鳴らしながらしゃぶり合うような沸点を越えたようなのじゃなくて。 「ここ、まだ柔らかいから、来、ぁっ……はぁっ……ン」  ゆっくりと繋がる、蕩けるような蜜味のセックス。  激しくじゃなく、奥をゆっくり突かれると真紀の形がすごくよくわかって、たまらなく気持ちイイ。奥まで来て、浅いところまで戻って、また奥まで来てくれる。 「あぁぁっ……ン、そこ、好きっ」 「しがみついていいよ」 「ン」  昨日とは全然違うのに、朝、まだずっとこうしていたくて、真紀が恋しいと思っていた俺には昨日と同じくらいの快感で。じれったい動きにすら身悶えるくらいに悦がってる。震えるほど感じてる俺の奥を真紀が優しく突いた。 「あっ……ン」  そして、また震える。 「へ、き? 真紀、背中」  昨日は何度もしがみ付くようにその背中に爪を立ててた。沁みてた。セックスの後、外の露天に入る時、ちょっと真紀が息を詰めてたから。 「ヒリヒリ、しない?」 「平気。もっと、爪立てていいよ」 「あ、あああっ」  爪を立てずにはいられないくらい奥を一度強く突かれて、思わずしがみ付いた。 「誉を抱いた痕がつくの、好きだ」 「あ、ぁっ」  また、ゆっくり攻められる。 「俺の寝顔を見てる誉が可愛くて」 「あン」 「たまらなかった」 「ンっ」  気持ちイイ。柔らかい中を硬いものが貫く快感。 「俺の寝顔、変じゃなかった? 涎とか」 「へ、き」 「貴方しか知らない、から」 「あぁっ……ン」 「俺の寝顔」 「ン、んんんっ」  真紀の形に内側が吸い付いてるって感じた。朝日に照らされた真紀がセクシーでゾクゾクする。せせらぎの音が聞こえない。俺の内側が真紀のペニスに気持ち良くされてる音しかしない。 「変、になりそ」 「ホント? 嬉しい。誉……」  思わず、呟くと、真紀が嬉しそうに笑って、優しくキスをしながら、優しく俺の中をいっぱい、可愛がってくれた。 「誉……」 「ぁ……あぁっン」 「もっと、ずっと、こうして……」 「あっ、あっ……ン、イっちゃうっ……」  ずっと、こうしてたい。ずっと一緒に、そしたら、毎日が遠足みたいに楽しいって。 「あ、ぁ、ああああっ」 「誉……っ」  気持ちが、身体が、真紀にしがみ付いて離れたがらなかった。  清らかな川の流れ、爽やかな秋空、少しひんやりとしている風に揺れ……そうにない、びっちりシチサンにしとけよ。今日は。 「なぁ、真紀、お前、絶倫すぎ……」 「大丈夫ですか?」 「また、敬語」 「混ぜていこうと思って」  そこでニヤリと笑うなよ。前を見ろよ。山道で余所見とか命取りだぞ。  昨日もたくさんセックスした。朝も、たっぷり内側から何から何まで可愛がられた。もうたったの一泊二日でお腹いっぱいになるくらい、愛された。 「でも、絶倫かどうか、知らないよ」  今度はタメ口。振り幅がハンパじゃなくてクラクラする。 「貴方としか、知らないんだから」 「!」 「俺は、絶倫なんですか?」  パンクしそう。真紀以外を知っている俺に、俺しか知らないと告げる低い声はとても意地悪くて、ぷしゅううってこの場でぺしゃんこになりそうだ。 「真紀? なんで、停め、……」  急に路肩に停車するから何かと思った。キスをするために停車したって、すぐにわかったけれど。 「妬けます」 「っ」  俺だって、知らない。こんなに、過去となんて比べられない恋愛は知らない。紅葉を眺めるような暇もないくらい、恋人に夢中になったことなんてないんだから。

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