62 / 121
良い子でお留守番編 1 蜜味モーニング
朝、目を覚まして、隣を見れば、あいつの寝顔がそこにある。
「……すげ、またこれずっとやってたのかよ。腕、痺れるだろっつったのに」
腕枕を心地良いと思える。
「……何、スヤスヤ寝てんの?」
そいつの寝顔を心底、愛しいと思う。
そんな毎日が待ってるなんて、こいつに出会うまでは思いもしなかった。真紀に、出会うまでは――。
「……」
思わず、素直な寝顔に笑いが零れた。ただ見てるだけなのに、愛しくなって、なんか急にくすぐったくなるんだ。そんで、笑っちまう。
「ふわぁ」
あくびをしながら時計を見ると、まだ七時前だった。休日の朝としては早朝の部類だろ。今日は二人とも休みだし、昨日は夜更かし? いや、寝たのは朝方だったから、夜更かしとは少し違うかもな。
「よいっしょ……っと、とと」
俺を大事そうに抱えるように寝ていた真紀を起こさないようにと思ったけど、まだ昨日のセックスの余韻が残った身体は不安定なベッドのスプリングに揺れて、よろけた。
真紀を押し潰さないようにって、慌てて脇に転がった。けど、ちょっとだけ乗っかったのが重かったのか、目の前にある真紀の足先が驚いたようにきゅっと丸まる。
俺の手と同じ。
仕事をしているって、その身体に染み込んでる足。
俺の指にオイル汚れが沁みこむみたいに、窮屈な革靴であっちこっちと忙しく走り回って、親指の付け根が靴の形に変形してる。仕事をしてる足。
俺のは仕事をしている手。
まだ一緒に暮す前、旅行先で見て、少しびっくりしたんだ。俺は革靴って出かける時くらいしか履かないから。
そして、愛しく感じた。
真紀が頑張ってるって、その足先に刻まれてる気がした。
「……ん」
足にキスする、みたいなプレイ的なのって、どっちかっていうと嫌い、なほうなんだけど。自分の指だって、あんまり好きじゃなかったくらいだし。
けど、真紀の足はそんなことなかった。親指の先端にキスをすると、くすぐったいのか、びっくりしたのか、キュッと丸くなる。それが楽しくて、指先でくすぐったり、足の甲にキスをしたりしてた。
「ン」
零れた吐息は真紀の。
もしかして、足、されるの気持ちよかった?
へぇ……布団の中に手を入れ、探ってみれば、そこが反応してた。掌でイイコイイコって撫でてやると、昨日あんなに俺の中で気持ち良さそうに暴れまくってたくせに、もう元気になってる。ムクムクと頭をもたげて、ルームパンツと下着で拘束されていようが、その中で窮屈そうに布を押し上げる勢いで、俺の掌の中で気持ち良くなってる。
「ん……誉」
あ、それ、ダメ。
今はダメだろ。ツボ、ゴリ押しされた。押されて、スイッチが。
「……」
スイッチ、入っちゃったじゃん。今さっき抜け出したばかりの布団の中に再度戻って、しっかりテントを作ってるそこをズリ下げた。
飛び出た真紀のに、散々中を可愛がられたんだ。昨日も、一昨日も。何度も、イかされた。
「ん、んっ……んくっ、ン」
それを口に含んで、扱いてやる。数回、唇で、窄めた頬の内側できつく扱いてやれば、俺の、口の中でムクムクと育つ。それにちょっと満足して、もっと独り占めしてやろうと舌を這わした。竿に手を添えて、舐めて、先端にキスをして、少し滲んだ先走りを舌先で掬う。催促するみたいにそこをほじれば、舌先に真紀の味がした。
「ん……ン」
朝一フェラを、丁寧に、大事に咥えて、舐めて、啜って。
「ちょ、貴方、何をしてるんですかっ」
「…………おはほ」
「口にしたまましゃべらない!」
そうそう、真紀って寝起きいいよな。朝起きるのが早いってわけじゃない。ただ、睡眠と覚醒の境目が、あのシチサンのごとくピッと綺麗に分かれてる感じ。
先端を口に含んで、舌先でチロチロと撫でながら振り返る。自分の足元からこっちを眺めて、熱の混ざった溜め息みたいな、吐息みたいな深呼吸をする真紀に微笑んだ。そしたら、口の中で真紀のがまた硬さを増していく。
「昨日もあんなにやったのに」
「っ」
もう痛いくらいに張り詰めてる。ガチガチじゃん。ほら。
「っ」
唾液で濡れた裏筋のところを指で、ツーッとなぞると、真紀が、苦しそうに喉奥で息を詰まらせた。
「やっぱ、絶倫」
「そりゃ、こんな絶景見せられて」
「ちょ、あっ、ン」
「興奮しないわけ、ないでしょ?」
「あぁぁぁぁっ」
つぷり、と孔の口に入ってきたのは指。真紀の綺麗な指が、俺の中を掻き分けて、まさぐってる。
「ぁ、ンっ」
気持ちイイ。指なのに。真紀の指はダメなんだ。あの指に中を開かれてるって思うだけで。
「あああっン」
前立腺を押された瞬間、腰が跳ねるように持ち上がる。跨がって、真紀の目前に孔を晒して、猫が交尾をねだるみたいに腰を揺らしてる。
「あ、ぁっン」
「昨日あんなにたくさんしたのに」
「あ、あぁン、ぁン」
ゾクってした。俺が真紀にした甘い意地悪を反復するように、昨日何度も抉じ開けて、奥まで注いだ孔の締め付けを、欲しがって疼いてるって、楽しむように、指が中をかき回す。
真紀の指に喘がされる。
「きつくて狭い」
「ン、やぁぁっ……やだ、舌、ぁっ、やぁぁぁ……ン、汚いって」
「誉に汚いとこなんて、ないよ」
今度はタメ口で、そんなことを言われて、身体の奥が疼くだろ。
そんなとこ舐められて、羞恥すら快楽に繋がってく。ゾクゾクして、ほら、散々あんなにイかされたのに、中もペニスも気持ち良さそうに濡れてく。
「あ、真紀っ」
「っ」
「これ、欲しい」
先走りでびしょ濡れになった真紀のペニスを額に擦り付けて、ねだった。
「誉」
「ちょうだい。真紀の、朝っぱらから溜め込んだやつ、俺の中に、ちょうだい?」
「っ」
「あ、あぁっ、あ、ああああああ」
身体をずらして、背中を向けたまま、そそり立った真紀のペニスで自分を挿し貫いた。
「あっ……はぁっ」
満たされる内側に震えながら背中を反らせて、奥に、もっとずっと奥まで真紀が欲しいから腰を揺らす。
「ン、ん、あ、ぁあン」
回すように腰を使って、根元まで咥え込んだだけで、ぶるりと身震いした。
「ン、真紀っ、見える?」
「っ」
ちらりと振り返れば、男の顔をした真紀が俺を貫くように見つめてた。痛いくらいの視線に背中がゾワリと栗立つ。あの真紀が朝っぱらからこんなやらしいことをしてるなんて。寝室でこんな卑猥な音を立てて、淫らに腰使ってるなんて。
「っ、誉、締めないで」
「だって」
興奮する。気持ち良くて、貪りたくなる。
「なぁ、真紀」
「?」
「この騎乗位も、気に入った?」
「っ」
「繋がってるとこ、全部、見えるだろ? あ、あぁぁぁっン」
身体を前に倒し、ペニスを咥えた孔を晒した。そして、体勢が変わったせいで抉るように刺激されるまた別の箇所に喘いで、蕩けた声が自然と零れる。
ずっとこうして繋がっていたくなる甘い快楽に浸って、
「誉っ、そんなとこ、キスしないで、汚い、から」
恋しいのがさ、キスする度に、セックスする度に、真紀と時間を重ねる度に濃くなっていくんだ。濃くなればなるほど、水みたいにさらりとしていたものが、トロトロに柔らかくなっていく。やらしくなっていく。
頭のてっぺんから足の先まで、全部恋しくなるくらい。
「真紀の身体で汚いとこなんて、ひとつも、ねぇよ」
本当に好き。この爪すら恋しいほど、全部がすげぇ、好き。
ともだちにシェアしよう!