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良い子でお留守番編 5 あと三日

 チーフと飯……ねぇ。これが、うーん、鴨井と飯だったら、なんか色々気持ちがざわつきそうだけど。チーフはすげぇ家族思いなのを知ってるから、キャバクラも、風俗も、夜の繁華街を飲み歩くこともないだろ。だから眼鏡も落とさないだろうし、どっかをほっつき歩いてる最近アッチがご無沙汰なネコにゲロをかけてホテルに行くことにもならない。  まだ、飯食ってるかな。  そう思いながら、風呂上りの髪をバスタオルで拭きつつ、時計を見た。  夜の十時をちょっとすぎた頃。  本当は今夜、一緒に眠るはずだった。けど、出張は延長され、あと三日は帰ってこない。  身体は、少し戸惑う。今日はきっと与えられると思ってた熱も質量も、あと三日、おあずけになったんだから。  ほら、もう一週間以上経ったから、あの日つけてもらった印は完全に消えた。あんなにきつく強くやったのに、赤く残ったキスマークは跡形もない。 「……」  今日、もらえると思ったのにな。  なんて、鏡の向こうにいる切なげな顔をして、ひとりで留守番をしているネコに呟く。  ブブブブブ 「!」  少しびっくりした。笑っちゃうだろ? 真紀からの連絡を逃さないようにって、ずっとスマホを手の届くところに置いてたんだ。普段、真紀と一緒にいたら、ひどい時はスマホをカバンに入れっぱなしなんてこともあるのに。 「もしもし?」 『……早いですね。もう寝るところでしたか?』  だよな。俺が秒で電話に出るなんてこと、ほとんどないんだから。 「俺、小学生じゃないっつうの。まだ十時だぞ。でも、電話終わったら寝るかも」 『……』 「退屈だし」  真紀といると退屈しない。忙しないわけでも、めまぐるしく楽しい事が満載っていうわけでもない。ただ真紀といると退屈だと感じることがないんだ。 「チーフと飯、どうだった?」 『車の話をたくさんしていただけました』 「あはは、やっぱり」 『あと、貴方のことも……』  仕事を頑張ってると褒めてくれたって。一級整備士にもなれるだろう。ただ、それだけじゃなく、きめ細かく良い仕事をしてるって。  チーフだけじゃなく職場にはこの恋愛のことは内緒にしている。もちろん同棲していることも知らせていない。ただ年代が近く仲が良いっていう認識程度。 『接客も上手だって。技術屋の割りに笑顔がいいって』 「……」 『あまりにベタ褒めなので妬けました』 「っぷ」 『あと』 「?」  そこで真紀が一呼吸を置いた。俺の評価の話をしてる最中に身構えられて、こっちこそゴクリと固唾を呑んでしまう。何を言われたんだろうって、もしかして、もしかしたら、あまり良くないことなんじゃないかと。 『あと、プライベートが充実してるんだろう。良い感じに仕事に集中できてる』 「……」 『だ、そうです』 「すげ、照れる」  私も、かなり照れましたと言った真紀の頬も赤い? 酔っ払ってはいるんだろうけれど、それだけじゃなく甘い赤色に。 『貴方にたまらなく会いたくなりました』 「……」 『今日』  甘くて、美味しい、恋の、赤色。 『今日、貴方のことを抱けると思ってたから』  ――電話、切りますね……なんでって、今、ちょっと酔っ払ってるんです。美味しい小料理屋で、今度、貴方と旅行でここに来たら案内しますね。それで、酒飲みすぎたようで、ちょっと、今、ホント酔ってるから……その、おかしなことを、言っちゃいそうで。 「あ、ぁっ、見える? な、ぁ、真紀っ……見、てる?」  ――何って……貴方の、やらしい姿が、見たいって。 「あ、ぁっ……ン、真紀っ、真紀」 『誉、さん』  少し無機質に、そして、真紀の声が少しくぐもって遠くに聞こえる。 「真紀、乳首も」 『触って、最初はそっと触れて摘んで』 「あ、あっ……ン」 『爪で引っ掻いて』 「あぁ、ぁァァっ……ン」  小さなスマホの画面の向こう、真紀が苦しそうに表情を歪めた。手を忙しなく動かしながら、セックスの時は激しく動くのに邪魔になるからと外してしまう眼鏡をして、こっちを睨むように見つめてる。 「あ、ァ見て、真紀」  見える? お前の名前を呼びながら、先走りでびしょ濡れになったペニス扱いて、乳首をいじって喘ぐ俺の淫らな姿。 『っ、誉さん』 「ン、あっ、真紀、真紀の手、欲しい」  だって今日包んで扱いてイかされるはずだったのに。 「んんっ乳首、真紀の舌で、舐めて欲しい」  ここ、一週間ぶりに可愛がってもらうはずだったのに。 「真紀……」  真紀の硬いのを、ここに欲しかったのに。 『誉さん、指、挿れて』 「あ……」 『ちゃんと見えるように脚開いて、そこ、見せて?』 「あっ……ン」  期待してた身体は真紀のことが欲しいと疼いて、羞恥心を吹き飛ばした。スマホ通話、画面をオンにして、真紀が見たいっていった「やらしい俺」を見せつけてる。 「あっ……真紀ぃ……」  切なげに名前を呼びながら、そこに自分の指を挿れた。 「あ、ン、真紀」  抉じ開けて、広げて、ローションに濡れた指で真紀のペニスの真似をする。 「真紀……」  たくさん名前を呼んでもあの体温も濡れたキスも、質量も、今日はおあずけ。 「ン、んっ」  じゅぷじゅぷと鼓膜を刺激する音。掌に収まる画面の向こうで俺を視姦して、息を乱す、恋人。  触りたい。  触って欲しい。  舌に可愛がられたい。  キスして欲しい。唇に、全身に。ここにも、こっちにも、あそこにもキスして。そして――。 「あ、ァ、あっ」 『誉』 「ん、ァっ、真紀、真紀のちょうだい」 『……』 「あ、これ、ヤダ。もっとがいい。もっと、熱くて硬いの」  真紀に貫かれて、暴かれて、奥の奥まで突かれながら。 「あ、やっ……ン、真紀、早くっ」 『誉っ』 「あ、ン、真紀、乳首もして、ここも全部、ァ、全部、あァ、あっ…………!」  真紀のことを抱き締めたい。 「あ、ァ、ああああああっ」

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