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ホワイトデーSS 2 ホラー映画の醍醐味

 映画なら今、けっこう面白そうなのがやってた。アクションとか、あと話題になってた実話を元にしたサスペンスとか、それに今イチオシ俳優のエッロい絡みが見れるっつうのもあったっけ。レンがすっげぇ見たがってた。その俳優のファンなんだって、相手役の女優をめちゃくちゃ睨んでた。それこそ、ギリギリと歯が音を立てそうなくらい。  けど、そこはシチサン眼鏡の、真紀だ。  まさかのホラー映画チョイスとは。  でも、まぁ、うん、怖かったんじゃね?  ざざーっと、どばーっと、ばっさーっつうゾンビ映画とは違う、ヒタリヒタリと冷ややかな足音と一緒に忍び寄る冷たい冷たい死んだ者の青白い影、みたいな純和風ホラー映画。こういうのってさ、余韻を残すだろ? そのお化けは今、もしかしたら……貴方の後ろにっ! きゃああああ! みたいな、余韻。この映画もそうなわけで、その青白い影はどこにいったのか、消えたのか、どこかにいるのか、わかんなくなってる。けど、なんで。この映画を。この、春爛漫はもうすぐそこですっていう三月のホワイトデー間近に上映にしたのかも謎だけど。これをデートにチョイスしたこいつも。 「けっこう面白かったな」 「……」 「なぁ、真……」  すげぇわかんねぇ。 「…………」  この映画を選んだ本人が、白目ひん剥いて微動だ動けないほど怖がってんのが一番の、謎だ。 「ただいまー」 「トホホホ」  うちについてすぐ真紀の口から零れた、じーさんみたいな「トホホ」に笑った。  リアルでそれを口に出して呟く奴初めてだわ。っつうか、お前だけだわ。  映画を見終わって、長々と流れるエンドロールも終わって、会場の照明がぼんやりと灯った頃、隣にいた真紀に話しかけたら、白目剥いてた。映画じゃなくて、お前のその白目顔に叫びそうになったっつうの。 「そんなに怖かったか?」 「怖いなんてもんじゃないですよ! ああああ、思い出させないでくださいよ!」 「なんであれにしたんだよ。怖いの苦手なんだろ?」  そうそう、あの映画を見たいっつったのお前じゃん。帰りの車の中でも、ちょっとビビってた。もちろん食事の時だって、なんかげっそりしてたし。 「だって、デートだったから」 「……」 「デートは怖い映画が一番いいかなと」 「なんだそれ」 「貴方に抱きついてもらえるかと」 「きゃー、こわいー、ってか? キャラ違くね? そういうの、好き?」  俺からは程遠いだろ。キャーなんてやって可愛いのはレンみたいな奴だよ。 「別に好きじゃないです」 「はぁ? じゃあなんで」 「貴方は何をしても可愛いです。怒っても、悲鳴上げても、なんでも可愛いので、なんでも大好きです」 「……」  なんだそれ。もう、付き合ってんだ。同棲してんだ。別に、俺が映画館でお前に抱きついたって、楽しくなんて。 「……可愛いです」  楽しくなんてないだろ。 「……あっそ」  室温、何度にしたっけ? 三十度くらいにしちゃってんじゃね? なんか、あっつ。パタパタと服を仰いで、熱を逃がす。  なんでこの男はそういう褒め言葉を真っ直ぐに、照れもせずに言うかな。 「あ、あー、そうだ、なぁ、真紀ってさ、なんか欲しいものってある?」 「欲しいもの?」 「あー、うん、ほら、うちになんか、必要なものとか、もう一緒に暮らすようになって、数ヶ月経つだろ? だから、これが足りないとかさ」  ホワイトデー、そろそろだし。何がいいかなぁって。わかんねぇじゃん。キャッキャウフフなそういうイベントってあんましてこなかったし、しても学生で金なんてなかったころだったから。仕事するようになってからは、ほら、恋愛ごとはご無沙汰でさ。  時計? ちょっと高い酒? カバン? アクセサ……は、ねぇな。アクセサリー関連はこいつはないわ。じゃあ、あとは。 「特に足りないものは、ないです」 「んー、足りないものじゃなくてもいいんだ。なんか、ほら、欲しいもん」  わかんねぇもん。バレンタインにあんな真っ赤になった恋人にチョコもらったことないし、ホワイトデーにお返しなんてこともしたことない。 「あっ! あります」 「なにっ!」 「欲しいもの!」 「うんっ」  欲しいもの、っつったんだよ。 「あっ……ン、ぁ、はぁっ、すげ」  やらしい音がソファに響く。 「おま、やっぱ、好きじゃん、騎乗位」  あんま、好きじゃないんだ。ソファでセックスすんの。それを知っててやりたがるんだ。真紀は。 「あ、ああああっン」 「好きですよ。だって、貴方が自分から」 「あ、ンっ……や、ぁ」 「好きなところに」 「ン、あっ……あン、ぁっ、ん」 「自分で擦り付けてるのを見てられる」 「あ、やっ、乳首、もっ」  ソファでセックスすると思い出すじゃん。普通のさ、日常の生活の中で、ふと、お前としたセックスのこと思い出すから、やなんだ。  ただテレビ見てただけなのに。 「ぁ、ン、そこ、好きっ」 「乳首、吸われるの好き?」  ただ、スマホいじってただけなのに。 「ン、好き、ぃ、あ、あ、あっ、ン」 「カリで前立腺擦られるのは?」  ただ座っただけなのに。 「好きっ、ン、ぁ、イっちゃう」  思い出して発情するから、あんま、好きじゃない。 「いいよ。イって? 誉さんの、イくとこ、見たい」 「あっ……ン、や、だっ」  内側からペニスを愛撫される快感。クンって中を、真紀のペニスで刺激されるの、ダメなんだ。 「ぁ、ん」 「誉さん」  後ろに手をついて、繋がってるとこを中心に自分から腰振って、腰を振る度に、ぷるんと震えるペニスをその手に扱かれて。 「可愛い」  可愛いわけねぇのに。 「あ、あっ、ンっ」  乳首を抓られて、きゅんって、爪で弾かれるのって、ヤバいくらい好き。すげぇ好き。 「ン、真紀っ」  乳首、いじめられながら、繋がってる奥をペニスの先で抉じ開けられて、その手の中でイかされる。 「あ、あっイくって」  すげぇ、気持ち良くて、すげぇ、好き。 「ぁ、あっ、イくっ、イくっ」  真紀の整った爪が好き。引っ掻いてきつくしかって。真紀の手が好き。あったかくて、優しいのに、たまに強く握られるのたまんない。  真紀の、全部が、めちゃくちゃ好きだよ。好きすぎて、夢中になって腰を振るくらい、好き。好きなんだ。 「イッ、くっン、ぁ、あ、ああああああああ」 「っ」 「ぁ、ンっ……真紀っ」  ドクドクと放たれる。中に真紀のを注がれる。そんで。 「あっ…………ン」  中出しされて甘イきするくらい、すげぇ、好き。 「イってる時の誉さんって」 「? ンっ……ン」  舌も、好き。 「たまらなく、可愛いんです」  可愛くなんかない。そんなん、お前くらいだ。 「誉さん」 「あっ……ン、まだ、イってる」  こんな俺のことをすげぇ可愛い連呼して、可愛がるのはお前だけだっつうの。 「あ、ン、そこっ」  だから、ホント、どうしたらいいのか、わかんなくなる。

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