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ホワイトデーSS 6 わからずやな人

「っ、ン、ぁっ」 『? 何? 今、なんか言った?』  まだ、レンの元彼と話してる。それなのに、後ろから抱き締めてきた真紀は俺の股間を撫でて、うなじにキスをした。 「ちょっ、っ……ちが、こっちの、ことっ」  触るなって、手で真紀の手首を掴んだけど、股間をなぞられながら、もう片方の手で乳首を摘まれて、電話を持ってる手に力が篭もる。力が篭もるのに、立っていられなくて、背後にいる真紀に簡単に背中を預けてしまう。 『スマホの機種替えるなら』 「う、んっ」  背中を預けたら、真紀の硬くなったのが尻んとこに当たる。乳首を指でクリクリいじられるのがたまらなく気持ち良くて、もっとして欲しいってなるんだ。もっと、そこをきつく指で可愛がって欲しいって、まだ、電話中なのに。  声を我慢すればするほど、気持ちよさが増していく。快楽が内側に溜まっていく感じ。 『平気? なんか……』 「へ、きっ」  下着の中に、手、が。 「っ、ン、っ!」  扱かれたら、我慢できなくなるのに。 『ねぇ』 「っ、あっ」 『もしかして、お邪魔しちゃった?』 「ちがっ」  真紀の指にいとも簡単に発情させられるんだ。直に触れられたら、すぐに欲しくなる。真紀の手で扱いて、イかせて欲しくなる。乳首をいじめて、勃ってコリコリになるまで、可愛がって。 「あっ」  真紀の指にこんなに簡単に溺れる。こんなにたやすく発情させられる。 (誉) 「っ、ンっ」  この声に、こんなに敏感に感じてる。 (貴方のここ、先のやらしいところからカウパー溢れて、トロトロに濡れてる) 「あ、ンっ……」  電話したままなのに。レンの元彼が電話の向こうにいるのに。 「ふっ……ン」  握られ上下に扱かれたペニスが気持ち良さそうに真紀の手を濡らしてた。緩く、きつく、くびれのところを指の輪っかで小刻みに擦られながら、乳首をきゅってされて、カリカリって引っ掻かれて。  イく。 「ン、ん、くっ……ン」  もう、イく。 「ん、ん、ンンンンンンっ」  思わず自分の服を、乳首をいじられてくしゃくしゃに捲り上げられた自分の服を口に含んだ。 「ン.……ンくっ」  びゅくりと弾けた熱で真紀の掌を濡らして、濡れて汚したその手に絞られるように上下にぬるぬると擦り付けられて、セックスしてる時みたいに腰がくねる。 「あっ……ン」  思わず零れた甘い声は電話の向こうのレンの元彼には届かなかったかもしれない。いつまでもぎゅっと握っていた電話は射精の余韻に浸る俺の手から、真紀に奪われてしまった。 「誉さん、電話、失礼します」 「?」 「もしもし? 私、天見誉と交際をしているものです。はい。以前お会いしたことが。彼に妙なアプローチはしないよう宜しくお願い致します。スマートフォンの件に関しましては、こちらで対応致しますので、どうぞお気遣いなく。本日は大変お世話になりました。以後、その妙なアプローチ回避のため、こちらの電話番号は着信拒否設定とさせていただきます。失礼致します」  ぽかん、だった。 「…………誉さん、やり方がわからないので、すみませんが、着信拒否設定、していただいてもいいですか?」 「え?……」 「早く」 「あ、うん……」  射精直後に、放心じゃなくて、ぽかん、ってしたのは、初めて。けど、真紀はそんな俺にかまわずに後ろから抱き締めて自分からもスマホが見えるようにしつつ、俺に着拒否を設定させる。 「あの人は誉さんのこと狙ってたと思いますよ。できました。じゃあ、これは置いて」 「は、そんなんねぇよ。だって、レンの元彼だぜ?」  レンを相手にしてた男が俺なんて。 「今、怒ってます」 「は? ちょ、うわっ」  抱き締められたまま、押し倒されて、ソファに激突するかと思った。 「誉さんが、あまりにもわからずやで」 「は?」  激突はしなかった。 「自分みたいなのはモテないとか」 「!」 「思ってるんでしょう? もしくは自分みたいなのにその気になるわけない、とか」  真紀がしっかり抱きかかえてくれてたから。ぴったりと身体を密着させて、ゴリゴリに硬くなったペニスを尻んとこに押し付けられながら、ぎゅって、俺のことを身動きが取れないくらいに、抱き締めて離さずにいてくれたから。 「誉さん」 「……っ」 「俺にしてみたら、はぁ? ですよ」 「あっ……ン」  イったばっかの俺には押し付けられる熱だけでも、充分な火種になるんだ。 「あっ、ぁ」  真紀はまだ下着どころかズボンだって脱いでないのに。俺は、真紀が股間を硬くしてるってことだけで、こんなに発情する。 「ぁ、待っ」 「……」 「ま、きっ」  半裸で腰くねらせておねだりなんてしてもさ、可愛くも、エロくもない。 「待って」  今は、夢中になってくれてても、一年後は、もしかしたら。 「あぁ、なるほど」 「真、紀……?」 「そんな心配もしてたなんて。貴方は本当にわからずやだ」  後ろから覆い被さった真紀が手の甲に手を重ねてくれた。ソファの背に手を置いて、尻を突き出すようにしてる俺の背中にぴったりと身体を重ねて、手を重ねて、耳元にキスをする。 「もっと、欲しがってよ……誉さん」 「っ、ン」  そして、低く濡れた甘ったるい声で、我儘な子どもみたいなことをそっと囁いた。

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