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お仕事チェンジ編 6 召し上がれ

 クリスマスはもう過ぎたけど、でもクリスマスプレゼントまだ、だったから、さ。  あいつなら喜ぶかなぁ……なんて思って、さ。 「は? マジで? え? なんで?」  ホント、おふざけにって感じ。だって、あいつに欲しいものって聞いたってさ、「俺」としか答えないし、そのクリスマス当日に駄々っ子してまで欲しかったのが、腕枕とかさ。しかもされる方じゃなくて、する方。意味わかんねーじゃん、普通にさ。重たいだけだし腕痺れるだけだし。それでもしたいって駄々っ子するくらいだから。  まぁ、なんというか、好かれてるなぁと実感したというか。  だから、これは喜ぶかなぁと。 「マジか……」  結構、予想外にダボついたな。  ホント、着痩せして見えるのな、あいつ。特にジムに通ってるわけでもないし、日々運動してるわけでもないシチサンメガネなのに、腹筋割れてるし、胸筋ついてるし、背中だって筋肉すごいし。その割にタイヤ運びによろよろしてたのは多分身体を動かすのが下手だからなんだと思う。 「まさかの萌え袖かよ」  手長いのな。足もだけど。裾、かなり余ってる。 「……すげ」  男、だなって感じた。知ってるけどさ。もう数え切れないくらいに抱かれてるし。けど、なんかこうして真紀のスーツに身を包むと、なんか抱かれてる時レベルに感じる。 「やば……」  これは、なんか危ない感じ。おやつみたいな、癖になる甘美な快楽。  妙に指先が熱を持っていくのをくすぐったく感じながら、ボタンを閉めて、スラックスを履いて、ネクタイを閉めた。ジャケットもとりあえず羽織って、そんで。 「真紀、あのさ、クリス……」  照れ臭さと、小さな興奮と、それから期待をしながら、寝室へ向かった。  なんとなくだ。お前が喜ぶかなぁって思ってさ、とか。  こういうのも楽しいかなぁって思って、とか。  お前、こんなにガタイいいんだからマジで整備来れば? なんてからかってみようか、とか。  色々考えながら、冷静になりかけるいつもの自虐癖のある自分が出てこないように気をつけつつ寝室へ――。 「…………」  行ったら、真紀が。 「…………すぅ」 「……寝て……る」  まぁ、そうだよな。一週間、いきなりの整備勤務だったんだ。疲れも溜まってるだろうし、何より気が抜けたんだろ。  布団もかけずに寝てたら風邪引くじゃんか。そっと近づいて、足元の布団を起こさないようにかけてやろうと思って、思わず吹いた。メガネめっちゃ顔面で踏みながら、綺麗にスッとしている鼻筋くちゃくちゃにして、端正な唇もぶちゃっとさせながら、あまりにも気持ち良さそうに寝てるから。飯はすぐに済ませて、そんで真紀が先に風呂に入った。そのあと、俺が入って、真紀のスーツに着替えて今この状況。シチサンじゃない、外向けの顔じゃない真紀の無防備な寝顔に思わず口元が緩む。  よく寝てるのを確認して、そっと、起こしてしまわないようにそっとベッドを離れると、さっさとルームウエアに着替えようと思った。  スーツは、まあ、おふざけだし、何かの機会にまたふざけるのにいい感じのタイミングがあれば、かな。  実際、これ、ぶっちゃけくそ恥ずかしいし。なんかものすごい照れ臭いし。  だから、また、そのうち――。 「何してるんですか」 「っ! び、びっくりした! お前っ、足音させず背後から来るなよ」 「なんで、俺のスーツ着てるんですか」 「! こ、これは……えっと」  そーっと開けたクローゼットの方を向いていた。後ろから抱きしめられて、ジャケットのボタンを外す手を掴まれ阻止された。 「っていうか、寝てろって、疲れてんだろ」 「起きました。っていうか、貴方の甘い香りがしたから目を覚ましたら、貴方が俺のスーツを着てるから、目が冴えました」 「ちょ、いいから言うな! なんだよ甘い香りって、同じシャンプーにボディソープ使ってんだろうが」 「誉さんのは甘く感じるんです」 「ちょ、脱ぐの、手が邪魔だっつうの」 「邪魔してるんです」 「っ」  ボタンが外せない。真紀の長い指がそれを阻止して、俺の指を弄ぶように触れるから。いきなり低い掠れた寝起きの反則ボイスで耳元で話すなよ。 「なんで、俺のスーツ着てるんです」 「こ、れはっ」  ホント、反則だ。 「これは?」 「っ、ン」  ゾクゾクする。その声。 「お、前のスーツ着てみたら、どうかなって」  指もやばいんだって。 「どうかなって、貴方が? それとも俺が?」 「っ、あっ」 「貴方は? どうでした?」  ボタンを外そうとしていた手に手が重なって、指先が絡まって、着替えてるのか、指から前戯で攻められてるのかわからなくなる。 「あっ……ン、着痩せ、するお前の身体、想像して」 「……」 「ドキドキ、した」  こういうの、倒錯的っつうんだろうな。 「その格好をしたら、俺が喜ぶと思ったんですか?」 「っ」  なんつうかさ。 「大喜びです。貴方が俺のスーツを着てるなんて。……ゾクゾクした」  まだどこも触れられてないのに、触れたのは指だけなのに、前戯にとろけるのと同じくらいにさ。 「そ、りゃ、よかった」 「素敵なクリスマスプレゼントをありがとうございます」 「っ、こ、これはっ」 「俺の欲しいものをちゃんとくれる」 「っ」  真紀のスーツに身を包んだだけで、真紀のシャツが肌に触れだけで。 「ずっと欲しかったので、このままいただいてもいいですか?」  まるでセックスの時みたいにとろけて、溢れそうなくらい気持ち良い。

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