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電話しつつ……編 4 まくります。
独り占めしたかったんだ。
「あっ、待っ」
だって俺なんかをこんなに溺愛する物好きなんでもう現れないだろうし。俺も。
「いやだ。待たない」
「あ、ああああっ!」
俺も、こいつ以外にこんなに好きになれる相手はもう現れないから。誰にもやらないって思ったんだ。律儀で真面目で、どこまでも真っ直ぐで。
「誉さんが煽ったんだ」
「あ、あ、あっ」
「だから、待たない」
奥まで突かれて甘い甘い悲鳴を壁に向かってあげていた。シャツだけかろうじて身に纏った格好で、ベッドの上に膝立ちで壁と真紀に挟まれてる。後ろから激しくされても、身を捩るくらいしかできなくて、逃れられなくて。
「あぁぁっ」
真紀に捕まってる。
「あ、またっ、さっきイッたのに」
それがたまらなく気持ちいい。足の先から壁についた手の指先まで全部が痺れるくらい気持ち良くて。
「あ、あ、あ、真紀っ、激し」
真紀の腕の中に捕まえられて、そのまま追い立てるように激しくされるとどうしようもなく気持ち良い。逃してなんてやらないって、古傷のある眉間に皺を寄せた真紀にゾクゾクした。律儀で真面目なシチサン眼鏡が俺にだけ、欲剥き出しで噛み付くのがたまらなかった。
「あ、あああっ」
全部預けたってびくともしなくて。力仕事している俺を歯がいじめにして、攻め立てる真紀にすごく興奮した。
「あ、真紀」
「誉、さんっ」
「あ、あ、あ、そこ、奥、はっ」
「っ、誉」
「あああっ、ン」
壁についた手に真紀の綺麗な手が重なる。綺麗に切りそろえられた骨っぽい指が俺の指をギュッと握って手首を掴むんだ。
逃がさないって。
「ン、真紀、キス、したい。ベロ、欲し」
激しくされて途切れ途切れになりながら、キスをねだれば、手で俺の身体を支えながら深くキスしてくれた。呼吸まで全部齧り付くように唇を重ねて、熱くて柔らかい舌に口の中を溶かされそうなくらい可愛がられて。
「んんんんっ」
身体を支えてくれていた手に乳首を摘まれながら、キスで口を塞がれて、手首を握り締められて。
「誉さんっ」
「あ、あ、あ、これ、イクっ」
「いいよ」
「あ、あ、あ、真紀っ、真紀」
「イッて、誉」
「あ、あ、んんんんんんんっ」
真紀に逃がさないって攻め立てられて、奥深くまで、真紀でいっぱいになりながらイった。
「あ、あ、まだ、イッてる、あ、ン、真紀」
「っ」
真紀が俺の奥でイッてるのを感じて、後に手を伸ばして、シチサン頭をくっしゃくしゃに掻き乱しながら、舌を真紀に突っ込みながらまた射精した。
「あ、すご……真紀」
「っ」
「あ、ぁ……ン」
ずるりと抜けるその瞬間まで気持ち良くて。
「……ン」
真紀の腕から解放されると振り返って抱きつこうと手を……。
「まだですよ」
「……へ?」
手を掴まれて、そのままベッドに組み敷かれた。
「あ、の」
「煽ったのは誉さんですから」
「えっと……」
シチサンがくっしゃくしゃになるととてつもない色気を振り撒きまくる真紀が俺に不敵に笑った。
「待った。俺、もう」
「待たない。それから」
「あっ」
どこにもいないだろ? こんな物好き。
「逃がさないので」
俺なんかをこんなに愛しまくって。
「覚悟して? 誉さん」
何度も抱きたがる物好きなんて、もうきっと一生見つからない。だからさ。
「真紀、こそ」
「わっ、ちょっ、誉さん?」
俺も一生離してなんかやらないって、しっかり捕まえておくんだ。
「力仕事で鍛えた俺の体力、甘く見んなよ」
この色気ダダ漏れシチサン物好きを。
キスして乗っかって、今度は俺がこいつを組み敷いて、奥深くまで咥えた。
「本当に、ごめんなさいっ」
どっかで見たことあるな、この光景。
ベッドの下でパンツ一丁の男が土下座しているとこ。
「本当に、本当の、本当」
「っぷ、もういいって」
「!」
ちょうど一年前、見た光景だ。
「俺もノリノリだったし」
「誉さん」
そう、俺もノリノリでお前にしがみついてたじゃん。だから、今、足腰に力が入らなくてせっかくの二人で同時に取ったオフが丸一日ベッドの中になったのは俺のせいでもあるんだし。
「でも、今日は」
「いいよ」
一緒にレースカーの展示を見に行く予定だったけど、まぁ、別に。ぶっちゃけ、お前とデートできたらどこだって最高だし。なんてこと、普段なら恥ずかしくて、キャラでもないから絶対に口に出してなんて言わないけど。
「かわりに」
「は、はい!」
「今日の飯当番、全部真紀がやってくれるんなら」
「もちろんです! 全部、俺に、お任せくだ、っわああああ! 危ないですよ! 押し潰しちゃうじゃないですか。急に引っ張ったりしたら」
「俺が押し潰されると思うかよ」
本当に慌てた顔をして、ベッドに引っ張り込んだ俺を壊物みたいに大事に扱ったりしてさ。
「それからさ」
「はい!」
「その……いいのかよ。その、田中さんだっけか? あの美人に、その」
「? 美人、ですか? まさか、誉さんは彼女が好みの」
「バーカ、俺はゲイだっつうの」
そこでほっとするなよ。むしろ、俺はお前のことを心配してんだっつうの。
もうまる一年なんだぞ?
丸一年。
ほら、ふつー、付き合って一年とかさ経っちゃてたらあるだろ? よそ見とかさ。けど、全然一年経ってるわりに、薄れないっていうか。
「あの、誉、さん?」
「あ、あとさ……今日は、ずっと俺のこと」
真紀に、まぁ、けっこう? それなりに? 案外? かなり?
「だから、その……」
「? 誉さん?」
つまりは。
「俺を……」
「! もちろんです! たくさん!」
真紀にまぁまぁ。
「愛しまくります!」
溺愛されてるかなぁって思うから。だから、レースカー見に行くよりも、お前と一日中ベッドの中で過ごしたいなぁなんて。
「愛し! まくります!」
「っぷ、二回言わなくていいっつうの」
「まくります!」
だってさ、この一年、お前に溺愛されまくりで、毎日毎日、幸せだから、今日も明日もそうして欲しいとか、思ったりしたんだよ。
「まくります!」
「わかったっつうの」
愛してる真紀に、愛されたいなぁって、思ったんだよ。
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