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夏祭りだ!編 2 ノー!パン!

 よく、まぁ……続いてるなと、思うよ。 「鼻血、大丈夫?」 「はい! もうすっかり!」  にっこり笑顔で、真紀が元気な返事をした。うちは基本、風呂入ってから飯。何せ、俺の仕事が仕事だから、風呂に入らないと飯食えないだろ。髮だって埃まみれだし、いっくらツナギの作業服着てたって、どうしたって汚れるし。それに何より汗だくだ。ピットはほぼ屋外となんら変わりがない。屋根があるかないかの差くらいなもの。この時期ならスポットクーラーはつけているけど、それでもやっぱり汗だくになる。  真紀は食べ終わって片付ける食器を両手で持ちながらにっこりと微笑んだ。  今日の晩飯は、すっげぇ暑かったから、冷しゃぶサラダと冷奴。夏、今が一番暑くてバテ気味で、冷しゃぶ頻度はやたらと高い。 「あ、誉は休んでて。今日はかなり暑かったから疲れたでしょ」 「ぁ」 「テーブルだけ拭いておいてください」 「……」  風呂あがりはシチサンじゃない。洗いっぱなし、乾かしただけのラフな髪型にメガネだけ、色男と化した真紀が楽しそうに食器を洗い始めた。  誰かとこうして一緒に暮らすなんて思いもしなかったな。 「なぁ、どこぶつけたんだ?」 「へっ?」 「鼻血、どっかぶつけたんだろ?」  誰かとこんなふうに戯れたりなんて、もうできないだろうって思ってた。 「鼻血出すくらいぶつけたんだから、心配した」  なぁんて、彼氏のことからかって、いじわるをする自分なんて、な。真紀に出会う前は  想像もしなかったし、むしろ、諦めてさえいた。 「鼻」 「ひゃへ?」  変な返事をした真紀の頬があっという間に赤くなって、薄めの唇が慌ただしく何か言葉を言おうとパクついてる。  こいつって、嘘、つけんのかな。  無理だろうな。  別にぶつけたせいで鼻血が出たわけじゃないって、その表情で丸わかりじゃん。  浮気とかしたら、すぐにわかんだろうな。  浮気、か。 「ぶつけたんじゃねぇの? 朝」 「あ、あれは……違う、んです」  真紀が浮気、かぁ。 「ただ、貴方の浴衣姿想像したら、ちょっと」 「ちょっと?」 「興奮してしまった、だけです」  されたら、やだなぁ。  すげぇ、やだ。  泣くな。  きっと、泣く。  みっともないけどさ。  俺、結構見栄っ張りなんだよね。人前で泣くとかありえないんだ。泣いたこと、あるけどさ。お前の前では。別れなくないって、まだ始めたばかりの頃だったけど。 「っぷ」 「わ、笑わないでください。とても色っぽかったんです! それは、もう」  まだ、この恋を始めたばかりの頃だったけど。懐かしい。  懐かしいけど、つい最近のことみたいにも思うし。  すげぇ昔のことみたいにも思える。 「エロかった?」 「もちろんっ! 誉さんは何してもエロいです! 大興奮」  だって。 「じゃあ、こういうのも、興奮する?」 「!」 「風呂上がってからノーパンのまんまだった。ほら」  言いながら、食器を洗ってくれた濡れた手を捕まえて、そのまま俺の背後に引っ張ると、ルームウエアの中へと引っ張り込んで。 「ノーパンだろ?」 「!」  真紀の手に手を重ねて、生肌を鷲掴みにさせた。  大きな手、骨っぽくて、長くて。その長い指が肌に食い込むだけで、身体の奥がズクリと熱を持つ。 「ノー! パン!」  そんな俺の尻を鷲掴みにしながら、ひっくり返りかけてる声でそんなこと叫んでるのにさ。 「そ……ノーパン……」  そんなちょっと抜けてて、普通の、よその誰かが叫んだら笑うか呆れるような、そんなのさえ、さ。 「揉んで? 真紀」 「! よろこんで!」  愛しくてたまらないって思うんだ。 「っ、ン」  その手で好きにされるとたまらなくなる。 「あっ」  ルームウエアの中に連れ込んだのは片手だけ。けど、もう片方の真紀の手が服の中へと侵入して、両手で鷲掴みにされる。 「ン」  揉まれて、ゾクゾクした。 「あっ……広げっ」  服の中で好き放題に揉まれて、気持ち良くて、身体が一気に火照り出す。 「誉」 「ン」  真紀の興奮で掠れた声に腰が砕けそうだった。そのまま身体を密着させながら舌を出すと、深く唾液が溢れるようなキスをくれる。  角度を変えて、舌同士を絡ませながら。 「んんっ」  俺が重ねていた手で誘わなくても、勝手に、おかまいなしに揉みしだいていく。 「っ、アっ」  そのまま、長い指が孔に触れた。 「あ、真紀」  撫でられるだけで、喉奥がぎゅっと絞まる。そしてヒクつく孔を撫でられながら、今度は優しく軽いキスを一つ唇に落として。 「待っててください。ローション取って来るから」 「ン」  早く。 「……っ」  早く戻って来いってば。 「すみません。お待たせし、」 「ン」 「そんな顔、しないでください」  自分からひん剥かれたいと、ルームウエアを手で、ギリギリまで下げて、乳首が見えるギリギリまで持ち上げて、待ってた。キッチンの棚に寄りかかりながら、半裸で。  戻ってきた真紀はそれを見て、メガネの向こうで目を丸くして、それから、シチサンにするために長めになっている前髪をかき上げる。  そして、物欲しそうに俺を見つめて。 「新品しかなかったの、忘れてたんです」 「あっ」  さっき好き勝手に揉んでいた俺の尻の間にとろりと冷たいままのローションを垂らした。 「あっ、ン」  冷たいローションと熱い手にまさぐられて。割り込んできた長い指を手伝うように、その手が揉みしだいた尻を掴んで拡げて。 「あぁっ」  指が孔に入ってくるだけで、気持ち良くて。 「誉、キス」 「ン、ん、んんん」  甘イキしてた。 「真紀、ぃ、早くここに、入れよ」 「まだ」 「ン」  甘ったるい声ごと食べるようにキスしてくれる。 「真紀」  そのキスに、指に、好きなだけ貪られたくて、何度も何度も、愛しくてたまらないそのシチサンでいつもガチガチに固められてる、柔らかい髮をくしゃくしゃに掻き乱した。

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