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四.

 涼は深い溜息をついた。  写真がこの生徒の手に渡ったことも不味かったが、そのことで自分と取り引きできると思っているところがいかにも子供の考えそうなことである。 「僕を知りたいというなら、まずはそれを返してくれることが近道だと思うんだが?」  あくまで教師然とした態度を崩さず、助言をする涼に、生徒は一瞬呆けたようにきょとんとし、次にはおかしそうに笑った。  それは高校生らしい、無邪気なもの。  それには涼も毒気を抜かれ、思わず力が抜けてしまう。  だが。 「これは返しません。ただ、俺が持ってることだけ知ってて欲しくて」  人好きしそうな笑みを浮かべたまま、口にしたのは傲慢ともとれるセリフ。  いったいこいつは自分をどうしたいんだ、と僅かながらに苛立ちを覚えた涼は、自分が生徒を導く教師であるという以前に、ここが単純に職場であるという事実だけで、それを抑え込んだ。 「ーー君が何を望んでいるのかは分からないが、何でも思い通りにいくと思っていたら、そのうち痛い目を見るぞ」 「思い通りにいかないから、楽しいんでしょ?」  そう言って目を細めて笑った生徒は、本当にそのまま涼の前から姿を消した。 「……なんなんだ」  遠ざかる足音に、いささか呆然とした態で雑然とした準備室に立ち尽くす涼の顔には、どっと疲れの色が滲み出ていたのだった。

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