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十五.

人もまばらになった教室に入ると、洋平は自分の机のそばで荷物に手を伸ばすこともなく立っていた。 「新井?」  教室の外から声をかけられ洋平が振り返ると、そこには藤田がドアに手をかけ中を覗き込んでいた。 「もう戻ってきたのか?」  浅尾に洋平の行き先を聞いたのか、そんな風に話しかけられ、洋平は「まあな」と片手を首の後ろへ回す。 「まだ何かあんの?」  荷物を置きっ放しの洋平を不思議に思ったのだろう。藤田が首を傾げていた。 「いや? ……べつに」  洋平はそう答えながら自分のバッグを肩にかけ、藤田がいるドアの方へ歩く。  教室に入ってきたわけではないので、忘れ物を取りに来たわけでもないだろうと、藤田の横に並んだ洋平が訊いた。 「おまえは何してんの」 「あ、浅尾のおつかい。今度のクラスマッチの撮影のことで」  藤田が廊下の奥の方を指差す。そちらには新聞部と写真部が共同で使っている部室があった。 「ああ。ーー他にやることありそうか?」  歩きながら話そうと洋平が顔で階段の方を指し歩き出すと、藤田もついてくる。 「まあ見つければなんでもあるだろう。会長も何かやってたし」  小さく息をついた藤田が両手を頭の上で組み、伸びをした。 「またどっかで息抜きしたいなぁ」  藤田のいう息抜きは、体を動かすことだ。爽やかな見た目通り、たまにどこかの運動部に顔を出して一緒に練習メニューを消化したり、友人とバスケで遊んだりしている。自分一人でランニングすることもあるらしいが、やはり誰かとやる競技の方が楽しいらしい。 「付き合うぞ。学校の外でならな」  階段を下りながら洋平がそう言うと、少し先を行っていた藤田が立ち止まり振り返る。 「へえ? ……なら、今日行こうぜ」  もの言いたげな表情で洋平を見上げるが、藤田はただそう言って鼻歌を歌いながら残りの階段を早足で降りていった。

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