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十八.

「……面白そうだと、思ったんだよっ」  洋平が頭をかきながら吐き捨てるように言うと、浅尾が呆れた顔で小さく顎を上げた。 「面白そう、で生徒に気に入られちゃ、赤坂先生も迷惑だろうさ」  浅尾の抉る言い様には、さすがに大河内も藤田も洋平に同情するような眼差しを送る。   「……迷惑はかけてねぇよ」  写真云々を知らないはずの同級生に、洋平が低い声でぼそりと抗議したので、息抜きと称してこの場を作った藤田が慌てて二人の間に入った。 「新井は遊んでばっかでさ、マジなアプローチの仕方分かんなかっただよなっ。不器用なとこ見れてちょっと安心したよ、俺」 「……」 「まあ新井も普通に落ち込むことあるんだって思うと、可愛いよ」 「……」  藤田と大河内に順に慰めるようフォローされた洋平は、心底嫌そうな顔をし、溜め息をつく。  洋平も自分のことがよく分かっていなかったのだ。  確かに今までになく一人の相手にかかりっきりになっているという自覚はあったが、ただの興味本位の枠を出ないと思っていた。そのお遊びに終わりを告げられただけ。  だった、はずなのだがーー。  眉根を顰め黙り込む洋平を、三人が物珍しそうに見つめる。どうやら本当に洋平が悩んでいるようだと分かったからだ。  学校や放課後のこんな時間の付き合いはあっても、家に行き来するほどの仲ではない。だから家での洋平がどんなものなのかを知る人間は、ここにはいなかった。  こんな洋平の姿はなかなか見れないなと、三人が三人ともそれぞれに観察していたのだが、さすがに有料のコートでやることじゃないなと、浅尾がまず立ち上がる。 「帰るか。腹も空いたしな」  続けて残りの二人も頷いて立ち上がると、大河内が洋平の肩をぽんと叩いた。 「新井。考えすぎるな。要はおまえがどうなりたいかだろう? そのために行動すればいいんだ」 「だからって、無理矢理襲うなよ?」  浅尾が半ば本気でそう付け足すから、それを聞いていた藤田が盛大に吹き出す。 「そりゃヤバいわ」  声を上げて笑う友人を、洋平はことさら冷たい目で睨んだのだった。

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