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二十一.
駐車場で車を降りた途端、小雨に降られて濡れた肩をハンカチで拭いていると、先に職員用の下駄箱で靴を履き替えていた丸石に声をかけられた。
「おはようございます。赤坂先生。濡れちゃいましたか」
快活に笑う丸石に、涼も小さく頭を下げ挨拶を返す。涼は丸石が少々苦手だった。彼が生活指導を担当しているというのも原因かもしれない。何せ涼はよく学生時代に揉め事に巻き込まれていたので、よく注意を受けていたのだ。もちろん今はそんな事がないよう地味な教師の仮面を被っているので、彼の世話になることはないのだが、悲しいかな染み込んだ苦手意識は消えてはくれないらしい。
「ーー今日は何かあるんですか?」
並んで職員室へ向かうことになってしまい、涼が何か話すべきだろうかと考えていると、なんとなく職員室の中が慌ただしい気がしてそんなことを聞いてみた。
「ああ、ほら。クラスマッチですよ。職員からも有志が集まって参加するんで、そのメンバーが準備してるんじゃないかなあ?」
「クラスマッチ……」
そう言えば先週末の職員会議でそんな話題が出ていたような気もする。涼は自分に関係ない事は基本スルーしてるので、すっかり忘れていた。
「丸石先生も出られるんですか?」
「いいえ。僕は監督する方なので」
涼は何となく気になったことを呟くように口にする。
「生徒会役員も、やはり……?」
「どうでしょうか。一応運営は任せてりますが、支障がない範囲で交代で出るかもしれませんね」
何故それを訊ねたのかなどわかりきっていた。だがそれを自分で認めたくなかった涼は、ただちょっと気になっただけだとそう自分に言い聞かせ、丸石におざなりに頭を下げると、まるで逃げるようにそそくさとそこから離れたのだった。
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