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三十七.

ぴくりと涼の肩が震え、逃げるように舌を引っ込めると、洋平はそれを追う。 涼の口腔に侵入した洋平は熱く、逃げたものではなく、歯の裏を舌先で擽るように舐めた。 「っ……」 小さく涼が息を吐くように声を上げると、洋平は涼を見つめる眼差しを細める。 お互いが視線を外すことなく、重ねた唇から与えられる熱にしだいに煽られるように息遣いが荒くなっていった。 「先生……?」 肌を合わせたまま涼を呼ぶ洋平のその目に、何を求められているかを正確に読みとってしまった涼が、諦めたようにおずおずと口腔に侵入したそれに自分の舌を触れ合わせる。 熱くなる頰に視線を逸らしたくなった涼だったが、洋平がそれを許さない。 見て、と。その眼差しが懇願しているようで。目を閉じることもできず、羞恥を逃す手段を失った涼の瞳は、じわりと潤んできていた。 洋平の手が、そっと涼の髪を梳き、撫でると、そのまま首の後ろで固定される。そこに力を入れている様子はないのに、涼は捕まってしまった、と思ってしまう。もはや逃げ出したいのか、捕まりたかったのか、自分でもわからなくなり、そのあやふやな気持ちが涼をさらに追い詰め、迷路の袋小路を目の前にした時のように、思考が停止した。 それを見越したかのように、洋平はさらに深く、唇を合わせる。大きく開けた口で、涼の息の根を止めるかのように、その口を塞ぎ、厚い舌全てで涼の口腔を犯してきた。 「っん、っ」 息をつく暇もなく、舌を絡め取られ吸い上げられ、逃げれば容赦なく口の中の敏感な部分を舐め上げ、擦り、涼を責め立てる。上顎をなぞられる度に、涼の体はびくっと小さく跳ね、それに気を良くした洋平に、さらにそこを攻められた。 ちゅくちゅくと、もうどちらのものかも判断のつかない唾液が、洋平の舌が、口が、涼のそれを愛撫する度に音を立てる。スピーカーでもあるのかというほどに、その音がことさら大きく涼の耳へ届き、その淫猥な響きに、さらに羞恥で体が熱くなった。 「ぁっんっ、……あ、ら……いっ……」 いつの間にか腰を取られ、洋平と密着していた涼は、酸素を求めて自分を食らう男の名を荒い息遣いの合間に呼ぶ。その意味が伝わらないはずはないのに、洋平はすぐにはやめてくれない。名残惜しいように涼の舌を思い切り吸い上げ、甘噛みし、仕上げとばかりに涼の弱い歯の裏の上顎を舌先でひと撫で。 「んぁ…んっ」 鼻から息の抜けるような甘い声を出した涼に、ようやく洋平の唇が離れてゆく。 最後におまけとばかりに、ちゅっと音を立て涼の唇にキスを落としてーー。

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