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三十八.
いつのまにかシャツのボタンは全て外れていた。その手際の良さに涼が少し上がる息を整えながら、眉根をつと顰める。
「……手が早い……」
「――妬いてくれてるの?」
綺麗な形の耳に唇を押し当てながら、洋平はゆっくりと涼をソファへ押し倒した。
耳朶を唇で食まれ、甘噛みする洋平の息遣いが、涼の鼓膜へ直に響き、涼はふるっと肩を震わせる。
のしかかった洋平の太腿も、シャツの裾から露わになった脇腹を摩る手も、耳朶も、触れられている箇所がどこもかしこも熱く、涼の意識を朦朧とさせた。
「まさか……」
眉間の皺を伸ばすかのように洋平の唇がそこへ落とされる。ちゅっと小さなリップ音をさせた後、その弾力のある唇が鼻筋を通り、可愛げのないことを言う涼の口を再び塞いだ。
「……ん、っ……」
洋平のキスは、高校生がするには濃厚すぎて、容易に涼の官能を引き出してゆく。弱い部分の上顎を容赦なくなぶられ、鼻から抜けるような吐息を止めることができずにいる涼は、悔しさに上にいる洋平の肩を叩いた。
「んーー、いや? ……先生」
力のない抗議に、洋平がちゅく、っとわざとらしく音を立てて唇を離し、涼の目を覗き込む。そこには、いつも涼に見せていた不遜さはなく、どこまでも涼を求め、涼だけを見つめる洋平の柔らかい微笑があり、そのあまりの甘さに涼は恥ずかしくなって顔を伏せてしまった。
「先生?」
途端に洋平の声に不安が混じり、涼はまるで懐いてくる犬のようだ、と渋々顔を上げる。
「なんだよ」
羞恥に頰を赤くしたまま、涼は洋平を下から睨みつけた。しかしそこに迫力など皆無で、洋平はほっとしたように笑みを浮かべる。
「……笑うな。――つづき、しないのかよ」
恥ずかしさを誤魔化すようにつっけんどんに言ってみるが、尻すぼみになった涼の声は、洋平を喜ばせただけだった。
「もちろん、する……」
「あっーー」
続きを促したのは涼自身だというのに、腰にあった洋平の手がするりと緩められたジーンズの中へ入ってくると、涼は驚いて声を上げてしまう。
「っ、ん……」
キスだけで煽られた分身はすでに半立ちで、それを知られてしまったことに涼は逃げ出したくなっていた。
いつもの仮面がつけれない。
学校でならば自然に取り繕える態度が、今は作れない。
いいように年下の男に翻弄されている自分が、情けない気がして焦ってしまう。
いいのか、という問いと、いいだろう、という肯定がぐるぐると頭を回るが、洋平が与える快感と熱がそれを凌駕して、涼の判断力を奪う。
迷いながらも諦め、焦りながらも、熱に酔う。
涼の体はすでに、洋平の想いに答えているというのに。
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