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四十一.

「じゃあ、お願いがあるんだけど……」  洋平がまったく悪びれずにそんなことを言い出す。  もちろん涼には今真っ当な判断力などない。だから、がくがくと考えることもなく洋平の言葉に頷いてしまっていた。 「聞くっ……なんでも、いいからぁ!」  切羽詰まった涼の叫ぶような同意を得た洋平が、ずるりとその指を引き抜く。 「あ––––な……」  肉壁の奥を長いこと陣取っていた圧迫感が突然なくなり、涼は宙に放り出されたような心許なさに切なく後孔がヒクつくのを感じた。  何故と泣きつく前に、洋平の均整の取れた体が涼にのしかかる。背後から抱きかかえるよう覆いかぶさった洋平が、その唇を、涼の耳朶に押し付ける。  嫌になる程慣れきった行為に、冷静なのだろうと思っていた洋平の息遣いは、予想を裏切って熱く、荒かった。 「ねぇ、先生……。俺、あんたの恋人になりたい。あんたの、全部をくれよ––––」 「っ––––」  熱のこもった洋平の低く、掠れた声は、確かに涼の耳へ届く。ぶわりと全身が総毛立つような感覚に、涼は肩と言わずその唇さえも震わせる。  歓喜、だった。  それは確かに、涼を歓ばせたのだ。涼が自覚するよりも、涼の耳と体がそれを歓迎していた。 「あ……っ」  あまりの事実に、涼はぽろりと溜めていた涙を頰へ溢す。  それに気づいた洋平が、横からぺろりとその涙を舐めとった。 「……イヤ?」  洋平の自信なさげな小さな呟きに、涼はゆっくりと首を横へ振って見せる。  もう、言い訳はできない。自分が何を求めているのか、何に喜んでいるのか、涼は自覚し、それを受け入れた。  年下でも、生徒でも、洋平が何者であったとしても、今、涼は洋平に全てを求められて喜んでいる。  それをようやく、認めることができたのだ。  その瞬間が、こんな情事の真っ最中であることには苦笑を禁じ得ないが、それこそが自分たちらしいのかもしれないと、涼は微笑む。  だから、自分を全身で包み熱を放つ相手に、涼は素直に気持ちを伝えた。 「––––俺も、おまえの、全部が……欲し、い」  横から覗き込む年下の男に、涼はもはや自分を取り繕うのをやめ、自らの全てをさらけ出して誘惑する。  潤んだ眼を細め、口をわずかに開けてそこからちらりと出した舌で、唇を舐める。 「新井––––きて……」  存分に嬲られ、緩み、今か今かと新しい刺激を待ちわびてヒクつく後孔を、涼は洋平の逞しいそれに擦りつけ、揺すってみせた。  「っ、先生……んな顔、俺以外に絶対に見せるな––––よっ」 「くっ––––ん、あぁぁぁっっ」  待っていた逞しい楔にぐっと奥まで一気に突き入れられ、覚悟はしていたものの、そのあまりの圧迫感と質量に、涼の口から高い声が上がってしまう。

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