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 睦美は約束通り放課後まで姿を現さなかったので、真鍋は喜色満面の睦美に自転車を漕がせ、自分は後ろの荷台に跨って帰宅した。  今日のように、共に帰ることは今までも何度かある。  そういった場合、睦美は学校により近い真鍋の家に立ち寄ることが多い。真鍋が許す場合に限りだが。  そしてそうなれば、いつもやることは同じだった。 「っは…はぁ…」 「ん…っ」  狭い六畳間に二人分の熱い吐息が満ち、独特の青臭さが漂う。  シングルベッドは男子高生二人分の体重を受け、動くたびにぎしぎしと苦しげな音を上げる。 「マナ…んっ…はっ…きもち、い?俺、すげっ…も、きもちくてたまらん…!んっ…きゅうって」 「も、むーみ、うっさいっちゃ!んっ…黙ってしろ!」  上に乗った睦美が動くたびに、その剛直に内を擦られ真鍋は苦しげに声を上げた。気持ちいいかと聞かれても、そんなことを理解する余裕はない。睦美はひたすら動物的で、激しい。セックスをしているというよりも、ずっと全力疾走している感じだ。  それなのに睦美は蕩け切った顔で、それを見上げる真鍋は不思議な気持ちになる。ここまで気持ちよさそうにしているのは、よほど真鍋が名器なのか、もしくは真鍋に心底惚れまくっているかのどちらかだが、たぶん後者だろうと真鍋は思う。 「マナ…好きっ…あ、あ…なか、すげ…!んっ、いく…!」 「っ!待っ、中出すなっ!もっ…いかんっちゃ!あっあっ…あ…っ!」 「あ、ごめ…マナ、マナ……ふぅ…っ」  睦美の動きがより一層激しくなり、真鍋の中にぐっと押しいれられた睦美のものが大きく脈打つ。  咄嗟に抜けと叫んだ真鍋だが、それも間に合わずに体の奥の方に熱い飛沫を感じた。同時に睦美の節ばった手で性器を扱き上げられ、途切れ途切れに嬌声を上げながら自身も白濁を吐きだした。 「こ…の…バカっ!アホ!ボケっ!」  力尽きてぱたりと倒れ込んできた睦美を、真鍋は荒い息のまま罵る。  しかし睦美は気にした様子もなく、重なった肌の汗ばんだ感触を楽しむようにうっとりと目を閉じたままだ。 「だってマナたんの中、めっちゃきもちぃき仕方ないやん…こんままもっかい…」 「うっせ!さっさとどけっ!」 「あだっ」  開き直った睦美にイラつきながら、真鍋は脚を振り上げて睦美の体を押しのけた。蹴り飛ばされた睦美はそのままベッドの下へと落下する。 「くっそ…腹下したらどーすんだよっ…!ん…っ…アホっ…」  悪態を吐きながら、起き上がった真鍋はやっと性器の抜けたそこから出されたものを掻きだし、ティッシュで適当に拭って後始末をした。  そのままタオルで体を拭き、真鍋は情事の名残りをどんどん消していく。  打ち付けた頭を摩りながら起き上った睦美は、その姿に不満げに唇を尖らせた。 「マナたん…もっと…後戯とかをさぁ…甘い時間をさぁ…」 「お前もはよその汚ぇもんなおせ。もうすぐおかん帰ってくるけ」  真鍋は近くにあったタオルと、脱ぎ散らかしていた制服を睦美に投げつける。その情緒も何もない対応に、睦美はしぶしぶ服を着始めた。 「冷たいわぁ…」  こんな関係に至ったのは二人が二年生の時だ。あまりにしつこい睦美の熱意に負けて、一度寝ることになった。  睦美のその懇願を受け入れたとき、真鍋には打算があった。  存外、一度寝てみれば睦美は真鍋に飽きてしまうのではないだろうか、と。  というのも、真鍋には睦美の気持ちが全く理解できなかった。なぜこんなにも真鍋を欲するのか。一体自分のどこに魅力を感じるというのだろう、と。  真鍋はどちらかというと淡白な方で、友人も少ない。人づきあい自体が嫌いで、恋愛的にも友情的にも好かれる要素がまるでないと自覚している。顔だって十人並みだ。一度、ラブレターだと、真鍋の好きな所を百ヶ所論った手紙を貰ったこともあるのだが、それは気持ち悪さが先行して読む気も起きずに破り捨てた。  初めて出会ったのは高校一年の時。二人は同じクラスになった。  その時同じ美化委員になって、委員会の時にはそれなりに話すようになった。そして真鍋の中で睦美が『クラスメイト』から『会話したことあるクラスメイト』になった矢先、睦美は急に告白してきたのだ。「好きです付き合って下さい」と。  真鍋は同性に恋愛感情を持つ人種ではなかったので、当然ながら断った。それでも睦美は諦めず、しかもオープンに迫ってくるようになって今に至る。  真鍋は普通よりも数倍冷たく当たっているのに、断り続けても全く諦めない睦美。  結局は、寝てみてもそんな睦美の態度は変わらないまま。しかも、体の相性は悪くなかったため、ときたまセックスに至る今の関係ができあがってしまったのだった。

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